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ますます貴公子がいっぱい

以前「貴公子がいっぱい」というタイトルのコラムを書いた。音楽界には「ピアノの貴公子」リチャード・クレイダーマンをはじめ、「貴公子」と呼ばれる人物がけっこういるのだが、じつは芸術やスポーツなど、ほかの世界にも貴公子はあふれている、というよりそこいらじゅう右も左も貴公子だらけだったという話だった。
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そこで各界の貴公子のインターネット上の検索ランキングを行ってみたのだが、あれから4年、貴公子の世界はどう変わったのだろう。ネットの情報もあれからまた爆発的に増えていることだろうし、貴公子ランキングにもかなりの変化や入れ替わりが見られるのではないかと思って、調べてみることにした。

前回、「○○界の貴公子」というキーワードで検索してみたところ、ヒット数は2000件ほどだった。それでもすごい数だと思ったものだが、今回、同様に検索してみたところ、なんと12万件を超えていた。貴公子の数が4年で60倍にも増えたというわけではないだろうが、地方がローカル・ヒーローを求めているように、大衆は貴公子をもとめているのだ。

あらためて気づいたのは、貴公子の世界の細分化がいっそう進んでいるらしい傾向である。音楽の世界で見ても、フランス音楽界の貴公子(ドビュッシーだそうだ)、ブラジル音楽界の貴公子(フォンセカ)、韓国ポップ界の貴公子(ソン・シギョン)、台湾ポップ界の貴公子(ゼイ・チョウ)と、音楽ジャンルの枝分かれにしたがって、そこに貴公子が登場する。ちょうど木が枝分かれをくりかえし、その梢の先に花をつけるように貴公子の花が咲くのだ。

さらに忘れてならないのは、日本ではいわば「貴公子革命」ともいうべきできごとが起こっていたことである。それまでまったく知られていなかったある人物が、一気に貴公子界の下剋上を図ったのである。その人物とは、いうまでもなく微笑みの貴公子ペ・ヨンジュンである。
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ペ・ヨンジュンには、ほかの多くの貴公子と明確にちがっている点がある。それはほかの多くの貴公子が「○○界の貴公子」というふうに、あるジャンルを代表しているのに対し、ペ・ヨンジュンの場合、微笑みという抽象的な概念を象徴した形容詞が与えられていることである。これは貴公子界において、ひじょうに稀なことなのである。

微笑みのような抽象概念をシンボライズしている貴公子というのは、きわめて少ない、たとえば抽象概念の花形である「愛の貴公子」となると、ヒットするのはドン・ファンくらいである。しかし、ドン・ファンを愛の貴公子と呼ぶのには異論もあるだろう。日本だと、光源氏が美貌の貴公子と呼ばれているが、なにしろ1000年以上昔の人だし、架空の人物でもあるし、やはり微笑みの貴公子のインパクトにはかなわない。ちなみに『冬のソナタ』で共演したパク・ヨンハは「はにかみの貴公子」といわれているそうである。
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さて、このルール違反ともいうべき貴公子の登場によって、貴公子ランキングはどのような変化を遂げたのだろうか。ちなみに4年前のネット上の貴公子ランキングの結果は以下の通りだった。くわしくは前回のコラムを見ていただきたい。

10位 藤原道山(尺八界の貴公子) 17件
9位 溝口肇(チェロ界の貴公子) 18件
8位 和泉元彌(狂言界の貴公子) 23件
7位 鏡リュウジ(占星術界の貴公子) 29件
6位 パスカル・ラファエル(バレーボール界の貴公子) 43件
5位 野村萬斎(狂言界の貴公子) 57件
4位 熊川哲也(バレエ界の貴公子) 78件
3位 リチャード・クレイダーマン(ピアノの貴公子) 109件
2位 東儀秀樹(雅楽界の貴公子) 174件
1位 広瀬光治(ニット界の貴公子) 332件

今回の見どころは、なんといっても彗星のごとく登場して貴公子界に激震を与えたペ・ヨンジュンが、前回の覇者ニット界の貴公子・広瀬光治とどのような勝負をくりひろげるかである。
広瀬光治の華麗なニット

また、元祖・貴公子であるリチャード・クレイダーマンの健闘からも目が離せない。新人貴公子としては角界の貴公子・琴欧州もランキング入りが予想される。さらには狂言界の貴公子・和泉元彌のランクが一連の騒動とプロレス参入によって、どう変化したかも興味深いところである。

ということで、実際に検索してみた。検索方法は前回と同じく、検索エンジンのキーワード欄に「貴公子」という語と名前(たとえばリチャード・クレイダーマン)を入れて絞り込み検索をかけるというやり方である。正確無比とはいえないが、一応検索結果をチェックして名前と貴公子が結びついていないものは外した。結果は以下の通りである。まずは前回ランク入りしていたのに、今回は外れてしまった貴公子たちである。

パスカル・ラファエル(バレーボール界の貴公子) 9件
溝口肇(チェロ界の貴公子) 97件
鏡リュウジ(占星術界の貴公子) 155件
藤原道山(尺八界の貴公子)  156件
和泉元彌(狂言界の貴公子)  229件
リチャード・クレイダーマン(ピアノの貴公子)  280件
熊川哲也(バレエ界の貴公子) 294件
野村萬斎(狂言界の貴公子)  314件

