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2007年7月

大人の扇風機

ヘルニア手術記のことを書くつもりが、また間があいてしまって季節はもう夏である。手術痕もだいぶ目立たなくなってきた。初めのうちは、患部の切開痕がマンゴーの種を埋め込んだような形に盛り上がっていて、さわるとかちかちに硬かったのだが、それがだんだんしぼんできて、いまではシシトウくらいにまで縮んだ。


ヘルニア手術記のつづきは次回書くとして、その前に最近のちょっとした発見について記しておきたい。だんだん暑くなってきたので、最近、物置から扇風機を出した。ところが、今年のうちの扇風機は、昨年までとちょっとちがうのである。なにがちがうかというと、今年の我が家の扇風機は「大人の扇風機」になってしまったからである。


扇風機に「大人」と「子ども」のちがいがあることを知っている人は、ほとんどいないだろう。ぼくもそうだった。けれども、今年の我が家の扇風機は、まごうことなく「大人の扇風機」としか呼びようのないものになってしまった。
 

「大人」といっても回すと羽にエッチな絵が浮かび上がるとか、そういういかがわしいものではない。ここでいう「大人」とは思慮分別のある人という本来の意味である。そういわれても、わけがわからないと思うので、写真をごらんください。
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これが大人の扇風機である。もとはなんの変哲もないふつうの、というよりふつうより安い扇風機なのだが、見ればわかるように羽を覆っている円い金属製のガードがない。去年まではあったのだが、先日物置から出したときに、ガードを留めているネジがどうしても見つからなかった。

 
とりあえずガードをつけないまま組み立ててみたのだが、できあがってみるとガードがあるよりも、ずっとカッコいいではないか。すっきりとしてスタイリッシュである。白とスケルトンというカラーコーディネートなんか、なんとなく iPodとか、iPhoneとかみたいで、 iFan と名づけてもさしつかえなさそうなほどだ。そこでアップル製品といっしょに撮ってみた。
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うーん……やや無理がある感は否めない。とはいえ、扇風機という電化製品がいまひとつデザイン的にあかぬけなかったのは、あのガードのせいだったことははっきりした。あのもっさりした丸っこいガードのおかげで、扇風機はどうしてもぼてっとした印象を与えてしまう。いくら台座の形や色を工夫しても、あの重たげなガードがあるかぎり扇風機はデザインとして決まらないのだ。


ガードの役割は、当然ながら、うっかり手を触れて怪我をしたりしないようにするためだ。つまり、不注意な子どもとか、大人だったら、たとえばうっかり八兵衛みたいな判断力の劣った者にたいする配慮から装備されているのである。

 
逆にいうと、ガードが存在することによって、扇風機のデザインには子どもやうっかり者に対する媚びがどうしても含まれてしまう。これが大人のデザインにとって致命的なのだ。どんなにスポーティーな自転車であっても補助輪がついていたら台無しであるように、扇風機もまた、ガードがあるかぎり、どうしてもスタイリッシュな家電の仲間入りができなかったのである。
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ガードのなくなった扇風機は、頭部がすっきりして、どことなく高原に立っているエコ風車にも通じるようなスマートさすら感じられる。回してみると、さらにそのよさがわかる。スケルトンの回転翼は光を反射して、ときにCDの記録面のように虹色にかがやく。しかも、静かである。金属製のガードがない分、空気抵抗がなくなるためだろう、そのままで静音設計になってしまう。いいことづくめである。


もちろん、大人の扇風機の扱いには十分な注意が必要である。ガードがないのだから、幼児や子ども、小動物、あるいは大人であってもうっかり八兵衛のような人のいる家庭では、この扇風機は使えない。手でもふれたら痛いだけではすまないし、衣類などを巻き込む可能性だってある。まかりまちがっても、回転する羽の前で「あーっ」と声を出して、その音が「あ、あ、あ、あ」と変化するのを楽しもうなどという子どもっぽい真似はしてはならない。また、天井や壁から衣類をつり下げているようながさついた部屋での使用も厳禁である。つまり、思慮分別と判断力と用心深さを兼ね備えた本当の大人だけが、この扇風機のユーザーとなることができるのだ。


じつは、ガード留め用のネジがないのに気づいたとき、すぐメーカーにネジを注文していた。そのネジは10日ほどしてから届いたのだが、こうして「大人の扇風機」の緊張感に慣れてしまうと、いまさら「子どもの扇風機」なんてちゃんちゃらおかしくて使えない。家族には「こんなの、危なくて使えない」とか「羽がゆるんで吹っ飛んできそうで怖い」とか不評なのだが、どだいガキや粗忽者どもに、この大人の洗練をわかれというほうが無理というものだろう。


スマートで、スタイリッシュで、かなりデンジャラス、そんな「大人の扇風機」は、今日もクールな風を送ってくれている。あなたの家の扇風機も、この夏は一皮むいて「大人の扇風機」にしてみませんか。

 
 

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