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迷惑電話は格闘技か (コミュニケーション力をめぐる その2)

前回、街中で声をかけられやすいという話を書いたが、家にいても振り込め詐欺やら家庭教師の斡旋などの電話などがかかってくると、つい相手をしてしまい、ややこしくなることもあった。


その手の電話は、この数年ほとんどなかったが、つい最近、久々に、怪しげな勧誘電話がかかってきた。すぐ切ってもよかったのだが、久しぶりだったので、どんな怪しい話をするのかなという好奇心も手伝って相手の侵入を許してしまった。


 
「もしもし、私、ゴニョゴニョゴニョゴニョ(よく聞き取れない)なんですが、ご主人様でいらっしゃいますか」


 
「はい・・・」

 
 

「ご主人様、いまお住まいになっている賃貸住宅や、あるいは持ち家の今後ということをどのようにお考えでしょうか」

 

 
「はっ?」


 
「私ども、このあたりをまわらせていただいているのですが、前にお目にかかっていませんでしたか」


 
「会ってないと思いますが・・・」


 
「あ、そうですか。というと昼間お仕事で出かけておられるのですか。何時頃ならお帰りですか」


 
「いや、それより、あなただれですか?」


 
「最近は宅地法なども変わりまして、住宅やマンションについても法律的にいろいろ変わってきて、難しくなっていますよね」

 

 
「あのー、何の御用ですか? あなた、いったいだれなんですか?」

 
 

「ですから、そのことをこれからご説明しようとしているのです。いまマンションや宅地についての法律が変わって、なにかと賃貸や、持ち家の方もたいへんだと思います・・・」


 
「だから、あなた、だれですか、と聞いているんです。どういう業種で、なにが目的なのか。どうして質問に答えてくれないのですか。マンションのセールスなどでしたらけっこうですから・・・」


 
「セールスですって? 私がいつセールスなんかしましたか。もし、マンションをお探しというのであれば、そりゃ、私の方としてもご紹介さし上げることは、できないことはありません。いい物件を知らないわけではありません。それどころか、たいへんいい特別な物件をご紹介さし上げることだって、できるかもしれません。どんなマンションをお探しですか?」

 
 

「いや、探していません。それより、だいたい人にいきなり電話かけてきて、名乗りもしないし、なんの用件なのかもいわない、というのは何なんですか」


 
「私ははじめにきちんと、会社名と名前を申し上げました。ご主人様のほうがちゃんと聞いていなかったんじゃありませんか」


 
「そうだったら、それは聞きそびれましたかもしれませんが、でも、どういう用件か、さっぱりわからないのですが・・・」

 
 

「あのー、ですから一応、今後の住まいの方向性から考えていきましょうということなんです。いまいろいろ住宅事情が変わってきているじゃありませんか。住宅に関する法律が変わって、家を借りるにしても、持つにしても、それがなかなかむずかしくなって、それをきちんと判断していくために知っておかなくてはならないことかあると思うんですね・・・」

 
 

なにを聞いても、こんな調子である。マンションのセールスの類のようなのだが、話のとらえどころがなく、どういう方向へと話を持っていきたいのかも曖昧である。おそらく向こうは、こちらの名前や住所は把握していなさそうだった。どうやら焦点をはぐらかして、なるべく話を引き延ばしつつ、こちらの個人情報をつかみ、あわよくば直接会って説得しようと目論んでいるらしかった。脅しをかけてくるわけではないが、「直接、お会いしてお伝えしないと長くなってしまうので」などといって、話を引き延ばす。その手にはのるものか。


 
すでに30分近くたっていた。面倒くさくなってきたので、そろそろ切りたい。こちらがうんざりして、いいかげんにしてくださいなどというと、すかさず、そこに食いついてくる。どうして、そのような言い方をされるのですか、と来る。なるほど、こちらが感情を昂ぶらせたときにできる隙を攻めてくるという手法らしい。その手には乗るか、とあくまでこちらも冷静をよそおって、敬語で対応する。


 
「興味ないです」といっても、「どうして興味ないのですか」と返し、さらに「どういう事情がおありか教えていただけませんか」とたたみかけてくる。そんなことを、話す必要はありませんというと、「お互いに伝えたいことを伝えておかないと、いけないと思いますので」という。

 
 

