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2011年6月

放射性物質は法的には汚染物質ではない!?

暑い。いまでこの暑さなのだから8月にはどうなるのだろうと空怖ろしくなる暑さだ。空怖ろしいといえば、この前、” 怖れを知らない男” アサカワ君と原発事故のことについて話していたとき、彼がこんなことを口にした。


「真知さん、東電が放射性物質を勝手に海に流したり、大気中に放出したりできたりするのは、なぜか知ってますか。それは法律的に放射性物質が汚染物質ではないからなんです」


「えっ、そうなの?」


「そうなんですよ。どこを見ても放射性物質が汚染物質だと規定している文書はないんです。だから、あれは合法なんです」


アサカワ君(浅川芳裕くん)のことは、ここでも、これまでなんどか紹介している。食糧自給率のウソをテーマとして書いた彼の「日本は世界5位の農業大国」(講談社プラスアルファ新書)はいまやベストセラーになって「全日本人が読むべき書」みたいな帯がつけられて、どこの本屋にも並んでいるから、ご存じの人もいるだろう。今回の福島第1原発事故は、その日本の農業にも大打撃をあたえた。農産物や農地が放射性物質に汚染されて、野菜の出荷制限で農家はたいへんな被害を被っている。なのに、放射性物質が汚染物質ではないとは、どういうことか。


その数日後、アサカワ君が副編集長をつとめる雑誌「農業経営者」7月号(農業技術通信社)が送られてきた。中に彼が書いた「被曝放置農地の現実を直視せよ」という特集記事が載っていて、そこにくわしい話が載っていた。それはにわかには信じられない話だったし、これまでおそらくだれもはっきりと指摘したことがないのではないか。さすがアサカワ君、だてにハマスに縄跳びを教えていたわけではない。


放射性物質が法的には汚染物質ではない−−それは放射性物質というリスクをはらんだ原発を、日本の産業構造に位置づけるための戦略的なからくりだったのかもしれない。一方で、それは前のエントリーの田中三彦さんの話ともつながってくる内容のようにも思った。「農業経営者」は業界専門誌なので、一般の人はあまり手に取ることもないだろう。なので、彼の記事の内容をかいつまんで紹介しておきたい。


アサカワ君によると、「日本の法律では、放射性物質の環境放出は合法」だという。つまり「農地にいくら高濃度の放射能汚染物質が沈着しても、あなたは被害者ではない。放射性物質は汚染物質ですらない。法律上、まったくクリーン物質なのだ。どれだけクリーン物質をまき散らしても合法行為だから加害者はいない」という。


常識的に考えれば、放射性物質が汚染物質ではない、なんてことはありえないとだれしも思うだろう。事実、日本には環境汚染をとりしまる法律として「大気汚染防止法」「海洋汚染防止法」「土壌汚染防止法」「水質汚濁防止法」などがある。そこではたとえば、特定有害物質として鉛やヒ素、トリクロロエチレンといった物質が汚染物質として法的に規定されている。


しかし、環境汚染をもたらすおびただしい有害物質のリストの中に、放射性物質は含まれていない。工場がカドミウムや有機水銀を環境中に放出すれば、それは法律に抵触し、工場が法的な加害者となる。しかし、今回のように原発事故で放射性物質で農地が汚染されたとしても、それは違法ではないのだ。だからこそ、大量の汚染水を海洋に放出しても、東電はとがめを受けることがないのである。


だが、実際には農協が東電にたいして損害賠償請求を行っているではないか、といわれるかもしれない。しかし、それは汚染されたことへの損害ではなく、原子力特別措置法によって被った損失にたいする請求なのだという。あくまで、放射性物質は環境にクリーンという法的位置づけになっているからである。


だが、こんな論理で納得する人がいるだろうか。アサカワ君は「原発事故で日本の農地が放射能汚染されている。なぜ取り締まらないのか」と環境省にたずねたという。それに対する環境省の答えは「違法性はないものと認識しております。1000年に一度の想定外の震災ですから」というものだったという。これに対して彼は、「真っ赤な嘘だ。放射性物質放出を想定しているからこそも昭和30年代の法律制定時、適用除外にできたのが真相である」と憤る。


チェルノブイリでは事故直後から汚染の状況を正確に把握するための措置がとられ、2ヵ月後には除染作業もはじめられた。一方、福島はというと事故直後から安全だという宣伝ばかりが流され、除染どころか正確なデータすら公表されていない。それは日本政府にとって放射性物質は「汚染物質ではないから」だとアサカワ君は指摘する。


