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2008年7月

孤独な鳥もときには……

本を書くのは、もちろん人に読んでもらいたいからなのだけれど、人がそれをどのように受け取るかまでは書き手はかかわることができない。


文章を書くというのは、なにかの思いを言葉にのせることだ。でも、すべてを言葉に乗せてしまって、そこに書かれたこと以外にはなにも残っていないという文章は、あまり面白く思えない。むしろ、どれほど書かれていないことがあるか。書かれている言葉の背後に、どれほどの言葉にならない広がりや深さがあるかが伝わってくるような文章がいい。


自分の書くものもそうありたいとは思うけれど、それができているかどうかは自分ではわからない。でも、その書かれていないことを見透してくれるような読者からの反応にふれると、うれしくなる。


もちろん、メディアにありがちな通り一遍な紹介であっても、それがきっかけで本を手にとってくれる人がいればありがたいが、こんどの『孤独な鳥はやさしくうたう』のように、旅の本のようでありながら、じつは紀行でも冒険でもなく情報とも縁がないとなると、とりあげ方もむずかしいだろう。自分でもどういって紹介すればいいのかわからず途方に暮れる。


 
「あら、旅の本なの、あたしも香港の食べ歩きとか好きなのよ。そういう話なの?」とか聞かれると、思わず「はあ、まあ、そんなもんです」とか答えてしまって、あとでちょっとさびしくなったりもする。

 

だからこそ、その奥にあるものに気づいてくれる人がいると、ああ、よかったなという気持ちになる。また、そういう人が書いてくれた感想を読んでくれれば、この本がどのようなものなのか、読んでいない人にもなんとなく伝わるのではないかと思う。

 

ひとつは黒夜行さんという、面識はないが、どうやら書店員さんらしい方が書いてくださったブログの文章だ。ひんやりとしたたたずまいのある端正な文章も、なかなかいいです。

 

つぎは、面識はなくはない美人人気主婦ブロガーの方が10日間かけて書いてくださったという渾身のレビュー。こんなに熱く、しかも細部にいたるまで読み込んでくれている読者がいることは書き手冥利に尽きる。ただし「ディーセント」とか「グレイスフル」といった点については多分に誤解もあるのですが。

 

あと、編集長宛てに椎名誠さんから、「孤独な鳥……を読みました」というファックスが来たという。あの忙しい椎名さんが読んでくれたというだけでも驚きなのだが、その感想もとてもうれしいものだった。私信なので、引用するのはどうかと思うのだが、ほんのちょっとだけ引用させてください。

 
「……おだやかで沈静したようなふところの深い文章に感心しました。この作品は文学ですね。現代の話なのに古典的な風景がひろがっている。……いい文章、いい本です」


 
なんとなく、どんな感じのものかわかっていただけたでしょうか。もし読んでみようという気になっていただけたらうれしいです。


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