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孤独な鳥もときには……

本を書くのは、もちろん人に読んでもらいたいからなのだけれど、人がそれをどのように受け取るかまでは書き手はかかわることができない。


文章を書くというのは、なにかの思いを言葉にのせることだ。でも、すべてを言葉に乗せてしまって、そこに書かれたこと以外にはなにも残っていないという文章は、あまり面白く思えない。むしろ、どれほど書かれていないことがあるか。書かれている言葉の背後に、どれほどの言葉にならない広がりや深さがあるかが伝わってくるような文章がいい。


自分の書くものもそうありたいとは思うけれど、それができているかどうかは自分ではわからない。でも、その書かれていないことを見透してくれるような読者からの反応にふれると、うれしくなる。


もちろん、メディアにありがちな通り一遍な紹介であっても、それがきっかけで本を手にとってくれる人がいればありがたいが、こんどの『孤独な鳥はやさしくうたう』のように、旅の本のようでありながら、じつは紀行でも冒険でもなく情報とも縁がないとなると、とりあげ方もむずかしいだろう。自分でもどういって紹介すればいいのかわからず途方に暮れる。


 
「あら、旅の本なの、あたしも香港の食べ歩きとか好きなのよ。そういう話なの?」とか聞かれると、思わず「はあ、まあ、そんなもんです」とか答えてしまって、あとでちょっとさびしくなったりもする。

 

だからこそ、その奥にあるものに気づいてくれる人がいると、ああ、よかったなという気持ちになる。また、そういう人が書いてくれた感想を読んでくれれば、この本がどのようなものなのか、読んでいない人にもなんとなく伝わるのではないかと思う。

 

ひとつは黒夜行さんという、面識はないが、どうやら書店員さんらしい方が書いてくださったブログの文章だ。ひんやりとしたたたずまいのある端正な文章も、なかなかいいです。

 

つぎは、面識はなくはない美人人気主婦ブロガーの方が10日間かけて書いてくださったという渾身のレビュー。こんなに熱く、しかも細部にいたるまで読み込んでくれている読者がいることは書き手冥利に尽きる。ただし「ディーセント」とか「グレイスフル」といった点については多分に誤解もあるのですが。

 

あと、編集長宛てに椎名誠さんから、「孤独な鳥……を読みました」というファックスが来たという。あの忙しい椎名さんが読んでくれたというだけでも驚きなのだが、その感想もとてもうれしいものだった。私信なので、引用するのはどうかと思うのだが、ほんのちょっとだけ引用させてください。

 
「……おだやかで沈静したようなふところの深い文章に感心しました。この作品は文学ですね。現代の話なのに古典的な風景がひろがっている。……いい文章、いい本です」


 
なんとなく、どんな感じのものかわかっていただけたでしょうか。もし読んでみようという気になっていただけたらうれしいです。


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「本」カテゴリの記事

コメント

リンクで読める二件のレビュー文も
椎名誠さんのご感想も素敵でした。
そして『孤独な鳥はやさしくうたう』、
その期待を上回る内容でした。

この本の舞台になる様々な土地を
実際自分で訪れてみても
この本に書かれているものにはそう出逢えない。

それがいわゆる旅本と決定的に違うところですね。

なぜなら「情報」ではなくて、
ここにはその土地で出逢った人や、
交わし重ねた想いが書かれているから。


でも、その土地の空気や風をこの文章は捉えていて、
また真知さんが出逢った人たちや
また当時の真知さんご自身が
そこに生きている(た)という事実が
見知らぬ国を、自分にとっても少しだけ特別に、
美しく思わせてくれます。

(このたくさんの星のなかに、
 王子さまの星があるという事実があるだけで
 幾千の星たちがみんな笑って見えるように……)

機会があったら、
本書を片手にぜひどこかの国を訪ねてみたい。
そしてわたしの出逢いに耳を澄ましてみたいと、
改めて、旅することの魅力を恋しく思いました。

すてきな本をありがとうございました。

投稿: おおかわひさの | 2008年8月 8日 (金) 14時43分

>おおかわひさのさま

ありがとうございます。
ちらりとお会いしただけなのに、読んでくださってうれしいです!
Tuck Chick Born図書館で借りてきて読みましたよ。ああ、これも旅の話だなと思いました。

おおかわさんのブログのていねいなレビューも読ませていただきました。池の底の湧き水が水面に静かな虹色を盛り上がらせるという美しいイメージ、照れくさいですが光栄です。
話変わりますが、私もカメを飼ってます。
ぜんぜんかわいくないのですけど腐れ縁です。
こんどここでカメの話でも書こうかな(といいつつまた更新滞っているのだけど)。


投稿: 田中真知 | 2008年8月 9日 (土) 07時50分

真知さんと、かわいくない(笑)カメの関係、
なんだか面白そうですねぇ。

ぜひ期待しております。

転生、図書館で予約したのが届いたようです。
読ませて頂きますね!

投稿: おおかわひさの | 2008年8月11日 (月) 13時17分

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