「マスコミでは頻繁に放射能汚染との言葉が踊るが、各省の発表文書を注意深く読んでも汚染の文字は一切ない。農水省による除染の取り組みは〈ふるさとへの帰還への取り組み〉と命名され、あくまで今回超法規的に定められた避難等の区域内での対応にとどまっている」と彼は書く。


生きる糧である農地を放射性物質まみれにされ、世間からは汚染地域というレッテルを貼られながら、汚染はない、合法行為とうそぶく環境省や政府、東電に対して、農家はどう思うだろうか。合法行為に対して、被害を訴えることの困難さが、今回の事故にはあるとアサカワ君は指摘する。


彼は書いている。「最後は国・東電の不法行為を立証するしかない。違法性はなくとも、『故意・過失によって他人の権利・利益などを侵害した者は、この侵害行為によって生じた損害を賠償する責任を負う』と民法709条に規定がある。やっかいなのは、この過失責任主義だ。原告が被告の故意・過失を立証しなければならない。被告たる国・東電は原告となる農家に対し、事故当日から一歩リードしている。さんざんくり返された〈想定外〉である。この言葉についてさんざん論評されたが、その本質をついたものはなかった。唯一の目的は行政の〈過失責任〉を逃れるためだ」


これは前のエントリーで紹介した田中三彦さんの指摘とも通じる。東電と政府が自分たちの過失をみとめたのは、津波という「想定外」の災害に対応できなかったという点においてである。原発は耐震性については責任を負っているが、津波の被害は想定していなかったという立場である。だからこそ、想定外の津波によって今回の事故が起きたという形で決着させることを意図して、行政の「過失責任」を逃れようとしたのである。


アサカワ君の記事は、さらに「放射能汚染で日本農業はどうなる」という点についても切り込んでいき、日本の暫定規制値がチェルノブイリの10倍以上といった、やはりにわかには信じがたい責任逃れの政策があることなどを指摘している。もっと読んでみたいという方は、ぜひ「農業経営者」7月号(1500円)を買ってください。本屋に売っているのかな。会社(農業技術評論社 03-3360-2697)に問い合わせてみてください。あと、アサカワ君の新刊「日本の農業が必ず復活する45の理由」(文藝春秋)も6月末に出るそうなので、そっちもよろしく。

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福島第1原発事故報告書のシナリオの矛盾ーー田中三彦さんに聞く

あいかわらず予断をゆるさないはずの福島第1原発だが、以前に比べてずいぶん報道が減ったし、一般的な関心も薄れてきたように見える。なんといっても放射性物質は目に見えないし、危機的状況が日常になってしまって、慣れてしまったように感じられるのが怖い。


そんな折、6月7日に政府の原子力災害対策本部が、福島第1原発の事故報告書をまとめて、国際原子力機関(IAEA)に提出した。東電は、5月の下旬、事故から2ヶ月以上たってから、1号機から3号機までメルトダウン、さらに燃料が格納容器にまで溶け落ちるメルトスルーが起きていた可能性を認めている。今回は、さらに津波対策をはじめ一連の対応の不備を認めた形のレポートになっている。


報道されたレポートの内容を見ると、政府も東電もやっと認めたか、遅すぎるとはいえ、みずからの過ちを素直に認めた点については一歩前進といえるかもしれない・・・と思わず納得させられそうになるのだが、とんでもない、これは問題大ありのレポートだ、と田中三彦さん(福島第1原発4号機の原子炉圧力容器の元設計者)はいう。


事故からまもない頃、彼から個人的に聞いた話をここにアップしたことがある。そのときはまだ政府の対応を批判することへの風当たりが強かったこともあったうえ、内容的に正確さが保証できないという彼の意見もあって、あとで記事を削除した。しかし、その後の展開は、ほぼそのとき削除した記事のとおりになってしまった。


いまは状況も変わってきて、東電や政府の対応に疑問を持つひとも少なくないので、今回のレポートのいかがわしさについて、6/9に三彦さんから聞いた話を、かいつまんでまとめておく(本人からオーケーもらっています)。ただし私は素人なので、理解の不十分なところやかんちがいもあるかもしれません。そこは私の責任です。文章もあまり整理していません。


