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2012年1月

ポンガル@国分寺カフェスロー報告

遅ればせながら、前回紹介した1月14日のポンガル@国分寺カフェスローは、とても楽しかった。ポンガルとは「南インド、とくにタミル・ナードゥ州とアーンドラ・プラーデシュ州で盛大に祝われる収穫祭」だそうで、それを模したイベントだったのだが、なんといっても、マサラワーラーさんたちによってつくられた南インド料理(ミールスというのかな)がよかった。

 
南インドには行ったことがないので、南インド料理といえば練馬のケララバワンでしか食べたことがないのだが、蔵前仁一さんが「日本でこんな料理が食べられるとは思わなかった。南インドのと同じだよ」といっていたくらいなので、そうなのだろう。日本でインド料理というと、たいていタンドーリチキンとか、マトンやチキンのカレーとかが思い浮かぶが、南インド料理は基本的には菜食。日本にはあまり紹介されていないが、じつにヘルシーで、食べやすく、しかもおいしい。


バナナの葉っぱの上に、ごはんにくわえて、つぎつぎといろんなカレーや炒め物などのおかずが並べられ、それを手でぐちゃぐちゃに混ぜながら食べる。ピーマンもジャガイモもまぜこぜにして、揚げせんべいを指先でぼろぼろとくだいたものをふりかけ口の中にほうりこむ。見た目はなんだが、いろんな味が口の中で混ざり合い、マンダラのような味覚の世界が広がるのが新鮮だった。食べるのに夢中で写真も撮らなかった。

 
料理がおいしいだけでなく、マサラワーラーさんたちの雰囲気がいい。あのあっけらかんとした笑顔は、こういう時代には心にしみる。かれらのイベントに人気がある理由もわかる。いい料理は人の気持ちを温かくしてくれる。中身はまるでちがうが「バベットの晩餐会」を思い出した。


マサラワーラーは武田尋善さんと鹿島信治さんという二人組のインド料理ユニットなのだが、武田さんはアーティストで、絵から壁画から造形から、ちょっとニキ・ド・サンファルなんかを思わせる、総天然色縄文スタイルとでもいうのかな、たいへんパワフルな表現をされる方で、鹿島さんはシタールを演奏し、打楽器のユニットもやっているという。料理とアートを組み合わせたパフォーマンスなどもされているらしい。


出し物は堀友紀子さんのバラタナティヤムというタミル・ナードゥのインド古典舞踊と、久野隆昭さんのガタム(南インドの壺の楽器)と竹原幸一さんのモールシン(南インドの口琴)の演奏、それにわたしのハピドラム。堀さんの舞踊はいちばん後ろから見ていたので、足下がよく見えなかったのだが、肩から手、指先へとつらなる動きがきれいだった。太極拳などの武術でもそうなのだが、いい動きには「勁」といわれる全身を連携させる力の動きがある。これは舞踊にも通じるのだな。


久野さんと竹原さんの演奏は圧倒的だった。西洋音楽とちがって、南インド音楽には楽譜がない。そのためこれらの楽器を習うときには、基本的には先生の真似をすることになるのだが、そのとき楽器の音を口で真似する練習をするのだという。


たとえば三味線だと、弦をはじいた音を「チン、トン、シャン」といった音で表現するように、インドの打楽器でも壺を叩いたときの音をその叩き方によって「トン」とか「カ」とか「ドン」とか「ティク」とか「ダー」といった言葉に置きかえ、それをつなげてリズムがつくられる。たとえば、師匠がティータカドンタカティータカトンタカ(←適当)と口ずさむと、弟子がそれをガタムやモールシンで追うように演奏するのだそうだ。言葉とリズムは入れ替え可能なのである。


ただ、このティータカタカタカ…をいうのがおそろしく早い。知らなければ早口言葉を唱えているようにしか聞こえない。しかも、そのワンフレーズが文字に直したら、軽く文庫本一ページ分くらいはありそうな長さだ。つまり、おそろしく長い早口言葉を唱え、そのあとそれを楽器でそっくりそのまま再現する、という感じなのである。


