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エジプトから豚が消える?

豚インフルエンザが世界中を不安に陥れているが、数日前の新聞にあったある記事に目を疑った。それはエジプト政府が、「豚インフルエンザ対策として、国内で飼育されている豚約35万頭の全頭処分を決めた」というものだ(朝日新聞09年4月30日)。となりのイスラエルで感染者が出たことを受けて、先手を打ったつもりなのだろう。しかし、これは、もし本当に実行されたとしたら、とんでもない暴挙である。


エジプトの人口の9割を占めるイスラム教徒にとって豚は不浄とされる動物であり、食用にされることはない。しかし、1割のキリスト教徒(コプト教徒)にとっては豚は、ウシやニワトリなどと同じく食肉である。そして、豚の飼育をなりわいとしているコプト教徒にとって、それは仕事を奪われることにほかならない。エジプト国内で感染が確認されたわけでもなく、豚から人よりも、むしろ人から人への感染こそが脅威だというのに、豚全頭処分はほとんど無意味である。


エジプトではさしあたっての脅威はむしろ鳥インフルエンザである。鳥インフルエンザへの感染例は60件以上あり、30人近くが亡くなっている。これほどの被害を出しながら、エジプト中のニワトリが処分されたという話は聞かない(感染源となった鶏舎の鳥は処分されたのかもしれないが)。そこには、豚を食べないイスラム教徒中心の政府の施策が露骨にあらわれている気がしてならない。


エジプトで豚の飼育に携わっているコプト教徒たちの多くはとても貧しい。彼らはカイロの街の東外れにあるモカッタムの丘の麓に暮らしている。そこはカイロ中のゴミを集めるゴミ収集業者たちが40年ほど前に強制移住されられた地区でもある。ぼくも訪ねたことがあるが、ところかまわず堆積するゴミにおおわれた壮絶な場所だ。生ゴミの発する熱のせいか、いたるところで噴煙が上がり、あたりは鼻の曲がりそうな強烈な刺激臭に満たされている。街にゴミが散乱しているというのではなく、ゴミの中に街があるといったほうがあたっている。

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豚はこれらの生ゴミを餌として飼育されている。アパートの一階部分がゴミで覆われ、その中に何十頭もの豚がうごめいていたり、街のいたるところに仕切りが作られて、そこにおびただしい豚が飼われていたりする。高いところから見ると、豚はゴミの海の中で、長い胴をてらてらと黒光りさせたナメクジの群れのように見える。それはたしかに清潔とはいいがたい。けれども、地方から出てきた貧しいコプト教徒にとってゴミの収集と豚の飼育は、彼らのできる数少ない仕事なのである。


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強制移住によってつくった地区にもかかわらず、政府はここを行政政策から切り捨ててきた。住民は長年、カイロのゴミ処理を一手に引き受けてきたにもかかわらず、最近では政府はゴミ収集を彼らの手から切り離し、民間のゴミ収集業者の手への移管する政策を進めている。要は、この不衛生なゲットーのような地区を一掃してしまいたいのである。


さらに住民に追い打ちをかけるように、たびたびモカッタムの丘から巨大な岩が崩落して人びとが犠牲になる事件が起きている。そこに来て、今回の豚の全頭処分のニュースである。イスラム教徒の豚への嫌悪感からパニックが起きることを怖れてというが、本音はこの不衛生な地区と住民と豚を一掃してしまうために、今回の豚インフルエンザ騒動は好都合と考えられたのだろう。しかも、国際社会に対しては、豚インフルエンザに対して迅速な対策をとる有能な政府というイメージを植え付けられるとでも思ったのかもしれない。

 
しかし、見かけの凄絶さにくらべて、この地区の雰囲気はけっして悪くない。人びとはやさしいし、コミュニティのつながりや同胞意識も強いし、治安もけっして悪くない。豚を全頭殺すということは、豚の飼育を生業として、ぎりぎりの生活を送っている何万人ものコプトの人びとの生活を殺すことである。それも、ほとんどなんの根拠もなしにだ。そのほうが、よほど将来的な社会不安をあおる結果になると思うのだが。愚かとしかいいようがない。

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コメント

今日のニュースで、コプト教徒が豚を処分しに来た職員に抵抗し、警官隊とぶつかったといっていましたね。政府は補償するといっているそうですが、コプト教徒は、その言葉は信用できないといっているのはうなずけます。まず金を受け取ってからでないと、とても信じられないというのは当然です。しかし、一時的に補償金を受け取ったところで、豚がいなくなっちゃったら今後の生活が成立しない。早くインフルエンザ騒ぎが収束するといいんですけど。

>某編集長さま
豚がイスラムでは禁忌の動物であることから、イスラム諸国ではあれこれねじくれた状況が起きているようです。レバノンでは、今回のインフルエンザはキリスト教の人口を減らすためにイスラム教徒によって発明されたという噂があるとか。アフガニスタンのカブールの動物園では、豚の公開がさしとめられたそうです。カブールの動物園に豚がいたというのも意外でしたが。

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