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*音楽をナマモノにせよ

正月にテレビを見ていると、紋切り型の言い回しがいつもにも増して耳につく。とくにニュース。「善男善女で境内は賑わいを見せていました」とか「訪れた人たちは名物の料理に舌鼓を打ち」とか「観客の間からはため息がもれていました」といった、千年一日のごとき紋切り型表現の乱れ打ちにはげんなりする。

紋切り表現は音楽の世界にもある。たとえば、表彰式のバックにかならず流れる音楽。あの原曲はヘンデルのオラトリオ「マカベアのユダ」のなかの「見よ、勇者は来たれり」という。また、運動会といえば定番の曲がある。文明堂のCMにも使われているオッフェンバックの「天国と地獄」の一節だ。

最初に表彰式や、運動会に、これらの曲をつかおうと考えた人は目の付け所がよかったかもしれないけれど、これだけくり返されてしまうと、もはや音楽というより効果音だ。サイレンが鳴ると、あ、救急車だと思うように、ヘンデルのこの曲がかかると、あ、表彰式やってるとしか思えない。音楽としてはすでに死んでいるといってよい。

音楽が死ぬとは、その音楽がもはや新鮮な驚きや発見を導いてくれるような力を失ってしまうことだ。使い古れさた紋切り型の言い回しがなにも訴えないように、音楽も好きだからといって垂れ流しつづけていれば、空っぽになってしまう。サティのジムノペディ、バッハの「G線上のアリア」や「トッカータとフーガニ短調」などもかなり危ない。

そこであることを思いついた。10回聴くと、データが壊れてしまう音楽CDというのを開発するのだ。いまのCDなどの再生ソフトは無限に再生可能だ。それが音楽の垂れ流しを促している。ところが、10回しか聴けなければ、みな一回一回を大切に、じっくり、ていねいに味わって聴くようになるだろう。

また、どうしても10回以上聞きたい人のために、ショップで有料でデータを回復できるようにする。こうすれば、音楽のむだな垂れ流しはなくなるし、ひとは自分のほんとうに望む音楽をだけを大切に聴くようになる。経済活動も活発化するし、環境にもやさしい。いいことづくめだ。

じつはもうひとつアイディアがある。賞味期限付きCDである。これは購入日からたとえば1カ月たつと自動的にデータが消えるようになっている。音質も賞味期限に近づくにつれ、悪くなっていく。ものによっては、購入から3日目くらいがいちばん音質がよくなって聴き頃というふうにする。CDの生鮮食料品化である。本来生のものである音楽を、CDでも生として扱うのだ。生ビールがあるのだから、生CDがあったっていいではないか。ほかにもアイディアがあるので、関心のあるレコード会社の方はコンタクトくださいね。

*後記

実際に、有効期限付きのCDやDVDが作られたことはあるらしい。しかし、人気がなくて結局、普及しなかったようである。思うに、マーケティングがまずかったのだ。一般のCDよりもお得だと思えるための付加価値をつけなくてはだめなのだ。

たとえば、温泉旅行付きとか、宝塚月組公演付きとかにする。そうなると、温泉マニアや宝塚ファンまでも購買層にとりこめるではないか。ちょっと頭を使えば、わかることである。

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