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エジプトの酒がおいしくなったこと

エジプトが元気である。なにが元気って、ビールが本当に美味しくなった。1990年代の後半まで、この国の国産ビールといえば「ステラ」という銘柄だけだった。ただし、その味はといえば、しょっぱい石けん水といったかんじの、なんともいえないもので、しかも、瓶によって内容量もばらつきがあれば、味もしょっぱかったり、酸っぱかったりとばらばらだった。いまはステラの味もずいぶん進化したが、90年代初期にはステラを買うのはクジをひくようなものだった。

アレキサンドリアのホテルでこのステラを注文したことがあるのだが、1本目はコップに注ぐとビールなのに不気味に白濁していた。こんなのは飲めない、べつのをもってこいと2本目を頼むと、今度はすっかり気が抜けていて、まったく泡が立たない。これもだめだと3本目を頼むと、今度は中に白い絆創膏のようなものが浮遊している。やれやれ、これもだめかと、それでもしつこく4本目を頼む。こんどは黒ビールでもないのに色が茶色っぽく、すえたような臭いがする。かんべんしてくれよ、と5本目をたのんで、ようやく本来のしょっぱい石けん水の味のするステラが出てきた。

ところが、勘定をしようと請求書を見ると、なんと五本分の金額が書かれている。おい、こんなので金取るのかと、ウエイターに食ってかかる。ウエイターはすました顔で、だって五本注文したではないかという。そうじゃない、どれもこれも腐っていたから代わりのを持ってこさせたんじゃないか、こんな腐ったビールでカネをとるつもりとは信じられないというも、相手は腐ってなんかいないという。腐っていないというのならこの白く濁ったやつや、この中に変な物が浮かんでいるやつを飲んでみろ。ところが、ウエイターは自分はムスリムだから酒は飲めない、だからこれが腐っているかどうかもわからない、ともかくあんたは五本注文したのだから、その分を払えと言い張る。

らちがあかない。そこでマネージャーを呼びにやって、五本のビールをそれぞれコップに注いで、その色や臭いをたしかめさせた。ところが、やってきたマネージャーは、まったく気の抜けたビールを一口含むと、あろうことか「ノープロブレム」とのたまわった。ウエイターが横で勝ち誇った顔で、こっちを見てにやついている。やれやれ。ともかく、こんなビールに断じて金は払わないといって、一本分の金だけをおいて立ち上がり、そのレストランをあとにした。うしろからミスター、ミスターと声をかけられたが、無視してそのまま店を出た。

さすがにこういう経験は一度だけだが、ふだんでもステラを1ダース買うと、一、二本はたいていハズレがあった。それでも、ステラはまだよかった。ワインにはさらに凄みがあった。エジプトは歴史的にワイン発祥の地である。だから名前も、クレオパトラとか、ファラオとか、プトレミー、オマル・ハイヤームといった、いかにも歴史的な重厚感のあるネーミングがなされていた。ところが、これらのワインを飲んだ翌朝は、かならず重厚感のある頭痛、ときには吐き気に悩まされるのがつねだった。

それでもワインはまだよかった。問題はエジプト産のウイスキーだった。下町の酒屋の店先には一見、スコッチによく似たボトルのウイスキーが並んでいた。ところが、その名前をよく見ると、Johnny Walker(ジョニー・ウォーカー)とあるべきところが、Black Johnny (ブラック・ジョニー)となっていたり、White Horse かなと思ってよく見ると、White House (ホワイトハウス!)であったり、Ballantine (バランタイン)かと思ってよく見ると、Valentine (バレンタイン!)だったりした。

ボトルの形や、ラベルのデザインはよく似せてあるので、一見だまされそうになってしまうのだが、当時、これらには絶対手を出してはいけないという大使館からの通達があったほどだ。というのも、その頃エジプト産ウイスキーを飲んでドイツ人が視力障害を起こしたという噂がささやかれていたからである。

だが、こうしたエピソードも昔話になりつつある。数年前から酒造産業に民間が参入し、ドイツのノーハウでのビール造りが行われるようになって、エジプト・ビールは生まれ変わった。ステラも前に比べれば飲める味になったし、品質も一定してきた。SAKARA GOLD(サッカラ・ゴールド)という国産ビールはピルスナー系のビールとして十分満足できるレベルに達している。

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ビールだけではなく、ワインも進化した。これまでエジプトのワインは、ワイン通にいわせればとてもワインと呼べるしろものではなかった。後味が薬くさく、添加物だらけなのが素人にもわかるような人工的な味で、おまけに翌朝には激しい頭痛がもれなくついてきた。けれども、2005年に発売されたというChateau des Reves(夢の城)という赤ワインは、チリワインを思わせるワイルドなコクと香りのある良質のワインである。ボトルもおしゃれだ。エジプトもここまでできるようになったのかと、初めて口に含んだときは少なからず感動した。頭痛のおまけもついてこなかった。

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ただ、これまで泡の立たないステラや、頭痛ワインを飲んだときに感じた、ああエジプトだなあという不愉快と愉快のいりまじった独特の感慨が失われていくのは、なんとなく寂しい気もするのだが、酒好きにとってエジプトの愉しみがひとつ増えたことにはまちがいないので、まあよしとしよう。ちなみに、オマル・ハイヤームとか、プトレミーといった従来のエジプトワインもラベルデザインを変えて中身は昔のままで売られているので、頭痛とともに昔のエジプトを懐かしみたい人は、こちらもどうぞ。

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「旅行」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。久しぶりです。岡崎大五です。
ぼくもエジプトでは、ツアーで行ったおり、ルクソールでおもしろい経験をしました。
あるお客さんが、四つ星ホテルレストランでワインを頼んだのですが、なんとウエイター、コルクを抜くとポケットに仕舞い込んだのです。
「コラ、そこの!」ってなもので、コルクを出させると、あろうことか、コルクは半分腐っており、ボロボロ崩れる有様です。注いでもらって飲んでみると、かなり酸っぱい。それで百ドル超の高級ワインです。
もちろん金は、意地で払いませんでしたが、みんなでその酸っぱいをしっかり飲んで、レストランの悪口を言いながら、ルクソールの夜の楽しんだのでした。

「ノープロブレム」 と言い放ったマネージャーもすごいけど
そのまま (ケッ) と出て来た田中さんもすごいですね。
甲乙つけがたいです。


しかし、今回のブログで1番冴えていたのは、ナンと言っても写真の 「カメ」 ですね♪

特に、左に見える足がエグイです・・・・・ 


↑のコメント、名前入れ忘れておりました。
スミマセン。

>岡崎大五さま
大五さん、お久しぶりです。ルクソールの四つ星ホテルというとメルキュール(エタップ)あたりでしょうか。うちの奥さんはアスワンの最高級ホテルのオールド・カタラクトでアイスクリームをたのんだら中にガラスの破片が入っていました。また、いまはなきカイロの日本食レストランで酢の物を頼んだら、酢ではなく洗剤がたっぷり入っていたこともあった。この手の話は枚挙にいとまがないなあ。

>森ルンさま
あのカメはカイロの友人宅のテーブルで飼われています。後ろ脚が萎えてしまっていて、前脚だけでいざるようにしてテーブルの上をうろうろしています。一日にキュウリとレタスをちょっとだけ食べて、ささやかなおしっこをするくらいの粗食でおとなしいカメです。
われわれの食事のときもテーブルの上をうろうろしているのですが、友人は気にしていないので、ぼくもときたま皿のところによってくるカメをどけながら食事していました。

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