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ケニアの暴動のこと

ケニアのナイロビで長年暮らしている早川千晶さんとパーカッショニストの大西匡哉さんが、昨年末の大統領選挙の結果をめぐって、ケニア各地に広がっている暴動について現地からブログでレポートをつづけている(大統領選挙によるケニア暴動レポート)。


暴動についてはテレビや新聞でも報じられているが、例によって遠いアフリカのことということもあってか、それほど関心を集めているようには見えない。たまたまニュースを目にした人たちも、アフリカは危険なところだ、殺し合いなんかして野蛮な人たちだという印象しかもたないという、いつものパターンになってしまうのかと思うと、あの大陸をずいぶん歩きまわった身としてはかなしい。


早川さんは今回の暴動の現場の一つとなったナイロビにあるキベラというケニア最大のスラムで、学校をつくったり図書室をつくったりという活動をつづけてきた人だ(彼女のくわしい活動については、ここここここを見てほしい)。彼女がキベラの住人たちとともに設立したそのマゴソスクールという学校に通っているのは孤児やストリートチルドレンや虐待を受けた子供たちばかりである。校長をつとめているのは、幼いときに両親を亡くしたリリアンさんという女性である。


キベラにも飛び火した暴動はマゴソスクールに通っている子供たち、そして学校にかかわっているケニア人たちの暮らしを直撃した。暮らしどころか、生命にかかわるような重篤な事態に発展している。早川さんのレポートには、いまなおつづいている暴動によって傷つき、荒廃していく人びとの気持ちや、あぶりだされていく矛盾が、恐ろしいほどの生々しさで記されている。同時に、この不条理の中で人間の善を信じて協力し合う人たちが少なからずいることに驚かされる。暴動については、背景を知らないとわかりにくいかもしれないが、YouTubeに挙げられた以下の動画が参考になる。(混迷ケニア・民族の亀裂の行方「きょうの世界」前編後編 2008.1.11 NHK-BS1より)


何であろうとわかりやすくないと見向きもしてもらえない今の日本では、アフリカのことに関心が向かないのは仕方ないのかもしれない。なぜならアフリカはけっしてわかりやすくはないからだ。でも、わかりやすくないからこそ、そこから得られるものは大きい。それには、わかろうとする努力、あるいはわからないまでも、そこに寄り添って彼らの視線に自分の目を重ね合わせてみようという努力がどうしても必要となる。


これからの時代、人はますます見たいものしか見なくなり、見たくないものは、まったく見なくてもすむようになっていくのではないか。メディアやインターネットを見ていると、その傾向にますます拍車がかかっているような気がして、それが怖い。


大統領選挙によるケニア暴動レポート(早川千晶/大西匡哉/神戸俊平)


 

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「雑記」カテゴリの記事

コメント

暴動レポート一気に読みましたが、悲しいですね。日本ではこういう現地レポートでなくてはわからないことが多いですよね。平和ボケで生活に困らない現在の日本にいては、なぜ今まで仲の良かった隣同士の一般民衆が暴力の応酬しあうのかわからないです。旧ユーゴ然り、バグダッド然り。

この日本でも、眠る人がいつでも安心して眠られる日々が続かんことを・・・!

投稿: ゴン | 2008年1月23日 (水) 19時46分

真知さん。こんにちは。
今年もよろしくお願いしました。

>これからの時代、人はますます見たいものしか見なくなり、見たくないものは、まったく見なくてもすむようになっていくのではないか。メディアやインターネットを見ていると、その傾向にますます拍車がかかっているような気がして、それが怖い。


これには自分を顧みてもそう感じます。
新聞をとらず、ネットでニュースを読むようになったら、とてもストレスが減りました。
でもたしかに、自分の興味あるニュースしか目に入ってこなくなった。

それでも、大新聞の死んだ時代には、ネットの可能性のほうを私は信じたいです。
新聞テレビが報じられない情報を、ネット配信のニュースで見たりしますね。

ところで大変遅くなりましたが、『転生』のレビュー書きました。
とても一般的なことしか書けずやや気落ち気配ですが……よかったら読んでください。
昨年の読書1年間のベスト10を作っていました。

投稿: 三谷眞紀 | 2008年1月23日 (水) 23時35分

>ゴンさま
隣人と殺し合うというところまで追い詰められる状況というのは日本に暮らしていると想像しにくいですが、きっとそうした状況があったら、われわれも同じことをするのだと思います。
「この日本でも、眠る人がいつでも安心して眠られる日々が続かんことを・・・!」という言葉に思わず頭を垂れたくなりました。


>三谷眞紀さま
ある意味、いまのネット社会は自分の脳のなかを堂々めぐりしつづけることを可能にしているのでしょう。他者や外部を無意識的に排除して、そのことに気づかずにいられる。そんなふうになってきた気がします。
前は感じなかったのですが、最近はitunesで音楽を聞いていると、自分が自分の好みという枠から抜け出せないことに圧迫感を覚えることがあります。そんなことってありませんか?
『転生』のレビュー、ありがとうございました。それにしても眞紀さんは読書家だなあ。そういえば、きのう友人から本をいただいたのですが、これが面白そうです。坂口恭平『TOKYO0円ハウス0円生活』という本です。


投稿: 田中真知 | 2008年1月24日 (木) 13時23分

「何であろうとわかりやすくないと見向きもされない・・・・」は同感です。そういう時代なのですね。

ケニアレポートはほとんどリアルタイムでインターネットの凄さを感じます。民族と民族の憎しみあいに火がついていますが、広がらないといいですね。鎮静化するとよいのですが。