そんなやりとりをつづけているうちに、はたと思いついた。これってまるで格闘技ではないか。互いに相手の出方をうかがいつつ、隙があると、そこにさっと入り込んでくる。それを受けて返すと、次に別の手をくり出してくる。しかし、勝負が長引くと不利なのはこちらかもしれない。

 
 

向こうは持久戦に持ち込み、こちらが根負けするのを待っているのか。あるいは、こちらがうんざりして声を荒げたりしたとき、すかさず揚げ足をとるつもりか。いずれにしても思ったより手ごわい・・・とかいって、早い話、単純に切ってしまえばいいのだが、それもなんだか、こちらの負けを認めるようでしゃくである。とはいえ、いつまでもこんなことをつづけていたくないので、適当なところで相手の言葉に耳を貸さず、丁重に断って電話を切った。ガチャ!


 
(ほっ。。。)


 
ところが、そのあと間髪を入れずコール音が鳴った。いつまでも鳴り止まない。しかたなく受話器を取る。


 
「お電話が切れてしまったようですが・・・」

 

 
「切ったんです」

 

 
「どうして切ったのですか。失礼じゃないですか」

 

 
「失礼はどっちですか」


 
「ご主人、なにか誤解されています。私は・・・」

 
 

ガチャ。。


 
プルルルルル・・・

 
 

面倒なのでファクスに切り替えたが、それでもリダイヤルがくりかえされる。これが戦略なのか。女性や高齢者の一人暮らしだったら、これはけっこう怖いかもしれない。ファクスでもコール音が鳴ってうるさいので、電話線を引っこ抜いた。

 
 

そのあと静かになった電話機を見ながら、なんとなくしゃくだった。相手はプロだとはいえ、電話をこちらから切ってしまうという終わり方は、なにか負けたような気がして釈然としない。どうでもいいことなのだが、なにかほかの対処の仕方がなかったかと気になる。


 
電話線はこの日は一日、抜いておくつもりだったが、その後、またかかってくる可能性がある。そこでネットで迷惑電話や、勧誘電話への対策を見ると、どのページにも「とにかく相手にしないで、すぐに切ること」と書いてある。

 
 

それはわかる。わかるのだけど、そうやって、よけいなもの、御しがたいものを切り捨てて、ゲイティッド・コミュニティみたいに、自分の周りに囲いを張り巡らせて安全な閉じた空間をつくりあげていこうとする最近の社会の傾向にもなにか抵抗がある。

 

たしかにそれは快適だろう。でも、そうやってゲイティッドされた領域を一方でつくりながら、前にも書いたけど「これからはコミュニケーション力がだいじです」とか「共感力を身につけましょう」みたいなことを就活学生やビジネスマンに要求しているのはインチキ臭くないか。コミュニケーション力というのは、こういう不意打ちのような異形の他者の進入に対してこそ発揮されるべきなのではないか。


 
だいたい、あらかじめ約束された会合や名刺交換などでコミュニケーション力なんて必要なのか。それは規則の定められている格闘技の試合のようなものだ。それはそれでいいのだけれど、ほんとうに必要なのは不意打ちや闇討ちに対処できる力ではないのか。でも、どうやって渡り合えばいいのか。


 
 
そんなことを思いつつ、ネットサーフィンしていたとき衝撃的(笑劇的?)なものを見つけた。それはまさにいま感じているモヤモヤにひとつの、みごとな回答を与えてくれるものだった。。。ここからがじつは本論なのだけど、長くなってしまったので、続きにします。明日か、明後日くらい。

 
 

明日といえば、前にも書きましたが、西荻でエジプトについて講演会をします。エジプトが政治的にたいへんなことになっていますが、エジプトを通して物の見方を考える、というようなテーマで話ができればと思っています。よろしければ、どうぞ。


 
11月26日(土) 11:30~14:00
 西荻カルチャーカフェ 「発想を転換するためのエジプト講座」
(by 田中真知)


地図はこちら


※チャージ1,000円+ワンドリンクオーダー


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コメント

え〜〜最後のオチで続きですか?? 絶対、明日か明後日は一週間になってしまいます。。。講演会は如何でしたか?

投稿: 大谷祐子 | 2011年11月26日 (土) 17時44分

>大谷祐子さま

「明日か明後日」はもう少し早くくると思いますよ。
講演会、とりとめのない話になりました。おもしろく聞いていただけたなら、よいのですが。。。

投稿: 田中真知 | 2011年11月26日 (土) 22時02分

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