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写真展「ザ・サプール」を見に行って思ったこと

上野でボッティチェリ展を見たあと、渋谷西武ではじまった茶野邦雄さんの写真展「ザ・サプール」へ。サプールとはコンゴのおしゃれな伊達男たち。昨年NHKの地球イチバン「世界一服にお金をかける男たち」で特集が組まれて一躍知られるようになった。


会場に入ったら、なんと今回の写真展でもモデルになっているブラザビルのサプールのセブランさんとバッタリ! 写真展にあわせて来日したらしい。いやー、かっこいい! ダンディで粋な着こなし。存在からリズムが沸き立ってくるようなエレガントな所作!思わずあひるさんとかっぱくんといっしょに記念写真を撮らせてもらった。

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写真展なのに撮影可。写真もとてもよかった。貧困や政情不安といった過酷な状況の中にありながら、優雅にファッショナブルによそおうことに人生をかける。武器をとって戦うのではなく、着こなしで勝負し、自分らしさを表現する。それがサップという生き方だという。


色鮮やかなファッションと背景とのギャップもいい。赤道直下のンバンダカから少し下ったザイール河(当時)沿いの村で、草原の道を歩いていたら、突然前方から白いスーツをまとった若者が歩いてきて白日夢を見ているような気がしたのを思い出す。いま思えば、あれもサップだったのだなあ。

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写真・茶野邦雄さん


写真展はとても盛況だった。でも、見に来ている人たちの中で実際にコンゴに行ったひとや、行く人はほとんどいないのではないか。そう思うと、すこし気になったのは、アフリカ人がみなサプールのような人たちだと思われてしまうことだった。


「貧しいけれども、明るく、人生をたのしんで生きている」。そのようなアフリカ人に対するステレオタイプな見方は昔から存在している。じつは、サプールが人気を集めたのは、そのような古典的なステレオタイプを、彼らにあてはめやすかったから、という理由もあったからではないか。

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写真・茶野邦雄さん


お金がなくても、ファッションに人生をかけて、その日をその日を思いきり楽しむ。それは一見彼らに対して好意的な見方のように思える。しかし、その視点からしか彼らを見なければ、彼らを取り巻いている貧困や困難がどのようなものなのか、ということには目が行かなくなってしまう。それは行きすぎれば、彼らは貧困でもだいじょうぶなのだ、だから貧困を解決する必要はないのだという乱暴な偏見や差別にもつながりかねない。


「コンゴ共和国の平均月収は2万5000円、約3割の人が一日130円以下で暮らしている」と会場のボードに書いてあった。だが、そもそも都市生活者と、それより数の多い農村部の人たちの収入とをいっしょにして出された平均を、個々の人びとの生活水準を測る尺度に使うことには無理がある。それぞれの人たちがどのようにして服を買うお金をやりくりしているのかはわからないが、「平均月収は2万5000円」といったリアリティのない平均値をあてはめてしまうと、彼らが個々それぞれに抱えている困難がいっしょくたにされてしまう。


写真が撮影されたブラザビルには行ったことはないが、サプールは数の上ではけっして多くはないだろう。都市生活者のほとんどは彼らのように生きているわけではない。少なくとも対岸のキンシャサでは犯罪や喧嘩はしょっちゅうだし、役人は粋やダンディとはほど遠いし、賄賂や腐敗はあたりまえだ。だからこそ志をもってサプールのような生き方をするひとたちが眩しく見える。


サプール人気がアフリカ人に対するステレオタイプの強化ではなく、かれらをとりまいている過酷な現実や、そのぬきさしならない状況の中にありながら、粋に、カッコよく、優雅に生きようとすることのすばらしさを、より深く理解するためのきっかけになるといいなと思う。


THE SAPEUR コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン

■3月29日(火)〜4月10日(日)※最終日は午後5時閉場※入場は閉場の30分前まで
■A館7階=特設会場
■入場料:一般500円、高校生以下無料

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