« 2002年6月 | トップページ | 2006年2月 »

2006年1月

カトウ様! なんとかおっしゃって

家にいると、いろんな勧誘の電話がかかってくる。エアコンの掃除、投資のすすめ、新しい電話サービスの案内、家の掃除、新築マンションの案内からお墓の分譲まで、つぎからつぎへと、いろんな電話がかかってくる。メールの多くが援助の申し出なのにくらべて、電話ときたら金を払えというものばかりである。少しはメールを見習えと思う。

ある朝、8時半頃だったか、電話が鳴ったので受話器をとると、すすり泣くような声がする。

「もしもし」

「ぐす、ぐす(鼻をすする音)、オレ……人はねちゃった」

「……?」

「オレが悪いんだよ、脇見運転していて……スピードは出ていなかったんだけど、駐車していた車にぶつけちゃって……ぐす、ぐす」

起き抜けだったので頭が働かない。ぶつけた? だれだ? 弟か? いや、事故起こしたからといって泣いて電話かけてくるようなやつじゃないよなあと、あれこれ考えているうちに、ぴんときた。

ひょっとして、これが話題の振り込め詐欺というものではなかろうか。だとしたら、大歓迎である。いちどどんなものか、ぜひ経験してみたかったのだ。はやる気持ちを抑えつつ、さぞかしショックを受けたような声をよそおって、確認の質問を投げかける。

「ほんとうか! それでおまえ無事なのか? サトコさんはいっしょじゃなかったのか?」

「えっ?……オレは無事だよ」

「そうか! よかった。サトコさんも無事なんだな?」

「ああ……オレ一人だったから……」

「じゃあ、サトコさんは家にいるんだな?」

「ああ……」

思ったとおりである。サトコさんとは、そのときふと浮かんだ知り合いの女性の名である。一安心したふりをして、さらに訊いた。

「相手の車の人にけがはなかったのか?」

「けがはなかったんだ……でも、相手の車が修理不能なぐらいこわれてしまったんだ……不動産屋さんのベンツで、これからお客さんのところに行く途中だったんだけど……すぐに代わりの車を買ってもらえれば警察沙汰にしないといってくれているんだけど、それには300万かかるというんだ」

「金のことは心配するな、命には別状なかったんだから、金なんてどうでもいい。それよりもまずそこに行きたい。どこにいるんだ?」

「えっ? いや、不動産屋の人がこれからすぐ移動しなくてはならないというので、お金を銀行に振り込んでくれればいいというんだ」

「そんな失礼なことは私にはできない。なんとか、私が行くまでその不動産屋の人に待ってはもらえないだろうか。お金は直接、私からお渡ししたい」

「いや、その……あ、保険屋の人が話したいそうなんで替わるから(電話を替わる音)あ、もしもしお電話替わりました。わたくし、日動火災のスナガと申します。このたびは、息子さんでいらっしゃいますね、事故を起こされたということでわたくしが現場の調査をさせていただいたのですが、ご説明いたしますと、不動産屋のカトウ様のお車、メルセデスベンツのCクラスなんですが、ガードレール脇で一時停止されておりましたときに息子さんが脇見運転されていて、時速40キロくらいかと思われますが、左側後部より衝突されました。わたくしの見立てによりますと、カトウ様のお車の損傷はかなり激しく、ほぼ全損といってよい状態なんですね。ただ、カトウ様のご厚意で、これからクライアント様のところに至急行かれるとのことで、なるべく穏便に済ましたく、同等クラスの車を用意していただければ訴訟などには持ち込まなくてもよいとおっしゃっておられます、私どもの見積もりによりますと、使用年数などを考慮いたしまして約317万円になるのですが、300万でよろしいと、こうおっしゃってくださっています……」

「そうでしたか、息子がたいへんなご迷惑をおかけしました。ぜひお会いしてお詫びしなければ、私の気持ちがすみません。ひとつ腑に落ちないのですが、私も長年ベンツに乗っておるのですが、そのくらいの衝撃で全損するような車ではないと思っておりました。いったい、どのような損傷なのか、私もベンツEクラスのオーナーとして他人事ではありません。ぜひ、現場を拝見させていただきたい。そして直接、カトウ様にお詫び申し上げたい。お金も、直接持参いたしたい。カトウ様と話すことはできますか」

