中田考×浅川芳裕「世界征服に役立つ中東怪人対談」はこんなかんじでした

昨日のあひる商会トーク・中田考×浅川芳裕「世界征服に役立つ中東怪人対談」に参加くださった皆さま、ありがとうございました。浅川さんは19歳でエジプトにやって来たとき、初めて会った中田さんにお金をもらったそうで、以来30年近くたって初めての対談。カオスのカイロ大学と中東生活を生きぬいてきた2人によるトーク。予想はしていましたが、多くの日本人がなんとなく信じている心地よくなまぬるい世界認識を容赦なくたたきこわし、なおかつユーモアに満ちたたいへん刺激的な話となりました。ほぼ満席。この場に居合わせた人たちは幸運でした。

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要約ではないですが、以下、こんな話が出たという覚え書きーー「世界征服」というと悪の企みのように聞こえるが、中田さんは「秘密結社鷹の爪団」というアニメを例に、くだらない国境をなくして、だれもが自由に行き来できる世界をつくることが世界征服のコンセプトだといい、自由に移動する権利を認めずに人権なんてありえない、という。


浅川さんは、農業的にはすでに世界征服は完了しているという。地球上の3割を占める陸地のうち人間が居住可能な地域は70%、しかし実際に居住しているのはそのうちわずか1%。それ以外の7割が農地で、内7割が放牧地。その意味では世界に数十万位しかいない畜産農家が、ほぼ世界を征服しているといえるという。


それを受けて中田さんは馬で大帝国を築いたのはモンゴルであり、遠隔地貿易はラクダで行ったと述べる。日本には農業と商業は別物というイメージがあるが、中東のイスラーム文化は牧畜がベースであり、それが商業と結びついている。牧畜から商業に向かうプロセスが、日本の場合には欠けている。


日本の場合は水源を共有して、そこだけは協力するが、基本的には排他的。牛や馬は自分の土地を耕すために働かされる。一方、牧畜文化では馬や牛は移動手段であり交換される商品であり、日本のように農作業させるという発想はないこと。移動にともなって通行税が発生し、それが商業とも結びついていくといったことなど。


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そこからイスラームやイスラエルの話になり、カリフ制でないものはイスラームではないので、その意味ではパレスチナもサウジもシリアも反イスラーム。どう考えてもいまのアラブ国家に比べればイスラエルのほうがましなので、とりあえずイスラエルがいまのアラブ国家を全部つぶして統治してしまうほうがいい。もともと聖書には大イスラエル主義というイラクからエジプトまではイスラエルという考え方がある。それにのっとってイスラエルがそれらの国々を占領すればイスラーム教徒だらけになってイスラエルは自然とユダヤ国家ではなくなること。


浅川さんも現在エルサレムのパレスチナ人でパレスチナ自治政府の支持者はごくわずかで、ほとんどがイスラエル国籍をとりたいと思っているという。パレスチナ問題が解決しないのは、国連の難民支援団体と欧米の人権活動家とパレスチナ自治政府が利権を分け合っている構造があるから。中田さんは、エルサレムはもともとイスラームの領域ではないこと、メッカやメディナとは性格が異なること。エルサレムを聖地に仕立て上げることがアラブ諸国の利権構造と結びついていることなどに言及。


そのほかカオスのカイロ大学のこと、日本で世界征服する鍵は森林にあること、しょぼい起業のこと、中東研究者の偽善のこと、カルロス・ゴーンのこと、種子法のこと、ISのこと、軍事政権とはどういうものかといったことなど話題は多岐にわたり、トラブルと不快感の嵐の中でさんざんもまれつづけることでグローバル人材が生まれ、それが世界征服に役立つという怒濤のお話でした。懇親会も盛況で、遅くまで、たてつづけの質問や歓談におつきあいくださった中田さん、浅川さんに深く感謝です。(;´Θ`)ノ

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【あひる商会トーク第5弾!】 中田考×浅川芳裕 「世界征服に役立つ中東怪人対談」のお知らせ

2019年第1弾のあひる商会トークは癖のあるお二人をお迎えしての「世界征服に役立つ中東怪人対談」です。開催は1月19日(土)。あひる商会トークでおなじみのイスラーム法学者の中田考さん、そして農業ジャーナリスト、コンサルタントとして活躍される浅川さんはともにカイロ大学出身。

