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西江雅之さんのお別れの会

6月に亡くなられた文化人類学者・言語学者の西江雅之さんのお別れの会へ。夏の終わりを感じさせる小雨降る肌寒い日にもかかわらず、会場の旧前田邸にはしんみりというより、浮き立つような祝祭めいた明るさがあふれていたのは、やはり西江さんだからだろう。会場でナイロビの獣医の神戸俊平先生にばったり会う。『たまたまザイール、またコンゴ』を編集をしてくれた偕成社の矢作春奈さんにもばったり。矢作さんも西江さんの教え子だったのだ。

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社交辞令めいた弔辞はいっさいなくて、詩人の鈴木志郎康さんをはじめとして、親しかった人たちがスピーチで披露するエピソードは奇才・天才・変人として知られた西江さんらしい型破りで、突拍子もない話ばかりである。ジャズピアニストの山下洋輔さんが話したエピソードは、山下さんの本の中にもたしか書かれていたが、やはりおもろしい。こんな話ーー。


トーキングドラムのドラム言語を理解できるようになった西江さんは、アフリカのある儀礼の場で何人かの男がトーキングドラムを合奏しているのを聞く。ところが前の二人の叩いているドラムの意味はわかったのだが、後ろの二人のドラムの意味がどうしてもわからない。あとで聞いたら、前の二人がドラムで物語を話していて、後ろの二人はその話にドラムで伴奏をつけていたとの由。

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西江さんはマシンガントークの人で、トークライブでは午後7時から午前2時までぶっつづけということもあったという。西江さんは文化とは檻のようなものだといっていた。だれもが檻の中から世界を見て、これが正しい、あれはまちがっているという。でも、だいじなことは檻の外に出ることだ。正しい答えがひとつだけということはありえない。彼のトークライブを30年つづけてきたというギャラリー経営の女性は、最後に話をしたとき、西江さんは「自分が嫌いなのは正義と開発」といったそうだ。


西江さんと直接会うことのなかった自分には、生前行き来のあった人たちが語る、あまりにもユニークな交流談の数々に、たまらないほどの羨望をおぼえた。西江さんは変人・奇人といわれてきた。しかし、当然ながらそれは変なことをしようとしてしているのではなく、本人はそうすることが自分に嘘をつかずに生きることだったのだろう。それが人の目にどう映るか、あれほど繊細な文章を書く西江さんが知らなかったはずはないし、そのことで傷つくこともあったかもしれない。

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でも、たとえ世間的には「変」であれ、嘘をつかずに自分のことばで語り、自分のやりかたで行動しつづければ、小さなトラブルは多くなるかもしれないが、生きるよろこびはそれよりずっと大きくなる。それが若いころ、西江さんの本を読んで確信したことだ。西江さんの謦咳にふれることはもうできないけれど、山下洋輔さんはこんなことをいっていた。「ジャズミュージシャンにとってパーカーやモンクは生きつづけているんです。死ぬことはないんです。パーカーやモンクとはいつでも対話できるし、いつだって学ぶことができる。ただ会うには、ちょっと遠いところにいる。西江さんもそうです」

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コメント

田中さま
 この死亡告知と、故人への追悼記事を読んで初めて、西江雅之の梅雨入り頃の逝去を知りました。勿論、私は故人とは何ら面識はありません。

 そこで、かなり昔に読んだ西江の著書『ヒトかサルかと問われても』(1999年5月第2刷、読売新聞社)を本棚より取り出して再読。これまでに2回ほど読了してはいるものの、その詳細な内容は殆ど忘れていたのです。

 拾数年振りに再読してみるに、上記の図書の内容を集約すれば、それは、西江は自身の知的好奇心を尊び、その関心の赴く処に従い人生を歩む生き方を信条として居た人である----と再確認出来たのです。
 貴方の日記の記述では、

「嘘を吐かずに自分の言葉で語り、自分のやり方で行動し続ければ、小さなトラブルは多くなるかも知れないが、生きる喜びはそれよりズッと大きくなる。」

 と云う表現に尽きる気がします。
 故人の冥福を祈ります。

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