そんなにたくさん記憶できるのは、そのティータカタカタカが言葉と同様の秩序をもっているからなのだろうか。端で聞いていると神業のように見えるのだが、見たことのない人にはわからないと思うので、あとの動画を見てください。ちなみに、口で言うことができれば、そのリズムは叩くことができるのだそうで、逆にいうと口で言えるようにならないと、そのリズムは叩けないということなのだろう。


当日の様子はマサラワーラーの武田さんがYouTubeにアップされている。久野さん・竹原さんのパフォーマンスも一部聞ける。ハピドラムはカメラの位置が遠かったせいか、あまりうまく録音されていないのが残念。別に録った動画もあるが、低めの音なのでどうしても音がこもりがちになる。録音の仕方が課題だな。


久野さんや竹原さんの演奏があまりにすごいので、前座としては恐縮してしまったが、彼らにそういうと、そんなことないですよ、よかったですよぉ、とちゃんとフォローしてくれる若者の思いやりに感動した。お二人ともさわやかだし、イケメンだし、もうお手上げ?です。




ミニCDもつくった。買ってくださった方、ありがとうございます。

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※ 三谷眞紀さんのブログにもポンガルの記事が。写真もたくさんあります。

http://apakaba.exblog.jp/17335201/


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あけましてハピドラム

年が明けました。遅ればせながら、今年はよい年になるといいですね。
 

正月は鎌倉の友人を訪ねる。彼は詩人の尾崎喜八の孫で、明月院にあるお祖父様の墓参りをしたあと、孫文の料理人から彼のお母様に伝えられたという白菜の冷菜をごちそうになる。

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白菜とごま油と鷹の爪と、あとなんだったっけな、白菜だけなのに、食卓に牡丹の花が咲いたみたいに見栄えがするうえ、おいしい。孫文はこういう料理を食べていたのかぁと感慨深く味わう。この料理は作曲家の武満徹にも喜ばれたらしく、武満家では「貧しい菜」と呼ばれて重宝されたという。


 
あと、こういうものもごちそうになった。
 

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詩人の草野心平は「火の車」というバーをやっていたそうだが、そこで出していたという卵の黄身の味噌一夜漬け。バーを訪ねた尾崎喜八が、草野心平に「この料理に名前をつけてくれ」といわれて、つけた名前が「琥珀玉」。「火の車」といい、「貧しい菜」といい、さすがネーミングが文学である。チャーリーさま、ありがとうございました。



ところで、ここで1/14に行われるあるイベントの告知をしようと思っていたのだけれど、例によってだらだらしているうちに予約がいっぱいになってしまって、告知しても、これからだと入ることのできなくなってしまったイベントの紹介をします。年の初めから、まぬけで申し訳ありません。


イベントというのは、国分寺のカフェスローというところで行われる「南インドのお祭り ポンガル」というもの。マサラワーラーという、いま人気沸騰中のインド料理ユニットが南インドの料理をふるまい、それを食べながら南インドの踊りや音楽を楽しむという企画。これにハピドラム奏者として出ることになった。


前にも書いたが、ハピドラムは2008年にアメリカで考案された創作楽器。鉄製で、お椀を二つ合わせたような形をしていて、表面に入った切れ込みを叩くと音が出る。豊かな倍音を含んだ、とても澄んだ音が出る(最後の方に動画を挙げた)。

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ただし、ハピドラムはインドとは関係ない。見た目や雰囲気が民族楽器風なので、なんとなく混ぜていただいた。ほかに出演するのはガタム(南インドの素焼きの壺をものずこいリズムで叩く)奏者の久野隆昭さんや、モールシン(南インドの口琴)奏者の竹原幸一さんといった南インド音楽の第一人者の方々なので、まったくもって場違いなのだが、そういう方たちをさしおいてトップバッターとして演奏する(前座、あるいは余興ともいう)。


せっかく出演するのだからと、ハピドラムの開発者に連絡をとって、最近できたという新製品を取り寄せることにした。ハピベルという名前で、通常のハピドラムとして使えるほか、バチで胴を叩くとドラのような深い音がする。縁をこするとチベットのシンギングボールのような澄んだ共鳴音がでる。1台3役のスグレモノというふれこみだった。


