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*バジェット・リスナーの憂い

クラシック音楽を聴くようになるきっかけは人それぞれだろうが、自分の場合は、経済的理由が大きかった。学生時代、レコード代をいかに捻出するかというのは、けっこう大きな問題だった。ぼくはプログレが好きだったのだが、新譜だとLPが一枚2500円、レアものだと中古で3000円以上するものもある。こんな高いものばかり買っていられない。

そんなあるとき、はたと気がついたのがクラシックである。クラシックのLPには廉価版というのがある。同じLPなのに、安いものだと一枚1300円で買える。プログレやジャズ1枚の値段で2枚、ときには3枚だって買える。お得である。

プログレはもともとクラシック音楽の要素を取り入れた前衛ロックである。そう考えれば、プログレのルーツを1000円そこそこで聞けるというのは、得した気分である。廉価版クラシックの場合、聞いたこともない無名の演奏者だったりすることが多い。しかしマイナー指向の自分としては、こんな演奏家は自分しか知らないだろうという優越感に浸れるので、かえってうれしい。安いから演奏が悪いというわけでもない。

やがてレコードからCDの時代になったが、CDの場合、材料費や制作費が安いせいか、さらにがくんと値段が下がった。NAXOSレーベルのクラシックなど1000円均一だし、駅の地下街では民族音楽やジャズのCDが同じく1000円で売っている。輸入物クラシックの通販だと円換算して700円台のものもある。

いったい、CDはどこまで安くなってしまうのだろうかと思っていたとき、なんと近所の大型100円ショップで、100円CD(!)というのを見つけてしまった。ラインナップも豊富だ。クラシック、ジャズ、ヒーリング系など50枚以上出ている。オリジナル企画らしい。ジャケットの裏には「このディスクを賃貸業に使用することは禁止されています」と書いてある。賃貸業? 100円のCDを、それ以上の金を払って借りるやつが、どこにいるというのだ。

失敗しても、たった100円である。クラシックを2枚(ラフマニノフのピアノ協奏曲とベートーベンのピアノソナタ)とジャズ・ピアノ2枚、それにジャケットがピラミッドのヒーリング系CDの計5枚を買う。その横の売場に、やはりオリジナル企画らしい旅ロマンス小説シリーズが並んでいたので、その1冊『愛の迷宮・イスタンブール』というのをひっこぬいてレジに向かう。計600円+消費税也。

家に戻り、100円CDをプレーヤーにかける。ラフマニノフやベートーベンは、なんと演奏がホロヴィッツとギーゼキングとある。二人とも巨匠だ。演奏についてのデータは書いてないが、極度に古いのだけは確かである。演奏の善し悪しは、よくわからない。いずれにしても、100円である。そういわれてしまうと、なにもいえなくなる。

ジャズ・ピアノのほうは、アート・テイタム、ファッツ・ウォーラーといった名人たちの、おそらく1930,40年代の演奏や、初期のバド・パウエル、セロニアス・モンク、テディー・ウィルソンなどのオムニバスで、これはいい。録音が古いので音質はよくないが、そんなことはまるで気にならない。選曲もいい。嘘だと思ったら買ってみてください。100円なら損してもいいやという気になるでしょう。

ただ不思議なのは、内容がいいのに、ああ得したなという気分になれない。むしろなんだか悲しくなってくるのだ。これが仮に1000円だとしたら、得した気分になるかも知れないが、100円となると、思いは複雑である。これだけのものが100円で消費されてしまう世の中なのだということに、なんともいえない憂いをおぼえる。100円というインパクトがつよすぎて、ついあれこれ考えてしまい、演奏を純粋に味わえない。

いくら、いいものを安くといっても、程度というものがあるのではないか。100円というのは、作り手に対する敬意をあまりに欠いた値段だ。それはCDに限らず、100円ショップに入ったときに本能的に感じる思いである(といいつつ、けっこう買ってしまうのだけど)。理想をいうなら、100円ならば、100円なりのものを売ってほしい。その意味では、いっしょに買ったヒーリング系CDや『愛の迷宮・イスタンブール』は、まさに100円にふさわしいアイテムでありました。

 
*後記

最近は見ないが、何年か前、近所の中古CD屋で100円CDを500円で売っているのを見たことがある。べつにプレミアがついていたわけではない。たぶん元の値段を知らないで引き取った中古CD屋が勝手に値段をつけたのだろう。いくらなんでも100円のCDがあるなんて、その頃の中古CD屋の店員は知らなかったのかもしれない。

だとすれば、100円CDをたくさん買って、そのまま中古CD屋にもっていって、一枚150円で引き取ってくれたら50円儲かってしまうではないかと、ちらっと思った。20枚なら1000円の儲けだ。結局そのアイディアを実行する前に、100円CDはすっかりポピュラーになってしまった。さすがに、いま同じことをやろうとしてもむりだろうな。

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