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カミングアウト

最近は世の中もオープンになってきて、いろんな人たちがこれまで公にできなかった自分の秘密をカミングアウトできるようになってきたのは、いいことだと思う。人知れず秘密を抱えて、人前ではそれを知られないようにふるまうのは、なかなかつらいものがある。


じつは、ぼくにもそんな秘密がある。といっても、自分自身にとっては秘密でも何でもなく、気がついたらそうなっていたのだ。自分には自然なことなのだが、他人からするとかなり変わっているようなので、あえて口にすることはなかった。知っているのは家族だけである。だが、その家族の反応はというと、「信じられない」「かっこわるすぎる」「恥ずかしい」など、すこぶる評判が悪い。


どうして、そんな差別的ないわれ方をしなくてはならないのか。べつに恥じるようなことではない。法を侵しているわけでもない。たまたま、自分がそうだったというわけで、それで日陰者扱いされるのは不本意というものだ。人に迷惑をかけているわけでもないし、気づいたらそうなっていたのだから仕方ないではないか。


それでも、他人にそのことを知られたいかというと、やはり抵抗がある。いちどうちに来た友人がネット検索をしたいというので、うっかり何も考えずにぼくのパソコンを使わせた。ところが入力しようとした彼がモニターを見つめて「ありゃ、なんですか、これ!」とびっくりしたような声を上げた。その声ではっと気づいて、あわてて友人をどかして、いや、なんでもない、あれ、どうしたのかなとごまかした。危なかった。


でも、考えてみればべつにごまかさなくたってよかったのだ。これがありのままの自分なのだから。それに、ひょっとしたら自分のような人間はほかにもたくさんいるのかもしれない。世間の目が気になって公にできないだけかもしれない。そう家族に話すと、「ありえない」「そんな人、会ったことない」と言下に否定される。


ほんとうにそうなのか。たしかに、これまで会ったことはない。でも、おおっぴらには口にできないだけで、本当はけっこうたくさんいるのではないか。じつは、そうした仲間が集うマニアックな雑誌がひっそりと売られていて、こっそりと秘密の会合などが開かれているのではないか。
 

そう思ってネットで検索してみたが見あたらない。ミクシーでコミュニティを検索してみても、やはりない。よほど地下深くまで潜入しているのか、それともほんとうにいないのか。いや、いないはずはない。


そこでまず自分からカミングアウトすることにした。これ以上、隠していても(隠しているわけではないのだが)謎はとけそうもない。もし、自分のような人が思いのほかたくさんいることがわかれば、家族からのたびかさなる暴言も不当であったことがわかるし、負い目を感じることもない。なので、もしぼくと同じタイプだという人は恥ずかしがらずに教えていただきたい。


肝心のカミングアウトの内容だが、パソコンの入力で「ひらがな入力」を使っている、ということである。

 
つまり、キーボード上でローマ字を打って、それを日本語に変換しているのではなく、キーボード上に書いてある「ぬ」とか「ふ」とか「あ」という文字を直接打って入力している、ということである。


家族のいうように、ぼくもこれまで「ひらがな入力」で文章を書いているという人に直接会ったことがない。年をとってから初めてパソコンにふれた人には、そういう人もいるかもしれないが、若い人で最初からひらがな入力でという人は、どのくらいいるのだろう。

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自分の場合、英文タイプはやったことがあったが、初めてワープロ専用機を買ったとき、そこに書いてあったひらがなを見て、ローマ字入力よりも打つ回数が少なくてすむと思って、以来、ずーっと疑問を持つこともないまま、ひらがな入力だった。とくに不便を感じることもなかった。


ところが、パソコンが普及するようになってから事情が変わった。外国でネットカフェに入ってメールを打とうとすると、キーボードに「ひらがな」が書いていない!

  
それならローマ字入力で打てばいいのだが、もうずーっとひらがな入力しかやっていないものだから、打つのが極端に遅い。たまに英文を書くこともあるので打てないわけではないのだが、ローマ字入力で日本語を打とうとすると思考とタイピングのテンポがずれてしまって、時間はかかるし文体はおかしくなる。

 
しかもネットカフェにおいてあるのは、ウインドウズ・マシンである。パソコンはマックしか使ったことがないので、ウインドウズの使い方がわからないので操作にも苦労する。二重苦である。短いメール一通書くのにも人の倍以上時間がかかる。


そんなわけで、ひらがな入力が少数派であるのはおそらくまちがいないのだろうが、じつはけっこうマニアックに使っている人は多いのではないかと期待もしている。だって、やっぱり二文字打つより、一文字で打つ方が速いし、宇摩志阿斯詞備比古遲神とか高御産巣日神といった言葉をローマ字で打つなんてなんだかなあという気もしないだろうか。

 
みんな、ほんとうにローマ字入力なのだろうか。キーボードに書いてある、あのひらがなに誘惑されないなんて、そっちのほうが信じられないのだが。 「あの有名な作家のだれそれはひらがな入力だった」とか、そういうたのもしい情報などもご存じの方がいたら教えてください。


