フォト

田中真知の本&CD


  • 美しいをさがす旅にでよう (地球のカタチ)

  • Kodokunatori170pix_3

  • Omm2

  • Photo_4

  • Korean_version_2    「へんな毒すごい毒」   韓国語版

  • 転生―古代エジプトから甦った女考古学者

  • 21fc6g6ue9l

  • 494770230309mzzzzzzz

  • アフリカ旅物語 中南部編

  • へんな毒すごい毒 (知りたい★サイエンス)

最近のトラックバック

« 桜の花咲いて、野町さんの写真を見る | トップページ | エジプトから豚が消える? »

「美しい」新刊のお知らせ

 
新緑の美しい季節である。更新のたびに季節が変わり、それに合わせて背景を変更している気がする。で、今回は新刊のお知らせ。予告とかも書くつもりだったのだけど、手をこまねいているうちに出てしまった。タイトルは『美しいをさがす旅に出よう』(右の写真参照)。といっても旅行記ではない。椎名誠さんが推薦文を寄せている白水社「地球のカタチ」シリーズの一冊。

 
内容はというと、人はどんなときに美しいと感じてきたのか、なにを美しいととらえてきたのか。それは地域や時代によってどのようにちがっているのかといったことを、さまざまな角度から考えてみた美しさをめぐるエッセイのような評論のような旅行記のような、図版のたっぷり入った本である。
 

シリーズ・コンセプトが高校生から読めるようにということだったので、美学や芸術論のような抽象的な議論ではなく、具体的な例をできるだけとりあげた。美しいとはなにかということよりも、こういう美しさもありなのだ、こういうものでも美としてとらえられるのだ、という観点から世界を見つつ、美しいという感じ方をより柔軟にする感性のストレッチをこころみたつもりだ。


それは、たとえば、歴史や地域の中で風景というものがどのように見られていたかといったこと、廃墟や解剖図が美しさの感じ方を切りひらいたこと、文化によって「美人」の条件が異なること、化粧と美意識の変化のこと、インドやアフリカなど世界のさまざまな民俗芸術のこと、動物にとって美しさと生存戦略との関係といったこと等々、さまざまである。これまで発表した文章も一部収められているが、ほぼ書き下ろしである。


Rimg0009

活字も大きめだし、図版や写真もたくさん入っている。表紙の帯には某編集長がインドで撮影してきたばかりのワルリー画を、編集長本人に先んじてお借りして使わせていただいた(ありがとうございます)。一風変わった本だけれど、旅やアートの好きな人なら、おもしろく読んでもらえるのではないかと思う。


Rimg0017_2

本文でもふれているが、美しいと感じる心の動きとは、人間にとって、とても不思議な感覚だと思う。ことによると、われわれの感性の中で、いちばん大切なのが、美しいという感じ方ではないか。なぜなら、美しいという感じこそが、生命を深いところから充実させ、支えてくれるものだと思えてならないからだ。

 
人と人との関係性もそうだ。自分にとって美しいものに相手が関心を示してくれたり、相手が美しいと感じているものに共感が湧くと、どんな言葉で説得したり説得されたりするよりも相手のことがより深く受け入れられる気がする。美しいという気持ちはコミュニケーションの基本であるようにさえ思えることがある。

Rimg0012_2


 
不思議に思うのは、なにかのおりに、それまで美しいと思えなかったものが、にわかに美しく見える「とき」があることだ。美しいと感じる地平が、潮の引いたあとにあらわれたなめらかな砂州のように、どこまでも広がっていく。そんなとき、いままでネガティヴにしかとらえられなかった風景や、関心の対象でさえなかったものが、はっとするほど美しく思えたりする。ああ、きみはそこにいたのか、という驚きである。それはまぼろしか思いこみかもしれないけれど、たとえそうであっても、そのときに見えた光景というのは、とてもだいじなもののような気がする。そんなことを考えながら、この本を読んでいただけたらうれしい。
 

Utsukushi_1

 
 
 

« 桜の花咲いて、野町さんの写真を見る | トップページ | エジプトから豚が消える? »

」カテゴリの記事

コメント

「地球のカタチ」シリーズ。
このような楽しいシリーズ本があったとは
知りませんでした・・・。
「美しいをさがす旅にでよう」から読ませて頂きます

>JUZOさま
ありがとうございます。
シリーズはだいたいどれもやさしく書かれていますが、筆者の熱気やこだわりが伝わってきて楽しいです。
私の本だけ、ややページ数が多めです。

昨日、新宿のタイムズ・スクエアにある新紀伊國屋書店で「美しいをさがす旅にでよう」を探しましたが書棚、平積み、にはなく店員に探してもらいました。「コンピューターにはあるのですが、、、、」などと一生懸命やってもらいました。新入社員のういういしさ、というか真面目さはよかったのですが20分以上かかりました。「4階のレジにお取り置きしておきました」と伝えてくれたので4階で購入できました。4階レジも新入社員か、と思われる若い人が真面目に応対してくれました。これから読みます。

>カニ・コロッケさま
そうでしたか。20分以上もかけて手に入れてくださり、恐縮いたします。本の数が多すぎて、新刊もなかなか場所をとるのがたいへんな時代です。ありがとうございました。

素敵な本が出ましたね。
私も、「人はなぜ“美しい”なんてことを感じるのだろう」と常々思っていました。農業学校の卒論(といっても大学の卒論とは違うのでエッセイみたいなもの)を「美としての農」と題して、現代人がいわゆる農的風景に「癒し」を感じたりするのってなぜなんだろうと考えてみたりしましたが、もちろん結論を必要とするような疑問ではありません。
早速本屋で探してみます。大分では新刊の到着も首都圏より遅れますけれど。

