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2016年10月

浅川芳裕さんが 『ドナルド・トランプ 黒の説得術』という本を出した

米国大統領選決着が間近の中、ジャーナリストの浅川芳裕さんが『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京堂出版)という本を出した。浅川さんは、農業分野での仕事がメインだが、もとはカイロ大学でアラビア語やヘブライ語を学びつつ、イスラム主義者の取材やらなんやらでエジプトで計6回留置場に入った経験をもつ恐れを知らない男である。


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その彼がどうしてトランプの本を? しかも、トランプへの逆風が吹いているこの時期に? あとがきにも書いているが、浅川さんはもともと共和党候補の一人だったランド・ポール上院議員に親近感を抱き、ランド・ポールの著書『国家を喰らう官僚たち』(新潮社)の翻訳を手がけたほどだった。


ランド・ポールは共和党議員の中でもきわめて理性的・現実的な人物だ。彼は「アメリカをだめにしているのはワシントンに巣くう特権階級やロビイストといった既得権益者である」という立場から現実的な議論を展開していた。ところが、そのランド・ポールが共和党の予備選で、泡沫候補と見なされていたトランプとテレビ討論で相まみえるや瞬殺されてしまった。。。


それがきっかけで、トランプとは何なのだと関心を持った浅川さんは、予備選終盤の時期に米国を訪れ、トランプの政治集会やその参加者、ワシントンのシンクタンク研究員らに広く取材した。日本のトランプ報道は基本的にCNNをはじめ米国の反トランプ側メディアの見かたを踏襲しているが、浅川氏は逆にトランプ陣営の側に身を置いて、投票所などをこまめに訪れ、そこから見えてくるものをさぐった。また、過去のトランプのインタビュ−やスピーチ動画を子細に分析し、なぜトランプがこれほどの支持をとりつけることができたのかを明らかにしようとした。


興味深いことに、トランプの基本認識はランド・ポールや、そしてクリントンに敗れた民主党候補のバーニー・サンダースらに近い。「移民出ていけ」という話ではなく、ブッシュやクリントンといった特権的エスタブリッシュメントが力を持ちすぎたことが、アメリカをだめにしている、という見方だ。しかし、サンダースもランド・ポールも、トランプのように支持をかためられなかった。それは彼らに「説得術」というノーハウが欠けていたからだという観点からまとめたのが、この本だ。


では、どのような説得術なのか。たとえば意地悪なインタビュアーに「あなたの女性の支持率は低いですね。どうしますか?」と問われたら、ふつうの候補者なら「いや、そんなことはありません」といって、それに反するデータを提示したりするだろう。だが、トランプはこう返す。


「女性は私のことが好きです。とても多くの女性が私のことを支持しています。彼らはこういいます。私たちがドナルド・トランプを好きなのは、強さを感じるからです。この国を守ってくれるからです。女性を守るだけでなく、みんなを守るので、みんなトランプが好きです」(2016.3.31 Fox Newsによるインタビュー)


答えになっていない。。。女性の支持が低いというツッコミなのに、「女性はトランプが好きな話」に変わり、最後は「みんなトランプが好き」という結論にすりかわってしまう。


これが説得術と呼べるのか? 詭弁とも呼べないではないか。事実そのとおりなのだが、こうしたやり方でトランプが支持を伸ばしてきたのも紛れもない事実だ。それがどうして通用するのか。そのことを社会心理学やアリストテレスやキケロまで引き合いに出して分析したのが、この本である。


つまり、トランプの一見支離滅裂なスピーチが、じつはダブルバインドやフレーミング、認知バイアスやバンドワゴン効果といった社会心理学の諸法則や、古代ギリシア・ローマの弁論術の原則にかなっており、トランプ自身もそうした効果を見越して、ライバル候補へのあだ名のつけかた一つをとっても、緻密な計算にもとづいて、言葉を組み立てていることを、スピーチの分析から明らかにしていく。


たとえば、トランプはわざと曖昧な文言を用い、細部を語らない。それは彼が無知だからではなく(無知もあるのかもしれないが。。)、「聞き手一人ひとりが自分の信念に応じてトランプの発言を都合よく解釈し、つくりかえていく」効果を見越しているからだという。