 
政府+東電がメルトダウンと不備を認めたわけ


東電+政府は、IAEAに提出した報告書のなかで、津波への対策が不十分だったため、原子炉を冷却するための電源が確保できず、炉心溶融に至ったとしている。つまり、巨大津波のような想像を超えた状況はさすがに想定していませんでした、そのために今回のような事態になってしまいました、ごめんなさい、でも最善は尽くしました、という論法である。


しかし、三彦さんによると、このレポートをつくったのが政府と東電からなる統合対策本部であるという点からしておかしいという(レポートは、統合対策本部と原子力災害本部の名前で出されている)。

 
「社会的犯罪を起こした東電と、それを規制するはずの保安院がいっしょになって統合対策本部なんてものができていること自体がおかしい。いわば泥棒と警察がいっしょになって対策本部をつくって、許してくださいという話のレポートを出しているようなものです。しかも、それをIAEAにもっていっている。IAEAは基本的には原子力の平和利用を目的とした団体です。しかも、その事務局長は日本人ですからね。虎の威を借りようというわけです」


つまり、泥棒と警察でこしらえた事故のシナリオに国際的な原子力推進団体からおすみつきをもらおうという意図が、そこには存在しているということになる。だがレポートで提示された事故のシナリオのどこに問題があるのか。


「東電がメルトダウンを潔くみとめたことや、原発への対応の不備を素直にみとめたことにたいしては、世間は反感は持たないでしょう。しかし、事故の起きた経緯の説明のシナリオが、明らかにうそだらけです。レポートでの説明は、今回の事故は想定外の津波による衝撃によって起きたという線で進められています。地震に対する原発の耐震強度の問題にはふれられていません。津波によって、電源が喪失し、冷却剤喪失が起きたという線でまとめようとしている。この論理で行くと、原発そのものの耐震性を問われることはないわけです」

 
これは逆にいえば、想定外の津波が起きたから、こんなことになったけれど、原発の構造そのものには問題があったわけではない、地震は関係がないという線での弁解ということになる。それは今後の原発推進のひとつの布石にもなる。これに対して、田中三彦さんは、1号機で水素爆発にいたるきっかけとなったのは、地震の衝撃による配管の破断であるという見方だ。その根拠については以前のエントリーでもふれたし、「世界」5月号(岩波書店)にも、三彦さんによる原発中枢構造の耐震脆弱性についての分析が掲載されている。しかし、東電は、今回の事故を配管にはいっさいかかわりがない、という前提で説明しようとしている、と彼はいう。つまり、最初から結果ありきで、それに沿ったシナリオを提出しているとしか思えないというのだ。その根拠が「水位計」のデータだという。

 

東電の描いたシナリオの意図


(以下はすべて田中三彦さんの話)
 
東電はメルトダウンを積極的にみとめた代わりに、これまで出していた水位計のデータはまちがっていました、と説明しています。メルトダウンが早く起きてしまったから、それで水位計がこわれてしまった、だからそれはあてになりません、といっている。でも、これは明らかにおかしいんです。なぜなら、これまで公表されていた水位計のデータが正しいとしたら、配管破断があったと考えないと説明できないからです。でも、それだと原発の耐震脆弱性があばかれてしまう。それを隠すために、メルトダウンは早く起きました、水位計のデータはめちゃくちゃでした、ごめんなさい、という論法をつかったとしか考えられません。


東電がいっているように、配管にかかわりなくメルトダウンを起こそうとすると、どういうシナリオになるのか。まず、津波で冷却機能が働かなくなり、それから崩壊熱で原子炉の圧力が上がります。でも、不思議なのは、記録から見ると、1号機ではそんな圧力が上がっていません。崩壊熱がいちばん上がるのは冷却が止まった直後から1、2時間後にかけてです。公表されているそのときの記録によると、2号機と3号機では圧力が急激に高くなっています。そのため逃し安全弁が開いて、蒸気が格納容器のサプレッションチェンバーにいく。けれども、開きっぱなしだと圧力容器の水位が下がりすぎるので、少しすると弁が閉じます。また高くなると開いて、低くなると閉まる。記録にも、ぱたぱたと弁が開いたり閉じたりしたことを示すするどい三角波が残っています。