「ああ、それはちょっと……あ、ではカトウ様に替わります(カトウ様登場。3人目である)。もしもし、カトウです」

「このたびは息子の不注意でたいへんなご迷惑をおかけして、お詫びのしようもございません。お怪我はございませんでしたでしょうか」

「はい、大丈夫です……」

「カトウ様は不動産のお仕事をされているとのことですが、社長様でいらっしゃいますか。300万で穏便に済ませていただけるというご厚意にたいへん感謝しております。さっそくですが、お忙しいところ、申し訳ないのですが、いまからすぐにそちらに向かおうと思っています。もちろん、そのときにお金もお持ちいたします」

「いや、振り込んでもらった方がよいのですが……」

「そんな失礼な真似はできません。わたくしも、じつを申しますと小さな不動会社を経営しており、同業でありながらお仕事上のご迷惑をかけたこと、たいへん心苦しく思っております。ぜひ、お会いしてお詫びしたい。息子の不注意とはいえ、それはとりもなおさず、親である私の責任でもあります……」

「いや、はい……」

「カトウ様、正直申し上げて300万ではとても申し訳が立ちません。そんなはした金では、私のお詫びの気持ちに代えることはできません。どうか、ご遠慮なくおっしゃってください。お金の問題ではございません。私の気持ちがすまないのです。400万でも、500万でも、私としては喜んでお支払いする用意はございます。どうか、おっしゃってください、カトウ様! なんとかおっしゃってください、カトウ様!」

(ガチャ、ツー、ツー)

突然、電話は一方的に切られてしまった。


役者としての演技力からすると、不動産屋役のスナガ氏がダントツであった。弁舌のさわやかさといい、敬語の使い方といい、おそらく営業畑でそれなりの経験を積んできたものと思われる。この世界でなくても、十分営業マンとしてやっていけるので転職をすすめたい。評価A。

「息子」は正体を知られてはまずいので、ぐすぐす鼻をすするばかりであった。とっさの質問に機転が利かないので、役者としての力量は高いとはいえない。評価はC。

不動産屋のカトウ役は明らかなキャスティング・ミス。演技力もなければ、不動産屋社長としての貫禄もない。この業界は向いていないと思われるので、早くべつの道を歩んだ方がよさそうである。評価なし。

そしてなにより、後ろから追突したくらいでベンツが全損するという設定、そしてそれほどの事故に遭いながら車内にいた者が無傷という設定も安易すぎる。評価D。以上。

| | コメント (7) | トラックバック (0)
|

記事タイトル一覧

バックナンバー一覧です。上のものほど新しいエントリーです。♪は音ファイル付。

2015年



『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』を見た


国際化とはよそ行きになること? ーー東京メトロの江藤淳

松田松雄展 (岩手県立美術館 10/3〜11/29)

ランド・ポール『国家を喰らう官僚たち』


ネフェルティティの墓とオンム・セティ

河江肖剰「ピラミッド・タウンを発掘する」が発刊!


オギーからのメール


西江雅之さんのお別れの会


9/12 博多でコンゴ・トークイベントのお知らせ


脅威と恐怖

辻邦生さんの墓参り、ミシマ、ヒッチハイク


なぜアフリカの紛争が長期化するのか? ピエール・ペアン氏の話


新刊『たまたまザイール、またコンゴ』発売+トークイベントのお知らせ


中田考『私はなぜイスラーム教徒になったのか』のための、もう一つの解説


エジプト考古学者 河江肖剰東京講演会のお知らせ!