 
で、届いたのがこれである。

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スタンダードなハピドラムは二つのお椀を上下で合わせたような形をしているのだが、これはお椀が一個だけで底がない。このため音が反響しないので、音量がとても小さい。また、縁をこするとシンギングボールのように共鳴するとのことだったが、実際にこすってみると縁がギザギザで、がびがびとした不器用な音しか出ない。

 
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この本体を支える台も付属していた。

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でも、これに本体をのせて、ちょっと強く叩くと台から転げ落ちてしまう。胴を叩いたときの音色も西洋人にとってはエキゾチックな響きかもしれないが、日本人にとっては合掌して、お経を唱えたくなる音であり、ちょっとイメージとちがった。そういう、いろんな意味で完成度がいまいちの新製品であった。


 
 

家人からは、「ねえ、これいくらで買ったの?」とつめよられるが、そういう無粋な質問はシカトして、自分で台をつくることにする。ホームセンターでテーブルの脚やドアの当たり止めのゴムなどを買い、なんとか組み合わせて、こんなものをつくった。ちょっと形が下品な気もしなくはないが、これで転げ落ちることはなくなった。


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これにさっきのハピベルをのせると、こうなる。毒キノコみたいでもある。

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ハピドラムの音というのは、そのままだととても澄んでいる。それは、ちょうどカリンバやオルゴールのような蒸溜されたピュアな音である。しかし、カリンバの原型であるアフリカのムビラ(親指ピアノ)などでは、本体に王冠をくっつけたり、鍵盤?にブリキ片を巻いたり、音の出る孔に蜘蛛の卵の膜を貼ったりして、ジージーとか、ブーンというノイズが出るように工夫されている。
 

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このようなノイズは「サワリ」といわれ、日本の琵琶や三味線など東洋の楽器ではふつうに取り入れられている。西洋のクラシック音楽では、こうしたノイズをなるべく取り除いて、音を純化させる方向で楽器が進化してきた。それはキリスト教の影響とは無縁ではないだろう。


 

教会という空間は、世俗的なものを濾しとった聖なる場として存在している。そのため、そこに流れる音楽もまた世俗性(ノイズ)を除去したものでなくてはならなかった。西洋の音楽研究者がアフリカのムビラを、西洋人向けに商品化したとき、「サワリ」を取り除いてピュアな響きのカリンバとして売り出したのも、彼らにしてみれば自然なことだったのだ。


 

ハピドラムの音もそのままだと、ノイズのない癒し系の音なのだが、そのうちに物足りなくなってきて、「サワリ」を加えられないかと考えた。そこで、あれこれ工夫してみた。

 


けっこう効果的だったのは、これだ。家人の疲れ目対策のために、わかさ生活のブルーベリーアイというサプリメントを定期注文したとき、オマケについてきたマグネット式の「限定ブルブルくんシール」である。
 
 
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これをハピドラムに貼ると、なかなか味わいのある「サワリ」が発生することを発見した。ほかのシールも試して見たのだが、なんといってもブルブルくんシールが一番である。


 

しかし、ブルブルくんシールは5枚しかない。もっとほしいのだが、すでに定期注文しているのでこれ以上注文するわけにもいかない。そこで、ふとヤフーオークションをのぞいてみたら、あった! 何枚かまとめて購入。こういうものを出品する人がいることにも驚いたが、こういうことに使われるとは出品者も想像していないだろうな。

 

 
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最近、新たに考案した「さわり」を出す工夫は、これ。ホームセンターで見つけた「たいこ鋲」というのをスリットの間に留めてやる。こうするとブルブルくんシールよりも繊細なサワリが生ずる。画鋲とかいろいろ試してみたのだが、これがいちばんいい感じだった。
 

 
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そんな感じでイベントの紹介をして、よろしければ来てくださいとまとめようと思っていたのだけれど、そういうわけですみません。この前録ったものをあげておきます。カメラの位置が下すぎてしまいましたが。
 
 



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