物語のピースをあたえることによって、聞き手がそれを勝手に解釈して、自分の物語を作っていく。単一のストーリーを強圧的に与えるのではなく、聞き手の解釈を優先し、それに応じて、次のピースをばらまいていくのがトランプのやり方だ。その意味でトランプには強固な政治信条があるわけではなく、人びとの無意識を巧みに浮き彫りにして、それを自分への支持にむすびつけていく手腕に長けているといえる。


興味深かったのは、トランプが唯一師匠と呼んでいるビンセント・ピールという人物にふれている箇所だ。ピールは第二次大戦後に活躍した国民的に人気のあった米国人牧師で、今日自己啓発やビジネス成功哲学などでよく使われる「ポジティブ・シンキング」という言葉の生みの親でもある。また、キリスト教をエンターテインメント的なショー(スピーチ)によって成功哲学とセットにして伝える、というアメリカ的なキリスト教普及のあり方を確立した人物でもある。


ピールはアメリカ的なプロテスタンティズムをビジネスやライフスタイルと結びつける強固なモデルをつくった。その意味でカーネギーなどと同様、自己啓発型処世術の元祖である。そのやり方を忠実に受け継ぎ、エスタブリッシュメントなき本来のアメリカという理念のもとで、さらに発展させたのがトランプだというのが浅川さんの分析だ。


ただ、トランプもそうであるように、ポジティブ思考とはネガティブの徹底的な否定の上に成り立つ。そこにはポジティブが善で、ネガティブが悪であるという強固な二元論がある。つまり、ポジティブ思考の背後にはつねに恐怖がある。ネガティブなものへの強迫観念が、熱狂的なポジティブの礼賛へと結びついている。トランプが「移民」や「テロリスト」への恐怖をあおることによって、みずからのポジティブな印象を強化し、支持に結びつけようとしてきたのはいうまでもない。そして、それが機能してしまう社会的背景がアメリカにはある。


人をすぐ動かすのにもっとも効果的なのは恐怖である。政治とは本質的に、恐怖を背景に暴力をちらつかせることで成り立っている。この本は、トランプの説得術の緻密さを知ることで、アメリカに連綿と流れてきたポジティブ思考や成功哲学の背景に恐怖があること、さらに、その恐怖によって、いともかんたんに大衆が動かされてしまうことをリアルに感じさせてくれる。


成功哲学やポジティブ思考は、結局のところ、洗脳にほかならない。洗脳する側としてこのトランプの「説得術」を用いるか、それとも洗脳されないために用いるかは読者の自由だ。その意味で、この本はトランプの手の内を明かすことによって、逆説的に、自己啓発や成功哲学への辛辣な批判にもなっている。



性暴力と紛争鉱物と2ーーデニ・ムクウェゲ医師の来日講演会

コンゴ民主共和国東部における紛争と性暴力の被害者の治療と精神的ケアを15年以上にわたってつづけているコンゴ人医師デニ・ムクウェゲ氏が来日された。東京で開催された2度の講演会(笹川平和財団と東京大学)を聞いた。


ムクウェゲ医師のことは以前にも書いた。彼の活動を追ったドキュメンタリー映画『女を修理する男』(2015)はBSでも短縮版が放映されたが、そこに描かれたコンゴ東部の性暴力の実態はすさまじいものだった。とりわけ驚いたのは、紛争地域における性暴力が性欲からではなく、組織化された指揮の下で、周到に計画された戦略として用いられている、ということだった。


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戦争における性暴力は、兵士のストレスや性欲の発散ととらえられがちだ。たしかに、被害者の圧倒的多数を占めるのは女性で、コンゴ東部に暮らす女性の3人に2人が性暴力の被害者だという。しかし、被害者の中には6ヵ月の乳児から80歳の老人までが含まれ、男性の被害者もいるという。性欲にもとづく暴力ではなく、武器として性暴力を用いているからである。


だが、なんのために? 