西牟田靖『本で床は抜けるのか』を読んだ


日本人人質事件をめぐるハッサン中田さんの緊急会見


パリの新聞社襲撃事件に思う


2014年

ニッポン最後の百姓一揆「三里塚に生きる」を見て

HUG ME, I'M PAKI (ハグして、私パキよ)

経済学者ロレッタ・ナポレオーニのイスラーム国(IS)分析

ナイジェリアからリクエストが・・・

ドゥミのこと

ハッサン中田さんのこと 2

星の王子さま、あるいはリアリティのダンス

想像力をめぐる挿話ーー辻邦生さんの命日に

コンゴ河のハンフリー・ボガート

「希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話」のこと

ファレルのHappyで英国のムスリムが踊ってみた

秘密があばかれるとき

Dance Mediumの公演「帰ル」〜覚醒したまま見る夢

作曲者偽装の物語

カメ脱走す!

取り返しのつかない物語ーー「かぐや姫の物語」

ハンナ・アーレントーー沈黙と思考停止の間


2013年

「インド英語のリスニング」という本が出ていた。

ネルソン・マンデラと沼沢均さんのこと

東京ミネラルショー2013へ行った

小瀧達郎写真展「PARIS 光の廻廊」ギャラリートークのお知らせ&パリの思い出

ハッサン中田さんのこと

鈴木純郎さんの展示がよかったこと

エジプトの沈滞、革命のトラウマ?

井筒俊彦は力道山と木村政彦の試合を見たか?

中国武術研究家の松田隆智さんの訃報

タリバーン幹部からマララへの手紙

「あの日、僕は旅に出た」、蔵前仁一さんの30年

エジプトの政変について思う

エジプトの行く末はどうなる?

横谷宣のギャラリートーク報告

好評につき再演決定!「コンゴ・アゲインーー20年ぶりのコンゴ河丸木舟旅」7月20日(土)@ネイキッド・ロフト

八ヶ岳山麓のアフリカンアートミューゼアムはすごい


横谷宣写真展4年ぶりに開催決定!

「魔女と呼ばれた少女」はとてもよかった

3/30 追加トーク決定!「コンゴ・アゲイン!ーー20年ぶりのコンゴ河丸木舟旅」

パッションフルーツは情熱の果物ではなかった。。。


トークイベントのお知らせ「コンゴ・アゲインーー20年ぶりのコンゴ河丸木舟旅」

追悼・岩田慶治先生

アルジェリア人質事件について思うこと、あるいはサン=テグジュペリと不帰順砂漠

はつゆき (かっぱくんとあひるさん 19)


2012年

キンシャサでコンゴ本を読む

キンシャサで拉致されかける

続・名前のわからない神さま


写真家の横谷さんはいまなにをしているのか?

名前のわからない神さま


澄みわたった絶望−−いわきで松田松雄展を見る


あの日、サイパンの鍾乳洞で

父の遺品の絵

「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること」

トライアスロンには向いていないかも。。。

舞踏家・長岡ゆりさんのソロ公演


かっぱくんの おにいさん (かっぱくんとあひるさん 18)



偶然のザイール河&トークイベントのお知らせ

辻佐保子先生とのお別れの会のこと

ポンガル@国分寺カフェスロー報告

あけましてハピドラム

2011年

 辻 佐保子さんのために、あるいは届かなかったキャンドル
 くりすますの とかいへ (かっぱくんとあひるさん 17)
 達人あらわる! (コミュニケーション力をめぐる その3)
 迷惑電話は格闘技か (コミュニケーション力をめぐる その2)
 わたしに声をかけないで (コミュニケーション力 その1)+講演会のお知らせ
 陸前高田被災地訪問の記 4 (避難所の村八分)
 放射性物質は法的には汚染物質ではない!?
 福島第1原発事故報告書のシナリオの矛盾ーー田中三彦さんに聞く
 カッパの皿回し、1年ぶりに更新
 またハピドラム
 陸前高田被災地訪問の記 3 (4月13日のこと)
 【再掲】 究極の癒し系? フロレンス・フォスター・ジェンキンスの肖像
 ひとはどこまで記憶できるのか
 陸前高田被災地訪問の記 2(被災者Kさんの3月11日)
 陸前高田被災地訪問の記 1(なにを持っていったか、なにが必要とされるのか)
 ハピドラムでサクラ
 見ていたのに見えていなかったもの
 犠牲と無責任ーー福島第1原発のこと
 思い出救護班
 被災していないけれど疲れた人たちのために
 京大カンニング事件と暴走する正義
 エジプト革命なる!
 エジプトのデモはどうなる? その2
 エジプトのデモはどうなる?


