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恐れを知らない男のインタビュー

 
以前、エジプトにいたころに知り合った風変わりな友人、アサカワくんのことを書いたことがある。彼は高校生のとき、テレビで湾岸戦争のニュースを見ていたく刺激を受け、高校卒業後、エジプトの大学に入るためにカイロにやってきた。

 
独学でアラビア語をマスターし、アメリカン大学、カイロ大学で学んでいたアサカワくんは、イスラム過激派によるテロが盛んだった90年代半ばのカイロで、当局とのさまざまな騒動を引き起こして数年後、国外退去同然に風のようにエジプトを去っていった好青年である(もっとも、その後も風のようになんどか舞い戻ってきたが)。前に書いたのは、その当時の一エピソードである。読んでいない人は、なかなか胸にせまる話なので読んでください。
 

世の中にはスゴイひとはたくさんいる。しかし、アサカワくんの場合、たしかにスゴイのだけれど、その行動があまりに常軌を逸していることが多く、あきれてしまうのだ。カイロにいた頃のぼくは、アサカワくんとそんなに行き来があったわけではない。彼はだれともつるまず、いつも単独行動だった。それでも、たまに会うと話をしたり、酒を飲んだり、うちで食事をしたりした。

 
そんなときに彼がちらっと聞かせてくれる経験談は、ぼくがふだん暮らしている同じカイロの話とは思えなかった。エジプトの警察に拷問を受けていましたとか、アパートに帰ったら部屋の荷物が全部ひっくり返されていましたとか、ガザに行っていたのですが、そこでハマスの連中に縄跳びを教えてましたとか、とにかく物騒なのである。だが、彼はけっして危険な行為に酔いしれるようなタイプの人間ではない。ただ、思いついたことを、よけいな逡巡をせず、ためらいなく、淡々と行動にうつしているだけなのだ。

 
そのころの彼はまだ19か20だった。それでもアラビア語と英語を自由に操り、おそるべき企画力と情報収集力、そして行動力に秀でた彼は、当時の在カイロの日本メディアすら舌を巻くレベルとスピードでアラブ・イスラエル世界の闇を突き進んでいた。アサカワくんの話を聞くのはたのしかったが、一方でこんなことをしていたら、ひょっとして、いつか殺されちゃうんじゃないかと、ひそかに危ぶんでいたほどだった。だから、彼がエジプトを出国できたときはほっとしたものだった。

 
しかし、その後もアサカワくんは持ち前の、逡巡なき行動力によって突き進んでいった。写真などろくに撮ったこともないのにカメラマンとしてイラク政府に招待されたり、イラクで映画制作プロジェクトを立ち上げたり、そうかと思うと、風俗の客引きをやっていたり、健康機器のセールスマンをしていたり、ベリーダンサーをプロデュースしていたり、はたまたモロッコでラジカセを売っていたりと、あいかわらず神出鬼没の人生を送ったあげく、いまは農業関係の会社の取締役になっている。
 

そんなアサカワくんがネット上で「留学と就職」についてインタビューに答えている記事があった! 顔写真も実名も出ている。ほかの多くの留学経験者の中にあって、彼の体験は相当特殊だと思うのだが、ちゃんと本当のことを話しているのかなと思ったら、本当に話していた。もちろん掲載されているのは経験のごく一部だが、それでも彼がどういうひとかは十分伝わる内容になっている。ぼくの知っている話もあれば、知らない話もあったし、ちょっとごまかしている話もあった。彼の話が「海外留学生・帰国子女のための適職紹介」の参考になるかといえば大いに疑わしいのだが、まあ、読んでみてください。絶対に面白いから!


 
 
 

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「雑記」カテゴリの記事

コメント

アサカワ君の「インタビュー」面白いですね。アイビーリーグに行く予定がバクダッド大を目指す、というのがふっとんでいてすごい。そこがだめだからカイロへ、というのも柔軟。先ずあっけにとられるのは世界情勢にすぐに反応したこと。地球に反応、ということか。湾岸戦争のあの遠隔操作で的にミサイルが突っ込んでゆくテレビ映像でそれ以後の世界が変わった、と言えなくもない。あれを見て、行動に移ったのは柔軟な心を持っていれば実に当たり前のことのように思える。

凄いというか面白い人ですね。
こういう人がいる、ということを知るだけで世の中、捨てたものではない、と思う。
彼はそのままでアーティストですね。「恐れを知らぬライフアート道」を走る人か?

アメリカのサンタフェに自宅とアトリエを持つ「鉄」の作家、トム・ジョイス氏を雑誌で紹介したいので経歴その他、送ってくれ、と言ったら彼の活動履歴が送られてきた。彼とはアフリカの製鉄法の話で盛り上がった。リストには展覧会、そして作品がどこに買われたか、などズラリと並んでいて、ただものではない、と思った。経歴には生まれた年、そしてEducation欄にはLife experienceとだけあった。鉄のようにどっしりした経歴だった。


アサカワ氏のお顔を拝見すると、一度どこかでお会いしたことがあるような気もするが、意外によくある顔なのか?

投稿: 小松田 堂鐘 | 2008年2月18日 (月) 18時33分

>小松田 堂鐘さま

アサカワくん、小松田さんと話が合うと思います。こんど、ひつじやにでもいっしょにまいりましょう。かれはカイロのかわえくんの親友でもあります。

「Education欄にはLife experience」とはかっこいいですね。

投稿: 田中真知 | 2008年2月18日 (月) 23時16分

お久しぶりです。
本、またご出版されたんですね。
おめでとうございます。さっそく購入しまーす!!

さて、久しぶりにHP訪問させていただいたら、なんとアサカワさんのお話ではないですか(笑)


私がアサカワさんにお会いしたのはもう十数年前になりますか。アサカワさんがエジプトから日本に戻っていたころです。

その口から繰り出される体験談はすさまじく、スパイ映画なんて目じゃないくらいにハラハラして面白かった!!!その後も会うたび、自分の"常識"が覆されて、帰る頃には、頭がジェットコースターに乗った後みたいになっていました(笑)。

国外追放??
尾行されたの??
今度はフセイン??
イラクで映画つくるの???
あ?
今度はモロッコでソニーですか??
しかも世界中からの選考でたった1人の枠に採用?

しかし…いつも10歳以上は年上に感じるのですが、いつも年令を聞くたび驚きます。私と2つほどしか変わらないなんて。

しかし、このインタビュー記事、果たしてほかの人の国際派就職への役に立つかはともかくも(これ実践できないと思う…)、いい刺激にはなるでしょうね。おかげさまで、私も久しぶりにガツンとやられました(笑)。

投稿: アリ | 2008年3月 1日 (土) 11時38分

>アリさん

こちらこそお久しぶりです。
お元気ですか。

スパイ映画、たしかにそうですね。
いま彼はドバイに行ってます。
例の7つ星ホテルの総料理長に、東海村の干しイモとか日本の農産物を買うよう営業をかけるのだとか。

アリさんはいまはどんなテーマで仕事されているのでしょう。またお会いできる機会をたのしみにしています。

投稿: 田中真知 | 2008年3月 2日 (日) 14時27分

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