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アートセラピーする

友人が企画にかかわっている「ルドルフ・シュタイナーと芸術」という展覧会に行った。シュタイナーは20世紀に活躍したユニークな思想家で、ぼくもずいぶん昔シュタイナーの研究会に出ていたりしたこともある。ただ、あまりに多様な面を持った人なので、理解しているとはとてもいえないのだが、昔シュタイナー関係の知り合いを訪ねてドイツを旅行したこともあり、なつかしくなって足を運んだ。


その展覧会のワークショップでシュタイナーの考え方にもとづくアートセラピーというのをやった。アートセラピーとは絵を描くとか、粘土でなにかを作るといった行為を通じて精神のバランスを回復させる療法。ドイツでは精神病院や学校、障害者施設などに広く取り入れられているらしいが、日本では保険点数にならないこともあって、なかなか普及しないとのこと。


指導してくれたのは、ブラウボイレンという美しい泉のある町で会ったことのあるKさん。当時の彼女は夢見るようなピュアな雰囲気をまとった女の子で、澄んだ泉のほとりでアートについて語るその姿は、カイロでエジプト人相手に怒鳴り暮らすような毎日をおくっていたぼくには天使のように見えたものだ。あれから10数年もたっているのに、あまり雰囲気が変わっていないのに驚いた。

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それはさておき、これが自分の描いたもの(↓)。紙は無地のハガキの裏である。描いてあるものがなにかということよりも、プロセスが面白い。どうやるかというとまず4人でテーブルを囲む。真ん中に花瓶にさしたバラの花がある。そのバラを、形を意識しないで、その葉と花の色だけを集中してよく見て、その色の世界に没入する。没入できなくても、しているつもりになる。


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いよいよ描き始めるのだが、使うのは3色(赤・青・黄)のパステルだけ。筆の代わりに脱脂綿と綿棒を使う。まず紙全体を暖かいと感じる色で満たすことからはじめる。脱脂綿にパステルをなすりつけ、その綿で紙をなでたり、こすったりして色をのせていく。赤でも黄色でも青でも、あるいは色同士を混ぜ合わせてもいい。


紙に暖かい色が広がったら、その暖かさの上に葉っぱの色を重ねていく。青と黄色をまぜて緑を作ってもいいし、そうでなくてもいい。とにかく自分の感じた葉っぱの色を描いていく。それができたら、こんどはその葉っぱから咲くバラの花の色を描く。横からだと形が強調されるので、真上からのイメージで描く。満足するまで色をのせたら、できあがり。30分もかからない。


やりかたは、これだけ。手法がシンプルで、形も描かず、使う色もかぎられているため、みんな似た感じになるかなと思ったら、同じテーブルのメンバーでも、人によって驚くほどちがいが表れるのが不思議だった。しかも、思いのほか複雑な深みも出てくる。シンプルなやり方なので、巧拙とか構図とかオリジナリティといったものにとらわれなくていい分、描き手の持ち味が逆にストレートに表れるのかもしれない。


できあがったら、ペーパーセメントをスプレーする。あと、ハガキは最初テーブルに紙テープで四辺を貼り付けて動かないようにしてから描く。描き終えたあとで剥がすと、剥がした部分が白枠のようになり、いかにもアートっぽく見えるのもいい。癒されたかどうかはよくわからないが、気分がリラックスしたのか帰りの地下鉄で、その場で知り合った人と話していたら、隣に座っていたおやじに「もっと小さな声でしゃべってください」と注意された。


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