けれども1号機には、そうした記録は残っていません。つまり圧力が思うほど上がっていなかったと考えられます。ぼくが配管破断だというと、東電は、もしそうなら圧力は急に下がるはずだという。でも、実際には圧力は下がっても、一方で燃料棒の崩壊熱があるので、差し引きでいえば、そんなに突然がくんと圧力が下がることはありません。崩壊熱で圧力があがることだってあるくらいです。結局、2号機と3号機の弁がバタバタやっているのに対して1号機は約30分の間、逃し弁が開くような圧力にならない。1号機には非常用復水器という電気を使わないラインがあって、それを通じて蒸気が外へ回って水になり、それが再循環配管に入って炉を冷やすという仕組みがあります。東電はこれが働いて、圧力が下がったのだといっています。


記録によると、1号機では非常用復水器が自動的に立ち上がったものの、十数分後、なんかの判断で運転員がいちばん崩壊熱が高いときに、圧力が下がりすぎたといって復水器を止めているのです。非常用復水器は、タンクの中の水で蒸気を冷やして水にするシステムです。タンクの水は補給できないため、長時間運転していると水の温度が上がって性能が落ちてしまう。運転員は、これからもっと崩壊熱が上がるかもしれないと考えて運転をとめたのではないかと思います。記録では、つぎに午後6時十何分かに弁を開いて、また数分後に閉めている。それから午後9時頃にもういちどうごかして、4時間粘って夜中1時に閉めて、あとはいっさい動かさなかった。すると崩壊熱で圧力が上がって弁が開いて、ぱたぱたとなって、そうしているうちに水がなくなっている。


問題は、結局、圧力容器の水がどういう経路で格納容器に入って水素爆発にいたったか、ということです。東電の説明では、非常用復水器をずっと止めていたから崩壊熱で圧力が上がって、逃し安全弁経由で水蒸気が格納容器に吸い込まれていった、としている。それに対して、ぼくは配管が破断して、格納容器に直接蒸気として噴霧したと考えている。東電があとでまちがっていたといって否定した水位計のデータを生かすとすれば、配管にそれほど大きくない穴が開いていて、そこから漏れたと考えられる。でも、東電は穴は開いていないと仮定したうえで、それなら、どうやって水蒸気を逃がすかということから、安全弁経由というシミュレーションを立てている。


 
水位計のデータは狂っていたことにするためにメルトダウンを早める


でも、安全弁経由にするには、水位計のデータを否定しなくてはなりません。どうすればいいか。それならメルトダウンが思いのほか、早く起きたといえばいいわけです。そうすれば、メルトダウンが起きたときに水位計はダメになったと説明できます。水そのものが蒸発してなくなってしまっているから、水位計のデータも狂っている、という論法です。でも、どのようにして水位計がだめになったのかをまったく説明していない。納得できるような科学的説明がまったくないのです。


もうひとつの問題は、水位計がだめになったのだとすれば、ではメルトダウンが起きる前のデータはどうなのかということです。メルトダウンが起きる前の水位計データなら正しいはずだからです。でも、それを取り上げるとなると、説明がものすごく厄介になる。そこで、東電がなんといっているかというと、それ以前の水位計のデータは残っていないと言い出すんです。


しかし、これは明らかにおかしい。どこからメルトダウンが始まって、どこから水位計が壊れたか、というその境界線を本来なら示さなくてはならないのに、それをしていない。それをするとシナリオが崩れてしまうからです。正しかった水位計がどこからヘンになったかという話にはつきあいたくない。ならば、水位計の記録が取られる前にメルトダウンが起きたとすればいい。


水位計のデータが出てくるのは午後9時半からです。記録用紙としては7時半から公表されているのですが、そこに水位の記録はない。東電としては7時半より前にメルトダウンしたことにしたい。そうすれば、水位計のデータは狂っていました、狂う前はデータはありませんでした、ということにして複雑な説明を避けられます。でも、水位計のデータを正しく見て、それを圧力や熱や運転記録と辻褄の合うようにする、というシミュレーションを細かくしてみると、水位計のデータをダメにするために、メルトダウンのスピードを上げたという彼らの意図がありありと見えてきます。実際に水位計のデータがないのか、それともあるのだけど隠匿しているのかはわかりません。


ぼくはメルトダウンはもっとゆっくりと起きたと思っています。しかし、彼らが配管破断の可能性を否定するために描いたこうしたシナリオも、配管破断があったという前提から描くことは可能です。ぼくは配管に開いた穴は小さいものだったと思っていますが、もっと大きな穴が開いてしまったとすれば、あっというまにメルトダウンを起こすシミュレーションだって可能です。