2010年


 おちばのきせつ 3 (かっぱくんとあひるさん 16)
 おちばの きせつ 2 (かっぱくんとあひるさん 15)
 おちばの きせつ 1 (かっぱくんとあひるさん 14)
 かっぱくんの なつやすみ にっき 6
 かっぱくんの なつやすみ にっき 5
 かっぱくんの なつやすみ にっき 4
 かっぱくんの なつやすみ にっき 3
 かっぱくんの なつやすみ にっき 2
 かっぱくんの なつやすみ にっき 1
 千葉市美術館の田中一村展
 クールなカブトムシ
 世界の聖地FILE
 空白は悩ましい(下)
 空白は悩ましい(中)
 空白は悩ましい(上)
 日本は世界5位の農業大国
 プチ発明
 横谷さんの手作り印画紙
 たまたま


 

2009年

 あひるさんの ゆめ (かっぱとあひる 7)
 エジプトの禁煙広告
 セバスチャン・サルガドの「アフリカ」
 SING FOR DARFURに思う
 小瀧達郎写真展@ギャラリー・バウハウスを見る
 軽井沢で辻邦生展を見る
 日本海でヨットを見る
 なつの まひるの ゆめ 後編 (かっぱとあひる 6)
 なつの まひるの ゆめ 前編 (かっぱとあひる 5)
 ハルツームのスーパーにて
 オバマとベールと黄熱病
 あまやどり (かっぱとあひる  4)
 カミングアウト
 エジプトの豚のこと その2
 エジプトから豚が消える?
 「美しい」新刊のお知らせ
 桜の花咲いて、野町さんの写真を見る
 横谷宣展満了御礼+オンム・セティ「ふしぎ発見」登場!
 横谷 宣と語る会 報告
 横谷宣×飯沢耕太郎ギャラリートークより
 Sさんの日記より

 
2008年

 横谷宣写真展 「黙想録」 のお知らせ
 ゴリタンの作文
 チングリッシュで行こう
 おばさまのコメントが文学であること
 カッパの皿回し、はじめました
 おばさま、芸術の秋をゆく
 イトヒロさんのこと
 定額給付金による補填+王道進行の話
 似ているような似てないような
 オンム・セティの翻訳本第二弾
 ラジオデイズ
 ラジオ深夜便
 大連のスパへ行きたい
 北京オリンピック予言の書
 孤独な鳥もときには……
 アートセラピーする
 すごい雷
 「孤独な鳥はやさしくうたう」+ジュバの蛍
 おはなみ (かっぱとあひる 3)
 はるを さがしに (かっぱとあひる その2)
 恐れを知らない男のインタビュー
 極東ブログでとりあげられた
 発作的特別編 「ゆきのひ もりのなかで」
 『転生』神々の領域?をかすめる
 ケニアの暴動のこと
 眠るひと2−−あるいは「求めない」こと

 
2007年

 眠るひと
 『転生』という翻訳本を出しました
 秋の山で反省
 ただの喪主だと思うなよ その2
 ただの喪主だと思うなよ その1
 大人の扇風機
 気分はグレートジャーニー
 鼠径ヘルニアなんて恥ずかしくない 1
 デザインのテロリズム?
 ンガ、ンガと釘を打ち、ラジオに出る 
 私の恥ずかしい写真、あげます