浅川さんは、わたしのブログにもときどき「恐れを知らないA君」として登場した奇才です。アイビーリーグに留学するつもりだったのに、湾岸戦争に触発されて19歳で山口からエジプトにわたり、カイロ大でヘブライ語を学び、スパイ扱いされて7 回拘束・拷問という、ややこしい留学生活については今年出た『カイロ大学』(KKベストセラーズ)に淡々と記されています。

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おそらくだれも表立って語らない中東事情と中田さんがもくろむ「世界征服」について、建前をいっさい廃した恐れを知らないトークになることが予想されます。(;´Θ`)ノ

【日時】1月19日(土)18時〜20時(会場17時30分)終演後に懇親会あり。
【場所】楽道庵(神田 or 淡路町より徒歩5分) 東京都千代田区神田司町 2-16
http://www.n-as.org/rakudoan/map.files/map.htm
【定員】 40名くらい
【参加費】3000円(懇親会は同じ会場でプラス1500円・食事・飲み物付き・お酒別)
【申込み方法】 (facebook経由とメール経由の2通りあり)
① facebookイベントページ「世界征服に役立つ中東怪人対談」の参加ボタンをクリック。懇親会参加希望者はイベントページのメッセージ欄でお知らせください。
https://www.facebook.com/events/2226636350689299/

② bozenkun@hotmail.comに「世界征服希望」と書いて、お名前と参加人数、懇親会参加の有無をお知らせください。いずれも参加費は当日支払いです。
【注意】会場は板張りで前は座布団、後ろは椅子になります。


【中田考(なかた・こう)】 イスラーム法学者。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学博士)。著書に『イスラームの論理』、『帝国の復興と啓蒙の未来』、『みんなちがって、みんなダメ』など多数。最新刊は『一神教と戦争』(橋爪大三郎との共著)。


【浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)】 カイロアメリカン大学中東研究部、カイロ大学文学部セム語専科で学ぶ。その後イラクで映画制作、アラブ諸国との版権ビジネス、ソニー中東市場専門官などを経て、農業ジャーナリズムの世界へ。著書に『日本は世界5位の農業大国』『ドナルト・トランプ黒の説得術』ほか多数。昨年出した『カイロ大学』には秘密警察に7回拘束されたり、パレスチナでハマスのアジトで縄跳びを披露?したりというとんでもない留学生活が語られている。

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あひる商会ライブ「中東・ユダヤ音楽の夕べ」報告

昨夜のあひる商会イベント、辻圭秋さんの「中東・ユダヤの音楽の夕べ」、参加してくださったおおぜいの皆様ありがとうございました。これほど深い内容のレクチャーをまじえた生演奏は類がなく、こういう企画は民族音楽のライブでもおそらく他にはないと思います。懇親会もいろんな方がいらっしゃっていて、大いに盛り上がりました。

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ユダヤ音楽というと、スメタナのモルダウの旋律とか東欧系の音楽のイメージがありますが、辻さんによると一枚岩のユダヤ音楽という実体はないといいます。辻さんがエルサレムの音楽院で学んだのは、実際に存在するのは「ユダヤ音楽」ではなくて、イラクのユダヤ人の音楽、トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽、イエメンのユダヤ人の音楽などであったといいます。彼らはユダヤ教徒である前に別の文化を持っています。


しかし、ヨーロッパ人を中心としてつくりあげたイスラエルという国家では、国家イデオロギーとして西洋古典音楽をベースとした音楽というのがつくりあげられていき、それが「ユダヤ音楽」としてアピールされてきた。しかしそれはエスニックな雰囲気はあるとしても基本的に西洋音楽であるといいます。

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80年代ころに流行した「ワールドミュージック」も基本的に西洋音楽の調性にのりやすい旋律を採用していて、エスニックな響きはあるものの中途半端なものだったといいます。ひとつには中東をはじめ各地の音楽には西洋音楽の調性に乗らない微分音という音があり、ワールドミュージックでは、これが排除されていた。つまり微分音をなくすことが近代化だった。