「TOKYO 0円ハウス0円生活」の坂口恭平さんと赤瀬川源平さんのトークが3月15日午後7時から池袋ジュンク堂で行われます。この本のイラストが楽しい。

投稿: 小松田 堂鐘 | 2008年1月29日 (火) 14時52分

>小松田堂鐘さま
『TOKYO 0円ハウス0円生活』とても面白かった! これが現代の建築に対するアンチテーゼではなく、むしろ、こっちの生活のほうが本質的で正直だという見方にうなりました。水津さんの生き方・暮らし方を彷彿とする爽快な本でした。イラスト、いいですね。赤瀬川さんとのトークも面白そうです。

投稿: 田中真知 | 2008年1月29日 (火) 17時49分

「ケニア・レポート」現場の雰囲気がモリモリ伝わってきますね。早川さん、すごいなあ。神戸さんのレポートも味がありますね。2月20日夜。

投稿: 小松田 堂鐘 | 2008年2月21日 (木) 00時54分

10年以上前、初めてアフリカの地を踏んだ際、準備段階で読んだ資料の中に旅行人、歩き方、ロンプラ等の他、朝日新聞記者の松本仁一氏の記事がありました。帰国後も氏の書かれた本は全て読みました。本であれ、記事であれ、難しいアフリカ情勢が分かりやすい文章で書かれており、非常に理解しやすかったです。また、氏がカバーしていたアフリカ・中東がどんなに厳しい情況であっても、常に希望を忘れない姿勢を貫いておられました。自分のような単なるバックパッカーには、ちと耳の痛い論評をたまにお見受けしましたが、以後、新聞で氏の名前を見つけると必ずスクラップするようになりました。氏がなんと言われようと、自分は松本氏が書く文章が大好きです。
ところが、最近松本氏の記事を見かけない。朝日って退職は60歳だっけ?松本さんって何歳?と思いながら一応検索してみると、以下のwebサイトの2月18日の項目内に退社した旨の短い文章が載ってました。

http://www.h3.dion.ne.jp/~win-tom/page102-2008.htm

以前旅行人で、確かイトヒロさん(?)がカイロ駐在中の松本氏宅で食事をした話が載っていたことを思い出し、本来ならここがお聞きする場所ではないことを重々承知しつつ、やはりカイロ在住経験のある真知さんだったら何かご存知ではないかと思いつきました。

氏はなにゆえに退社されたのでしょうか?また、今は何をされ、今後どうされるのか、ご存知のことがありましたら、分かる範囲で教えていただけないでしょうか?ちなみに真知さんの見る松本氏ってどんな方ですか?勝手なお願いで申し訳ありません。

投稿: さっちゃん | 2008年5月 5日 (月) 18時54分

>さっちゃんさま

松本さんが退社されたのは知りませんでした。でも、それを聞いて松本さんが昨年の秋に朝日に連載されていた「国が壊れる」というジンバブウェのレポートが、どうしてあんなにじっくりと、執拗なまでに力のこもったものだったのか、わかる気がしました。あれがきっと在籍中の最後の仕事だったのでしょう。

松本さんの退社の理由や、現在や今後のことなどはまったく知りません。カイロでいちどだけお目にかかったことがありますが、お忙しいときだったようで、ほとんど会話らしい会話はしていません。でも、会社をやめられても、ジャーナリストをやめることにはならないので、今後もご活躍されていくのではないでしょうか。

松本さんの本は「アフリカで寝る」「アフリカで食べる」のように一般向けにわかりやすく書かれたものが多いですね。個人的には、売れ行きを気にせずにもっとハードに書いたものも読みたい気がしました。ただ、日本でそうした本が出しにくいのもわかります。やはり朝日の記者で亡くなられた伊藤正孝さんもそうでしたが、松本さんのようにアフリカを情熱をもって伝えようという記者がいることはだいじですね。そうしないと、本当に何も伝わってこないですから。

あまりお答えになっておらず、申し訳ありません。

投稿: 田中真知 | 2008年5月 5日 (月) 22時47分

真知さん

早々のお返事どうもありがとうございました。こちらこそ無理な質問をしまして申し訳ありませんでした。
勉強不足ながら、伊藤正孝さんの著書についてはまだ読んだ事がありません。もしかして「アフリカで寝る」か「アフリカで食べる」の巻頭か巻末で書かれていた、氏をアフリカに携わるきっかけにさせた方でしょうか?そうだとしたら、近々図書館で早速本を借りなくては。
本当に松本氏(ちなみに1942年生まれ。氏の文章はもっと読みたいけど、確かに会社勤めからは開放されていい年齢ですよね。)や伊藤氏のように情熱を持った記者が伝えないことには、確かに大多数の日本人にとっては遠い国のことで終わってしまいますよね。
自分は東アフリカ以南の縦断を95年から約一年旅しました。ハードでしたが、人間が便利な生活の中で忘れた動物的な本能を研ぎ澄まされる感覚が育つ旅だったように思います。いつかモロッコから南下し、中央アフリカを横断し、ケニア経由でエジプトまで上がりたいなんて更にハードな旅をして感覚をもっと研ぎ済ませたいなんて夢を見ながら10年以上経ってしまいました。
松本氏には、今度は新たな立場から書いた文章を期待したいですね。

投稿: さっちゃん | 2008年5月 6日 (火) 11時06分

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