« ランド・ポール『国家を喰らう官僚たち』 | トップページ | 国際化とはよそ行きになること? ーー東京メトロの江藤淳 »

松田松雄展 (岩手県立美術館 10/3〜11/29)

3年ほど前に父の遺品の中から出てきた一枚の絵のことをブログに書いたことがある(ここと、ここ)。暗い絵ではあったが、どこか心惹かれるものがあり、そこに記された署名から、それが松田松雄(1937-2001)という陸前高田出身の画家の作品だと知った。画家はすでに亡くなっていたが、ちょうどいわき市で小さな展覧会が開かれると聞いて足を運んだ。

20151014_152230_2


黒いマントをすっぽりかぶり、うなだれたり、横たわったり、身を寄せ合ったりする人たちの姿を描いた一連の作品群はとくに衝撃的だった。モノトーンの画面にただよう重い沈黙。作品が書かれたのはもう40年ほど前の日本経済が元気だった時代にもかかわらず、それらは、まるで今日の日本や世界の底にひろがる心象風景のようにすら見えた。けれども、そこからは、ありのままの人間存在のはかなさや脆さ、そして強さが伝わってくるようで、じっと見ていると、澄んだ、しずかな気持ちになった。


その松田松雄の初の大きな回顧展が、いま岩手県立美術館で開催されている(10.3-11.29)。日本にはすぐれた画家はたくさんいるけれど、人間の実存を、よけいなものをいっさい排除して、これほどシンプルにイメージ化した画家を知らない。前にいわきで作品展を見たのは東日本大震災の翌年だった。いま見るとなると、どうしてもそこにシリア難民のイメージが重なってくるかもしれない。もろちん画家は津波やイスラム世界のことを描こうとしたわけはなく、ただ、自分は何者かという問いに向き合う中で、こうした作品を描いたのだろう。

Img_8970_3


チラシはこちらでも見られます。

|
|

« ランド・ポール『国家を喰らう官僚たち』 | トップページ | 国際化とはよそ行きになること? ーー東京メトロの江藤淳 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ランド・ポール『国家を喰らう官僚たち』 | トップページ | 国際化とはよそ行きになること? ーー東京メトロの江藤淳 »