なんと驚いたことに元祖貴公子にして前回3位だったリチャード・クレイダーマンがランク外である。50歳を過ぎても、なお貴公子としてがんばっていたクレイダーマンだったが、さすがに息切れしてきたようである。やはり「だんご3兄弟」やら「リカちゃんに捧ぐ」やら流行ものに追随するようになったことが貴公子力の低下につながったのだろうか。それでも前回の109件に比べれば、ヒット数は3倍近く増えている。ただ、ほかの貴公子たちの台頭ぶりがめざましすぎるのだ。それにくらべて和泉元彌はといえば、プロレス参入にもかかわらずランキングががくんと落ちてはいない。ヒット数だって前回の10倍である。逆にプロレス参入によってヤケクソ的な貴公子力がついてきたともいえよう。

さて、いよいよベストテンの発表である。

10位 琴欧州(角界の貴公子) 348件
 9位 高橋大輔(氷上の貴公子) 368件
 8位 錦織健(オペラ界の貴公子) 384件
 7位 東儀秀樹(雅楽界の貴公子) 394件
 6位 エフゲニー・プルシェンコ(氷上の貴公子) 799件
 5位 氷川きよし(演歌界の貴公子) 2270件
 4位 広瀬光治(ニット界の貴公子) 貴公子 2970件
 3位 デヴィッド・ベッカム(サッカー界の貴公子) 45200件
 2位 パク・ヨンハ(はにかみの貴公子) 51600件
 1位 ペ・ヨンジュン(微笑みの貴公子) 107000件

予想通り、琴欧州はベストテンに食い込んできた。また、トリノ五輪のあとだけに、オリンピック選手のランクインも順当な結果といえよう。歌謡界からは氷川きよしが唯一ランクイン。ライバルが少ない土壌で、着実な地位をかためてきたことが勝因だと思われる。

日本人トップは前回と同じく広瀬光治。前回1位をとったときには332件だったが、今回は2970件と約9倍にヒット数を伸ばしているところもさすがである。彼もまたニット界という、男性が希少な世界の中でユニークな地位を築いてきたことが、前回・今回の結果につながったといえよう。日本代表のベテラン貴公子として今後のさらなる健闘を期待したいところだが、一方で若手貴公子たちのいっそうの奮起を望みたい。
ニットの貴公子広瀬光治のエレガンスニット

しかしというか、さすがというか、ふたをあけてみれば、やはり他を寄せ付けないペ・ヨンジュンの圧倒的勝利であった。2位がパク・ヨンハと「冬ソナ」コンビに貴公子ランキングの1位、2位を占められ、3位も英国人ベッカムにとられてしまった。前回は1位、2位を日本人が占めたのだが、今回はトリノ五輪同様、日本は惜しくもメダルを逃した岡崎朋美、あるいは皆川賢太郎である。とはいえ、1位のペ・ヨンジュンと4位の広瀬光治のヒット数の差は桁ちがいであり、とても容易には超えられそうもない。この結果を厳粛に受けとめ、日本貴公子協会(?)あげての長期的な貴公子養成強化プログラムの遂行が望まれる。4年後のバンクーバーがたのしみである。

さて、最後に番外編の発表である。歴史上の人物、故人、架空の人物、動物など本戦へのエントリーがためらわれた貴公子たちのなかにも、人気者がけっこういるのには驚かされた。

大伴家持(佐保の貴公子) 140件
ドン・ファン(愛の貴公子) 269件
三木谷浩史(ベンチャー界の貴公子) 275件
源義経(悲運の貴公子) 532件
サイレンススズカ(音速の貴公子) 650件
光源氏(美貌の貴公子) 5640件
アイルトン・セナ(音速の貴公子) 21900件
テンポイント(流星の貴公子) 41600件

貴公子とはかならずしも、人間でなくてもよいようである。それにしても、競馬馬サイレンススズカとアイルトン・セナが同じ称号で呼ばれているとは。しかし、そのアイルトン・セナの2倍近いヒット数を獲得した流星の貴公子テンポイントには驚いた。レースならば、セナを100馬身くらい引き離して独走状態でゴールするようなものだ。
Tenpoint

テンポイントは昭和52年のレース中の事故が原因で悲劇の死を遂げた伝説の競走馬だが、いまだ日本人貴公子の誰も、彼にかなわないのである。だが貴公子界トップのペ・ヨンジュンは、それをさらに2倍以上、上回るのだ。恐るべし、ペ・ヨンジュン!

そんなわけで、今回は元祖貴公子リチャード・クレイダーマンの凋落ぶりと、圧倒的な強さを誇った新たな貴公子の王ペ・ヨンジュンの活躍ぶりが印象的だった。さらに貴公子がかならずしも人間である必要がないというのも、とりわけ大きな発見であった。

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コメント

真知さん、拙ブログへコメントどうもありがとうございました。
復活、感激です。
思わず過去記事もぜんぶ読み返し、懐かしさに胸がいっぱい。おかげでもうお昼なのにまだパジャマだよ、どうしてくれるよ、おい。

真知さんの重めな文章も軽めな文章も、昔から両方好きです。
フツーの人が、ふだんの生活をしながら「なんだかなあ」と漠然と感じていることを、形にして(書いて)くれるのがすごく可笑しくて、くっくっくっと笑ってしまう。フツーの人も似たようなことを感じているんだけど、それは形になっていないんですよね。

勝手ですがパジャマを着替えたら拙ブログにリンク張らせてください。
これからのますますのご発展を期待しています。マジに!

投稿: 三谷眞紀 | 2006年3月 5日 (日) 11時31分

>三谷眞紀さま
ありがとうございます。
お昼なのにまだパジャマだよ、どうしてくれるよといわれても、どうにでもしてさしあげるわけにもいかず、おろおろしてしまいます。お元気そうでなによりです。顔面の調子が悪く、あまり元気ではありませんが、これからもよろしく。

投稿: 田中真知 | 2006年3月 6日 (月) 02時34分

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