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「雑記」カテゴリの記事

コメント

ああ、お仲間に出会えました。
ぼくもそうです。
オレンジを「ORENNJI」なんて打てるか! ORANGE だろ。
外国の旅先からなら、ローマ字でメールを打つより、英語文(中学生レベルですが)で打っちゃいます。
国内のコンピュータのキーボードから、ひらがな表記がなくなる日が来るのでしょうか。

投稿: w_yooshi | 2009年5月21日 (木) 17時38分

椎名誠さんはひらがな入力をなさっているそうですよ。

投稿: na | 2009年5月21日 (木) 22時35分

>w_yooshiさま
ああ、やはりいらしたのですね。うれしいです。ほんとうに、オレンジとかアップルをローマ字で打つのは抵抗あります。
いまは学校でローマ字入力を教えているらしいです。そうなると、いずれひらがな表記がなくなってしまうかもしれませんね。

>naさま
そうなんですか。それは心強い。入力方法と文体とが関係あるかどうかはわかりませんが、椎名さんだとなんとなく納得します。

投稿: 田中真知 | 2009年5月22日 (金) 00時05分

上級のタイピストはひらがな入力をすると聞いたことがあります。やはり打つキーが少ないので、スピードが上がるそうです。
1年以上前にワープロ3級を取得したときにインストラクターの方が言っていました。(ちなみに、1級レベルの速さはローマ字入力では不可能だそうです。

投稿: まき | 2009年5月22日 (金) 13時49分

私は大学時代ワープロを使っていた自分はカナ入力でしが、就職してパソコンを使い始めると基本設定がローマ字入力で、自分が使うたびに入力方式を変えるのが面倒で、ローマ字入力も覚えました。

投稿: ta | 2009年5月22日 (金) 17時20分

私もワープロ専用機を使っていた大学時代は、平仮名入力でした。パソコンを使うようになってからは、もう15年くらいローマ字入力です。

同僚の中にはオアシスの親指シフトが忘れられず、マックにオアシスキーボードをつないで使ってる人もいますよ。。。

英文タイプのQWERT配列は、タイピストの打鍵のスピードを遅らせるために考案されたと聞いたことがあります。だからけっこう打ちにくい配列なんですよね。ましてや日本語だと、なおさら。

投稿: lalombe | 2009年5月22日 (金) 22時36分

>まきさま
なるほど、そうなんですか。ひらがな入力はじつはプロフェッショナルな技術なのですね。
1級レベルの神業のようなひらがな入力を見てみたいものです。

>taさま
いまもシステムの基本設定はローマ字入力になっていますね。しかも以前ぼくの使っていたパソコンは、ひらがな入力に設定し直しても、再起動するとなぜかローマ字入力に変わっていることがあり不本意でした。

>lalombeさま
なんとlalombeさんも旧ひらがな党でしたか。ワープロ専用機時代は意外とひらがな党が多かったのかもしれませんね。
「タイピストの打鍵のスピードを遅らせるため」というのは、速すぎるとまずいことでもあるのでしょうか。

アルファベットの場合、ホームポジションから指だけを動かせるのでブラインドタッチがしやすいのでしょうが、ひらがなだと指の動きが大きくなるので、ブラインドタッチはむずかしいのでしょうね。ぼくはどっちもできませんが。

投稿: 田中真知 | 2009年5月23日 (土) 00時10分

私も、ひらがな入力をしています。
ローマ字入力もできますが(仕事上必要なので仕方なく特訓しました)、指がキーの位置を覚えているので、ひらがな入力のほうが早いのです。

投稿: すぎまるこ | 2009年5月24日 (日) 17時11分

はじめまして。

東京在住37歳男です。
私も学生時代ワープロでカナ入力を覚え、現在までカナ入力に誇りを持って生きてきました。(入力は速くないですけど)
語学留学をしたり、外資系企業に務めていることもあり英語で文章を入力することも多々ありますが、日本語で入力するときは今でもカナ入力です。(頭の中でローマ字変換がうまく出来ないからですが)

真知さん偏見に負けずに頑張りましょう。

投稿: めかかめ | 2009年5月25日 (月) 00時11分

>すぎまるこさま
こんにちは! ブログ、いつも拝見しております。
すぎまるこさんも、ひらがな入力でしたか。お仲間がふえてうれしいです。
そうなんです。「指がキーの位置を覚えている」んですね。アルファベットだとキーの位置関係はASDFというふうにはっきり浮かぶのですが、ひらがなの場合、なんとなく漠然としかおぼえていない。
たぶん真っ白なキーボードにひらがなでキーの位置を書いてみろといわれたら、できないと思う。でも、指をおくとなんとなく打ててしまう。ファジーな身体記憶なんです。

>めかかめさま
コメントありがとうございます。!
これまでカナ入力ということで、人前でパソコンを打つのをためらうところがあったのですが、カナ入力党の多さにたいへん勇気づけられております。もう肩身の狭い思いをしなくてもよさそうです。がんばりましょう。
「頭の中でローマ字変換がうまく出来ない... 」
そうですね。「ティ」とかローマ字だとどうやって打つのか、いまでもわかりません。
そのため海外のネットカフェから打つメールは、「アイスチーを飲みました」とかになってしまいます。

投稿: 田中真知 | 2009年5月25日 (月) 11時55分

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