>かおりさま
こんにちは。
「結論を必要とするような疑問でない」というのはそのとおりですね。美しいという感覚はなぞです。結論などない。
でも、いまは、わからないものでも、むりやり、わかりやすいパターンに押し込めようとする傾向がある。その傾向が加速化している気がして、わかりやすくないものが、ますます見えなくなっている気がします。

書き下ろし、というので読み下ろし、しようと思いましたが中身が濃くて途中数回休みました。ぼんやりと思っていたことが文字にされていて読んで気持ちよかった。この本を読んで物事を柔軟にとらえて生きてゆきたい、と思いました。コラムも深い味わいがありますね。

>カニ・コロッケさま
本を読んでくださりありがとうございました。
「ぼんやりと思っていたことが文字にされていて読んで気持ちよかった」というご感想はとてもうれしいです。
あの本の一つの軸は、目に映っていることと、見えていることはちがうという点だったと思います。「見る」以外の「聞く」「触れる」といったことも、ゆとりがあれば取り上げたかったのですが。

友人に「美しい・・・」をプレゼントするため新宿の紀伊国屋(旧)に行きましたところ6階の3Dの棚「美術書」コーナーにおいてありました。美術書かぁ、、、。
「美」ではじまるから「美術書」というわけか?ウーム。

風観羽 ta26です。

すごく面白かったです。やはり体験の裏づけが半端じゃないので迫力がありますね。

感想はブログに書いておいたので、よろしければご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/ta26/20090512

>カニ・コロッケさま
プレゼントとはうれしいです。
美術書コーナーですか。美術といえなくもないですが……たしかにジャンル分けしにくいかもしれないですね。わざわざ6階まで足を運んで見つけてくださり、ありがとうございます。

>風観羽さま
過分なご高評、ありがとうございます。
美しいという感覚は、閉塞感の裏返しなんだと思います。閉塞感というのは、そこに壁があるとたくさんの人が信じることによって生み出されている面があると思うのですが、美しいという感じは、そこに亀裂を見出すようなものではないかという気がします。

美しい新刊、結局書店で注文してやっと昨日入手し、一気に読み終えました。感想めいたものは、私もブログに書いてますのでよろしければ。

http://biwatoumi.cocolog-nifty.com/blog/

なにせ私にとっても卒論以来(!)のテーマなので、これからも参考にさせていただきます。

>かおりさま
「何を美しいと評するか、がその人のセンスを、ひいては人間性なんてものまでを、あらわすことになってしまう」ところが、美しいという言葉のふしぎですね。
美しいは日常生活の中ではなくとなく使いにくい。かわいいとか、きれいとか、すごいといった言葉の方が気楽に使えるのは自分の存在を問われないせいかもしれません。
きれいな空気、きれいな水とはいっても、美しい水、美しい空気とはあまりいわない。美しいとなると、そこになにか人間の手が介在するのかな。
ただ、人間の生み出したものでも、美しいカネとはいわないな。これは話がちがうか。

この、コメントのコミニケーションも、美しいと感じながら読ませて頂きました。
そんな、美しさを感じる。っていいな。

真知さん、たいへん遅くなってしまって申し訳ありません。
やっとレビュー書きました。

http://apakaba.exblog.jp/11616531/

長いです!
我ながらこっぱずかしいくらいに超ラヴです。
お役に立たないと思いますが、アマゾンのレビューにもコピペしてきましたので、しばらくすると掲載されると思います。

帯があるのとないのとで、本の見た感じの印象ががらっと変わるのもおもしろいですね。
インドの壁画があると、「わーキレイ、なんだろう?」と思って近寄るけど、帯がないと難しい学術書みたいに見えます。

>三谷眞紀さま
眞紀さんのレビューは、こちらの気持ちの奥のほうでうごめいているものをていねいにかきだしてくれるようで、まるで孫の手みたいです。ありがとうございます。
帯、アマゾンだと取られてしまうのですね。
「これは帯じゃなくてカバーなんです」といってもだめかな。

いや、あのーなんかすみません(なぜ、謝るのか)

本文中にたくさんの文献などが出てきましたが、中でもユルスナールの引用が印象的でした。
うちにも『ハドリアヌス帝の回想』がありますが未読です。
須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』が抜群にいいのだ、それは須賀敦子さんがいいからだ、と夫が絶賛していましたがこちらも未読。
まったくトホホです。
ともに白水社さんからも出ているのですね。
地球のカタチシリーズもそうだし、これを機に、白水社の本をバシバシ読んでみるとします。

>三谷眞紀さま
すみませんといわれても、こまってしまいます。
ユルスナールはいいですね。『東方奇譚』という短編集が好きです。
白水社のソフトカバーの翻訳物(Uブックスだったっけな)も面白いのが多いです。
『ハドリアヌス帝の回想』『ユルスナールの靴』は、ぼくも未読ですわ。

>若葉さま
コメントありがとうございます。なんて書こうかまよっていてレスが遅くなってしまいました。
「美しい」の語源は「空奇しい」だという話を聞いたことがあります。「空」(うつ)は民俗学で命や魂の生まれる空間といったような意味で、そこに「奇」つまり、かたよりというか、変化をもたらすものというか、そういうものがあらわれたときに、ひとは美しいと感じるのだと。
要するに、心に変化をもたらすものが、うつくしいといったイメージだったのかな。レスになっていないな。。。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 桜の花咲いて、野町さんの写真を見る | トップページ | エジプトから豚が消える? »

新刊


  • たまたまザイール、またコンゴ       「たまたまザイール、またコンゴ」(偕成社)

twitter

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

別ブログ


  • 年刊化阻止! Photo    Lady Gaga「 Judas」解読

写真家・横谷宣のご紹介

無料ブログはココログ