 
2006年

 クリスマス・スペシャル 後編
 クリスマス・スペシャル 前篇
 宇宙徘徊流転の旅へ
 ラッキーチェンジ、プリーズ
 「のだめ」のこと
 エジプトの酒がおいしくなったこと
 エチオピアでサングラスをかけると
 エジプト・エアはなつかしい
 発作的に水津さんのサイトをつくったこと
 マハカム河にたゆたう その2
 マハカム河にたゆたう その1
 夏休みの家 その6
 ダンディな男にはパパイヤが似合う
 夏休みの家 その5
 夏休みの家 その4
 奥志賀のモーツァルト
 夏休みの家 その3
 夏休みの家 その2
 夏休みの家 その1 
 夏のディーリアス
 楽器になった砲弾のこと
 認知症病棟のエナジー・フロー
 旅の翁に会いに行った
 私に恥ずかしい言葉を使わないで
 イルカのくる渚に感動は待っているか?
 妻の贈りもの
 ペンデの仮面の謎
 ますます貴公子がいっぱい
 「んっ?」
 さかなを食わないやつは……
 キャンペーンはご勘弁
 おじさんは変な人じゃない
 カトウ様! なんとかおっしゃって
 耳をそうじする
 復活のごあいさつ

 

2002年(旧館)この年の分は下に行くほど新しいエントリーになります。

 脳内ウォークマン  ♪
 名曲を殺すな!  ♪
 いい音なんかいらない
 音楽をナマモノにせよ
 隣人よ、目覚めよ  ♪
 隣人よ、静かに眠れ  ♪
 おい、聞いてるのか! ♪
 重低音はバブルの夢を見るか  ♪
 かくも甘きエコー  ♪
 終わりなき戦いへの序章  ♪
 目覚めよと呼ぶ声あり  ♪
 怨霊よ、鎮まれ!  ♪
 砂漠にホスピタリティを見た
 ベートーベンになる
 サカナを食べても、アタマは痛い
 恋するディジュリドゥ
 恐れを知らないアルバイト
 素直になったわたしを見て
 バジェット・リスナーの憂い
 貴公子がいっぱい
 ベートーベン七変化
 恐れを知らないコンサート
 ここ掘れ、わんわん
 クラブへ行こう
 Non Stop Fright はお好き?
 GKが国歌を歌うと……
 アイーダを歌おう
 大使館のほうから来た男
 気まぐれの女神が微笑むとき
 夢見るように目覚めたい
 リミックスの夜明け
 えっ? こんな子が、そんなことまで……
 「2001年」納涼バージョン
 エリちゃんのナビ
 聴くだけでわかる古代史
 古代の音が聞きたい
 村長さんの歌
 カール・パーマーなんて嫌いだ!
 リチャード・クレイダーマンって……
 究極の癒し系?
 聞こえない……つもり
 ぼくを探さないで
 ホスピスのオッフェンバック
 Pさんはアメリカへ行った
 音楽界の大川隆法

CD紹介館

  WATER FLOW  ♪
  ON THE ROAD  ♪


| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

耳をそうじする

といっても、いわゆる耳かきのことではない。耳には好き嫌いにかぎらず、いろんな音が一日中飛び込んでいる。CMのフレーズが耳から離れなくなるように、無数の音が脳にこびりついて宿便みたいにたまっていくことだってあるのではないか。これは正確には耳というより、むしろ脳の問題なのだろう。

効果的なのは、両手を耳に当ててふさいで、そこに流れているゴォーという音をしばらく聴きつづけることである。傍目には途方に暮れているように見えるが、なかなか気持ちいい。耳に残ったCMもこれをやると素直に消えてくれることが多い。
Rimg0005_1

ブログというのは書くことがなくても書いてよいという意味で画期的なのだろうが、まだ慣れない。
バックナンバー、後記や音をつけて何本か更新しました。カイロの結婚式の音(「怨霊よ、鎮まれ!」)をぜひお聞き下さい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

復活のごあいさつ

たいへん長らくのご無沙汰でしたが、「王様の耳そうじ」を復活します。再開を待ってくださっていた読者の方々、長きの不在、申し訳ありませんでした。これからはリニューアルしたブログ形式で、前よりもいっそう肩の力をぬいて進めていくつもりです。

初めて来られた方のために補足しておくと、「王様の耳そうじ」は音楽から騒音まで、音にまつわるさまざまな個人的経験についてのコラムです。もとは旅関係の出版社「旅行人」のウェブサイト内のプラネット・アパートの一部屋を借りて連載していたものです。更新がしばらく止まっていたのですが、このたびブログで再開することになりました。