ウードとネイ(斜め笛)とサズと歌によるさまざまな背景を持つユダヤの音楽の演奏、そして高度で深い歴史や宗教の内容を含んだおそろしく濃密な話でした。ひとつの言葉の背後には関連した膨大な歴史的内容が芋づるのようにつながっているので、いちいちそれを説明してもらおうとすると、それだけで終わってしまいそうになるので流すことにしました(笑)。中田考さんとの話になると、さらにディープになっていく。。。

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私も含めて、ときどき置いてけぼりにされながらの話だったかもしれません。しかし、世界にはわからないこと知らないことがたくさんある、どこまでいっても世界は複雑でよくわからない、でもそれが面白いという思いを新たにしたイベントではなかったかと思います。


「わかりやすさ」をめざすと微分音を排したかつての「ワールドミュージック」のようなものになりかねませんが、辻さんの話はあえて自分たちが「なにをわかっていないのか」、「わかること」よりも「わかっていないことが、なにかわかる」ことのほうが面白いということをつきつけてくれる貴重な話でした。


お手伝いくださったあひる商会オーロラ部長、みあげる部長、すごいひと君ありがとうこざいました。

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翻訳本『10代からの社会学図鑑』が発売!

わたしが翻訳した『10代からの社会学図鑑』(クリス・ユール&クリストファー・ソープ/三省堂 2200円+税)が本日(11月22日)発売です。

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世の中であたりまえや常識と思われていることの多くが、じつは時代や社会のありかたによって規定されることを示してくれるのが社会学。アイデンティティ、教育、制度、犯罪、貧困、宗教、グローバリズム、健康、男女の性といったものも、自明のものではなく、その概念を扱う社会とのかかわりを抜きには考えられません。


そうした社会学の基本的な考え方が見開きワンテーマでイラストをまじえて平易に、しかもかなり広範囲にわたってていねいに解説されています。マルクスやデュルケームから現役の社会学者まで人物ごとの紹介つき。「10代から…」とありますが、30代でも90代でもノープロブレムです。もっとくわしく知りたい方には同著者による『社会学大図鑑』(三省堂 4200円+税)もあります。


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以下は校正校閲と、編集の一部を担当された藤本なほ子さんによる紹介文です。(´Θ`)ノ

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7月に刊行された『社会学大図鑑』の姉妹編といえる書籍で、編著者も共通しています。
『10代からの社会学図鑑』は、人物ごとの項目立てだった『社会学大図鑑』とちがい、テーマごとの項目立てです。現代社会における諸問題を直接に扱い、若い読者層の関心も惹きやすい構成となっています。


「社会学を知る」というより、「社会学的な視点から個人的/社会的な問題をとらえ、考える」という方針が前面に出された本です。(その結果として、社会学を直接に知り、「社会学的想像力」を身につけていくための本となっています。)


この方針が全ページで実践され、かつ欧米の社会/時代/歴史の文脈に沿っているので、一定の教養のある方々にも必ずや得るところが多いだろう、と思います。


目次

○社会学って何?
○社会学者はどんなことをするのか?
○研究方法

「私ってだれ?」(アイデンティティ)
 ・私のアイデンティティって何?
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 ・女の子、男の子
 ・女性と仕事
 ●人物紹介/ジュディス・バトラー

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 ・私はどこに属するの?
 ・人種って重要なの?
 ●人物紹介/イライジャ・アンダーソン
 ・だれを愛していますか?
 ・年齢と社会
 ・家族ってどういう意味?
 ・いまは、みんな中産階級なの?
 ●人物紹介/カール・マルクス
 ◎実生活のなかの アイデンティティ

「社会は存在するのか?」(社会制度)
 ・学校は何を教えるの?
 ・制度って、いいものなの?
 ●人物紹介/チャールズ・ライト・ミルズ
 ・権力をもっているのはだれ?
 ・宗教の社会的役割は?
 ・宗教は、まだ重要?
 ・田舎暮らし 都会暮らし
 ・コミュニティの感覚
 ●人物紹介/マックス・ウェーバー
 ・私たちはどうして働くの?
 ・仕事はどう変わる?
 ●人物紹介/アーリー・ホックシールド
 ・監視される労働者

