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2010年6月

空白は悩ましい(下)

コンピューターを修理に出していて続編が遅れました(ホントです)。そうこうしているうちに、某編集長が原稿料についての話を書いています。


さて、その後、2校目(私立)、しばらくして3校目(公立)から試験問題のコピーと書類が届いた。前回同様、入試問題への使用と二次利用の許諾を求める内容である。前回とちがうのは、こんどは「日本文藝家協会」という名前ではなく、「著作権利用等における教育NPOの基準に準ずる」とある。曖昧な名称なので「日本文藝家協会」などを含む一般名詞かと思ったが、調べてみたら、実在の団体だった。


うーん、いろいろな団体があるものだ。この団体は電話がかかってきたら、「はい、こちら著作権利用等における教育NPOです」と出るのだろうか。日本ヴィジュアル著作権協会なんて、名誉顧問が海部元総理だ。それはどうでもいいことだが、2次利用に関して、それぞれ異なる団体の基準をもちだしてくるというのも変な感じだ。しかも、こちらは、その協会の会員でないのに、それを適用されるというのも妙だ。もっとも、これは学校の問題というより、システムや慣例の問題なので、学校にどうこういったところでどうにもならないことは一校目とのやりとりでわかった。


ところで、著作権法36条によると、公表された著作物を、入学試験や模擬テストに使う場合、著作権者の許諾なく複製できるとある。法的に許諾が必要になるのは、2次利用からなのである。知らなかった。とはいえ、その著作権使用料に関しては法律的な取り決めがないので、各自がそれぞれに既成の団体の基準に従っているということらしい。


となると、最初の学校が欄を空白にしていたのは、その学校がこうした慣例に無批判にしたがうことに躊躇したからではないのか。つまり、あの空白は学校としての善意の表れだったのではないか。少なくとも、あの学校はほかから持ってきた基準を一方的に押しつけようとせず、こちらに選択権を与えてくれたのだ、初めは。だとしたら、あんな手紙書いて申し訳なかったなと落ち込む。。。


さて、2校目が提示してきた2次使用料は2000円。5パーセントの印税形式で、ページ数と部数から算出した額だそうだ。たしかに、問題集にした場合は、問題文は全体の2ページとか3ページとかだから、その率から印税を計算すると、そんなものなのだろう。なので、そのままサインしてハンコを捺して書類を送り返した。


ところが、その後も同様の書類が送られてくる。ただし差出人は学校ではなく出版社である。それも、あまり聞いたことのない出版社が多い。いずれも学習参考書や過去問を出している専門出版社のようで、要するに、入試に使われた問題を集めた問題集をつくるので再録をお願いしたいというのだ。


書類には「日本文藝家協会の基準に従って・・・」といった内容の許諾願いと、発行予定の問題集の部数やら印税率の計算式、その下に2000円から3000円くらいの金額が書かれていて「同意します」「同意しません」のどちらかにマルをつけてくださいとある。面倒なので、そのまま「同意します」にマルをつけて、サインして、ハンコ捺して送り返す。


ところが、同じような書類が、あとからあとから送られてくる。3月頃から、週に2通から3通、多いときには毎日のように、いろんな出版社から「許諾願い」が届くようになった。初めは一応文面を読んでいたが、似たような内容なので、だんだん区別がつかなくなってきて、そのうち、封筒が来ると、どこから来たかも確かめないまま機械的に「同意します」にマルをつけて、口座番号書いて、ハンコを捺して送りかえすのくり返しになった。


それにしてもいったい、どれだけ来るのか。数えていないが、これまでに「同意します」と書いて送った書類は、30通くらいになるのではないか。学参系の出版社とはこんなにたくさんあるのか。その中にあった書類で、これまでの3校とはちがう中学の入試にも、拙文が使われていることを知った。ただし、当の学校からの連絡はない。著作権法に従えば、2次利用しなければ許諾の必要はないとのことだが、一報くらいするのが礼儀ではないのか。一校目や二校目同様、けっこう有名な進学校なのに。一校目は誠実だったなあなどと思いながら、せっせと「同意します」にマルをして、口座番号を書いて、ハンコを捺す。


そんなことを日々くり返していたら、こんどは、この作業を代行しているらしい会社から、まとめて24社分の許諾書類が送られてきた。「許諾申請から使用料のお支払いまでをできるだけ共同で行い、先生のお手間を省くようにいたします」とある。こんな代行業者まであるとは、と呆れながら、「同意します」にマル。許諾申請の郵便はいまでもつづいていて、先週も4通来た。


これらの出版社が、どのようにしてうちの住所を知るかというと、出版社経由のものもあるが、大半はこのブログ経由である。プロフィールに記したメールアドレス宛てにメールが来て、書類を送りたいので住所を教えてほしいと書かれている。だけど、いままさにこの著作権の話をトップページでとりあげているところなので、ひょっとしたら最近書類を送ってきた担当者は、これらの文面をちらっと読んだかもしれないななどと想像しつつ、「同意します」にマル。


それにしても、これがしょっちゅう入試に問題が引用される作家だったら、「同意します」にマルの回数はさらに増えるのだろう。それはそれでたいへんなはずだ。内田樹さんが、以前、「自分の文章の試験での引用は自由にやってくれていい、お金もいらない、連絡も不要」と書いていて、そりゃ、あなたはほかで稼いでいるから、そんなこといえるのだろうとちょっとひねくれた気持ちにもなったが、この頻度や手間を考えると、そういいたくなる気持ちもわかる。ただし、内田氏がそういったのは、手間の問題ではなくて、著作物のありかたをめぐる別の議論との絡みだった。それは別の話なので、ここではふれない。


そんなわけで、今日も「同意します」にマルをつける。しかし、たとえ一校2000円とかであっても、これだけあとからあとから来ると「塵も積もれば」である。そう考えると、なんとなく萎れていた邪念がふたたび首をもたげてきて、つい価格コムなどまたクリックしてしまう。


そういえば、最近iPadとかいうのものが発売されたという。あんな電子回覧板みたいなもので世界が変わるとか、ねぼけたことをいっているやからが多いよなと思っていたが、どういうわけか、このところ、自分もなぜかiPadをもったら世界が変わる気がしてきて、先日町に出たときにも、つい見に行ってしまった。なるほど、これなら世界は変わりそうだ。「同意します」にマルだ。なにしろ、世界は「ちりつも」なのだから。


ところが、先ほどこれを書き始めて、机のかたわらに積んであった著作権関係書類を見直していたら、その束の下から、未納の自動車税の納税通知書を発見してしまった。納付期限も過ぎている。。。やっぱり、iPadなんかじゃ、世界は変わらないさ。店員に聞いたら、ローマ字入力オンリーでカナ入力はできないという。あんなものが、すごいなんていっているやつらは、まったくどうかしている。「同意します」にマルだ。

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