ブロードバンドのおかげで、以前に比べて音声ファイルの扱いがずいぶんかんたんになりました。そこで復活以前のバックナンバーについても、自作の音声ファイルや画像、コメントなどを付け加えたうえで、随時、再アップしていきます。なお、復活以前の記事についてはタイトルの頭に*マークをつけてあります。サイドバーに自作のオリジナルCDの試聴コーナーも設けました。

               *

さて、「王様の耳そうじ」復活を決意した最大の理由は、更新を停止してからも毎日のようにやってくる熱烈なメールに心動かされたからである。その数は、いまでも毎日10通を下回ることはない。これには自分でもたいへん驚いている。

メールをくださる方々はシャイなのか、記事に対する感想や意見が書かれていることはまずない。けれども、どのメールにも、ラブコールといってもいいほどの、筆者への温かい厚意があふれている。人間関係が冷え切った時代といわれるが、これらのメールを読むたびに、まだ人間は捨てたもんじゃないとつくづく感じる。

昨日も、涼子さんという女性からメールをいただいた。美容室を経営している29歳の方だという。5年ほど結婚されていたらしいが、仕事の都合ですれちがいがつづき離婚したとのこと。つらい経験だったにちがいない。

きっと彼女は「耳そうじ」を読んで、なにか心に感じるところがあったのだろう、涼子さんのメールには「あなたに心と身体の隙間を埋めてほしい」と書かれていた。もちろん、書き手としてそこまでいわれて嬉しくないわけがない。しかし、文章で彼女を慰めることはできても、実際に会ってその心とからだの隙間を埋められる自信はぼくにはない。

さらに涼子さんのメールには「援助させてほしい」とも書かれていた。こちらの懐具合を気づかっての親切な思いやりに、胸が熱くなった。さりげなく「私はFカップです」と書いているあたりも、彼女の積極性を感じさせ、正直にいうと、少しだけ会ってみたいと思ったことを告白せねばなるまい。

とはいえ、いくら熱烈なファンとはいえ、見ず知らずの方からお金をいただくわけにはいかない。涼子さんがもしここを見ていたら、あなたのその気持ちだけで胸がいっぱいです、応援してくれてありがとう、そして幸せになってほしいとお伝えしたい。

ほかにも会社を経営されている25歳の女性、ご主人が一部上場企業社長という31歳の奥様、24歳の客室乗務員の女性、27歳のモデルをされている方など、エグゼクティブな若い女性ファンからのメールがたいへん多い。若くてリッチな女性たちに自分がこんなに人気があるとは思いもよらなかった。もっと自分に自信をもってもいいのだと勇気づけられる思いだった。

彼女たちからのメールを読んでいて感心するのは、そのマナーの良さである。先日も、ネット関係の仕事をされている奈津さんという28歳の女性からメールをいただいた。そこには「一方的なメールで失礼かと存じますが、そちらの都合も十全に考慮します。特に金銭面は私のほうで全てカバーできます。御返事いただけたなら、私の画像を送ります」とあった。

細やかな心配りを忘れない文面からは、彼女の育ちの良さが伺われる。若者たちのマナーが悪くなったといわれる昨今、こうした礼儀正しい若い女性ファンがついてくれていて、自分は幸せ者だと思う。

そうかと思うと、ストレートに500万円を下さるという方もいる。メールの文面には「厳正な審査の結果、あなたが選ばれました」とある。けれども、いかにぼくの書いたものを気に入ってくれたとはいえ、おいそれと500万円もの大金を受け取るわけにはいかない。やはり、気持ちだけ、ありがたく受け取っておきたい。

そんなわけでの更新が滞ってからも、毎日のようにやってくる温かいメールの数々に返事も出せないのが、いつも心苦しかった。「王様の耳そうじ」の復活を、そんなみなさまの厚意に対する、ほんのささやかな恩返しと思っていただければ、筆者として、これにまさる喜びはない。

| | コメント (9) | トラックバック (0)
|

« 2002年6月 | トップページ | 2006年2月 »