ただし、配管が地震で破損していたとしても、それを物理的に確認することは困難です。たとえ、格納容器の中にロボットが入って撮影したとしても、配管には分厚い保温材がまかれていて、さらにアルミで覆われています。見た目は太く見えますが、保温材を剥がせば、実際にはそんな太くはありません。だから、配管破断を目で確認しようがない。でも、だからといって、それが起きていないとはいえない。先ほどもいったように、データや運転記録を細かく見て、なにが起きたのか徹底的に解析していく作業をしていかないと、東電のストーリーのうそが見えてきません。


東電と政府がこうしたシミュレーションを描くにあたっては、当然、中での話し合いがあったはずです。政府と東電という、警察と泥棒が組んでいることがおかしい。もっとも独立性をもつべきだし、東電と政府は話をすべきではないと思います。東電は運転員はのこして、あとは保障だけやって、口出しすべきではないと思います。


本当は、事故直後、原発に詳しい事故調査員が乗り込んでいって資料を応酬して、対策を練らせるべきでした。そういうことをできるひとはいっぱいいます。昔設計をしていたような、いわば「退役軍人」で、かつ冷静なひとなら反原発である必要もありません。そういうひとを中央指令室に入れれば必死になるはず。東電にはいっさいしゃべらせるべきではありません」


 

メルトダウン=鬼押し出し状態


あと、メルトダウンということについていうと、報道だと、ロウソクが倒れて溶けるようなそんなイメージで語られていますが、私はそんな静かなメルトダウンのイメージはありません。自分としては「鬼押し出し現象」と呼びたいくらいです。


燃料棒が圧力容器の中にどんなふうに入っているのか。テレビの図解はかなりいいかげんです。原子炉圧力容器は高さ20メートル、燃料棒の高さは4メートル。でも、テレビだと燃料棒が大きく描かれすぎています。この燃料棒が100本以上まとめられたものがチャンネルボックスというジルコニウムの箱で囲まれて燃料集合体をつくっている。この燃料集合体が1号機で400本。2号から5号になると燃料集合体の数が550-560本になる。それだけ膨大な数の燃料集合体が、シュラウドという鉄でできた円筒形の、高さ5mくらいの鉄がおおわれています。

 
原子炉圧力容器とシュラウドとの間にはダウンカマーというすきまがあります。冷却剤はそのすきまを下りていきます。さらにジェットポンプという構造物がそのすきまに20台くらい並んでいる。そこから上を見ると、水分を叩くための蒸気乾燥機が二種類あり、また炉心スプレーというリング状のシャワーみたいなのもある。そんなふうに圧力容器の中には、いろんな装置がいっぱいつまっています。


ところが、水位が下がって燃料棒が露出すると、だいたい千数百度度くらいで被覆管のジルコニウムが溶けて、つぎにペレットが溶け始める。ジルコニウムが溶けるときの輻射熱が2800度くらいで、その熱でペレットを囲んでいる数十トンのシュラウドが内側から溶鉱炉のように熱せられることで、ぐにゃぐにゃに溶けて液体のようになって、核燃料をモナカのように包んでしまう。


それから上の蒸気乾燥機やそれを載せている蓋や格子状の棚が溶けて落ちてくる。制御棒も溶けるし、制御棒のコントロールのステンレスの棒も溶け、ジェットポンプも溶けて、上からはがらがらと乾燥機も落ちてくる。そういう状態のものが全部落ちると100トン越える。そこに大量の水がかかると、溶岩状にがさがさの岩みたいになります。圧力容器の底のお椀状のところは、強度がものすごく落ちますから変形して、底が抜けます。底に窓が開いたみたいになって溶けたものがあちこちから漏れて顔を出していて、上から水がかかってくる。それで鬼押し出し状態というわけです。


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カッパの皿回し、1年ぶりに更新

放置状態になっていた別ブログ「かっぱの皿回し」をほぼ一年ぶりに更新しました。また、レディー・ガガの話。レディー・ガガばかり聞いているわけではないですが、今回の「ユダ」のPVに誘惑されて、キリスト教メタファーのいんちき解釈のようなものをやってみた。ご興味ある方はどうぞ。
 

Lady Gaga 「Judas」
 かっぱの皿回し

 

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