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 ◎実生活のなかの 社会制度

「なぜすべてが悪くなるのか?」(犯罪と健康)
 ・なぜ人は罪を犯すのか?
 ●人物紹介/エミール・デュルケーム
 ・社会のルールを破る
 ・ホワイトカラー犯罪
 ・私たちはみな撮影されているのか?
 ・推理小説?
 ●人物紹介/ハワード・ベッカー
 ・健康と平等
 ・生きづらさとメンタル・ヘルス
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 ◎実生活のなかの 犯罪と健康

「どうして世界はこんなに不公平なのか?」(富と発展)
 ・スーパーリッチ
 ・富と地位
 ・貧困のわな

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 ・悪いのはだれ?
 ・人種差別はどこから来た?
 ・発展途上国は、どうしてまだ発展しないのか?
 ●人物紹介/ボアベンテュラ・デ・ソウサ・サントス
 ・グローバル化は、よいこと?
 ・グローカリゼーション
 ●人物紹介/サスキア・サッセン
 ・私たちは地球に何をしているのか?
 ●人物紹介/アンソニー・ギデンズ
 ◎実生活のなかの 富と発展

「現代の文化」(文化とメディア)
 ・我買う、ゆえに我あり?
 ・文化とは何か?
 ●人物紹介/ピエール・ブルデュー
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 ・余暇
 ・私たちは不確かな時間を生きている
 ●人物紹介/ジクムント・バウマン
 ・マスメディアはあなたに影響を及ぼしているか?
 ・だれがメディアを所有しているか?
 ・だれが、何をニュースであると決めるのか?
 ・あなたは、どこからニュースを得ているか?
 ・インターネットは、あなたに何をしているか?
 ・あなたはオンラインで生きているか?
 ◎実生活のなかの 文化とメディア

○社会学者人名録
○用語解説
○索引

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あひる商会トーク・小松義夫「曲がったことが大好き」はこんなかんじでした

写真家の小松義夫さんの話にはいつも魅せられてきた。もちろん世界中で撮影されてきた、とんでもなく不思議な家の写真の数々もすばらしいのだが、小松さんとしゃべったり飲んだりしたときに出てくる家を訪ねる旅の道中の話がとほうもなくおもしろい。このおもしろさをぜひ多くの人と共有したくて企画した神田楽道庵でのあひる商会トーク「曲がったことが大好き」(2018.11.18)だったが、やはり圧倒的におもろしかった。あの場にいられた方たちは本当に幸運だった。異論のある人はいないだろう。

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小松さんの語りは、曲がりくねっている。テーマを決めて、役に立つ知見などもちりばめ、結論めいたものをまとめあげる、というようなもったいぶったものではまったくない。かといって、べらんめえだったり、教訓やひとりよがりな哲学とも無縁だ。淡々と、素直に、謙虚に歩いているうちに、いつしか脇道にそれ、同行者や随行者が増え、思いもよらない、自分では想像すらできなかった気持ちのよい、とんでもないところへ連れて行かれてしまう。旅でいちばんおもしろいのは、そういうときだが、小松さんの取材の旅はそんなエピソードにあふれすぎていて、語りもまたそうなのだ。


ガーナに取材に行ったとき60年前に第二次大戦でイギリス軍に編入されてビルマ戦線につれていかれて日本軍と戦ったというガーナ人のおじいさんと出会った(ガーナ人が日本人と戦っていたというのもびっくりだ)。ガーナ人の彼は日本軍はやられてもやられても向かってくるので「日本人というのはなんなんだ?」とショックを受け、戦後ガーナに帰国してからも気になって、英語の新聞でHirohitoというのが出くると切り抜いてスクラップしていたという。そうやって60年以上気になりつづけていたところに小松さんが現れた。ガーナ人の彼は狂喜した。60年なぞだった日本人が目の前にいる! ひとしきり、彼にヒロヒトのスクラップを見せられたあと、小松さんがバスに乗って帰ろうとすると、そのおじいさんが後ろから走って追いかけてきて、「日本人、なに食うんだ?」と叫ぶので「米!」と返すと、飛び上がって喜んでいたとか。


40年以上「家」を撮影されてきた小松さんにとって、家というのは、気候や生活の変化などによってたえず変化していて、家を見るということは、そうしたさまざまな変化の中で、自分たちがいまどういうところに生きているのかを確認することにつながるという。とても、この夜の話のおもしろさは紹介しきれないので、またいつか企画します。来られなかった人はぜひ。

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