カラシニコフよりも安価に、共同体の構成員(とくに女性と子ども)に一生癒えない傷や恐怖を植え付け、コミュニティを崩壊させるためである。それでも「戦争にレイプはつきものだ、仕方がない」という長年の慣習的な見方がじゃまをして、法的な罰則もない状態(現在は状況は変わってきている)が、90年代後半からはじまったコンゴ紛争に伴う性暴力被害を野放しにしてきた。


紛争の原因はというと、コンゴ東部で産出するタンタルのようなレアメタルの奪い合いである。タンタルは携帯電話やパソコンなどの電子機器に不可欠な材料であり、世界的に膨大な需要がある。国や反政府勢力が鉱山の占有をめぐって争い、それを長引かせ、泥沼化させてきたのは、これらの鉱物をほしがる多国籍企業の需要だ。


紛争そのものは2002年に和平合意が成立して一段落したものの、鉱物の奪い合いはいまだにつづいており、政府軍、そして無数の反政府勢力、それを支援する外国勢力、さらに多国籍企業が複雑にからみあって、いまだに紛争状態が続いている。紛争鉱物と性暴力とグローバル経済が密接に結びついている。


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ムクウェゲ氏はとくに大柄というわけではないが、物静かな存在感を感じさせる大きな方だった。言葉を選んで、とつとつとしゃべるが、力が入ってくると手振りをまじえながら、それでも冷静さを失うことなく、しずかに語ったーー。



「天然資源は開発の可能性の1つなのに、貧困や苦しみを生みだしている。性的暴力や殺人を伴う開発のメカニズムが働いている。コストダウンを求めるがゆえに、原料の供給地は脆弱な国になりがち。脆弱な国家を供給地にすることでコストが下がる。多国籍企業は、悪意、あるいは無知からそれを容認。そのことがコンゴ民主共和国で、女性が暴力にさらされる状況を継続させている。・・・」


「15年前から4万人以上の性暴力を受けた女性の治療やケアにあたってきた。武装勢力のいるところと、鉱山のあるところは重なり、その地域の村で女性の被害が多い。暴力が経済的な理由と結びついている。性欲ではなく、性的なテロ。・・・」


「それぞれの武装勢力に、特有の暴力の方法がある。女性器の傷の状態を見れば、どういうグループがそれをしたかがわかる。その方法を教える研修があることを示している。・・・木の棒を使ったり、銃を使ったりして、直腸膣中隔を破り、殺さずに一生残るトラウマを植え付ける・・・」


「レイプは村人全員の前で行われる。子どもや家族を含むコミュニティの人たちすべてがトラウマを持つように仕向けている。村によっては、村の女性300人が一晩でレイプされた例もある。目的を持った計画的なものでなければ、そんなことはできない・・・傷ついた村人は村を出て、武装勢力は鉱山を支配する。村民の一部は奴隷のように労働力として使われる・・・」


「この紛争は部族紛争ではない。内戦でもない。大統領が憲法も守らないのだ。国の法律に従った戦争ではない。宗教戦争でもない。テロという非対称の戦いですらない。そうではなく、住民、女性、子どもを犠牲にした経済戦争だ。それがこの戦争の真実だ・・・」


 

話の内容はとても重い。が、状況はけっして膠着しているわけではない。90年代から紛争鉱物を買わないよう法律がつくられたり、その適用のための国際社会の努力が時間をかけてなされてきて、一定の成果も上がっている。2014年現在、3Tと呼ばれるタンタル、すず、タングステンの鉱山の7割からは武装勢力は撤退した。トレーサビリティーの徹底によって、いま世に出回っている3Tの99パーセントは紛争鉱物ではないことが証明されている。ただし、金鉱山については、いまだに9割が武装勢力によって支配されているという。


問題をややこしくしているのは、武装勢力がいなくなっても、国の正規軍が同じことをしていて暴力がなくならない状況があること。ムクウェゲ氏の招聘に尽力された立教大の米川正子さんは、コンゴにおいては、いまだ国家は、国民保護や安全保障のために存在しているとはいいがたく統治の意志もない。むしろ国家と反政府勢力の区別が曖昧で、両者は対立し合っているというより、戦闘せずに資源を共同で搾取し合っているとすらいえる。それを米川氏はアフリカのことわざをひいて、「二頭の象が争うと、もっとも苦しむのは草原である。でも、二頭の象が愛し合っても、やはりもっとも苦しむのは草原である」と述べた。二頭の象のみならず、現実には紛争を解決するはずのPKOにしても、紛争解決どころか戦争犯罪人を保護して、草原を苦しめている状況がある。


講演会のくわしい記録については、いずれ正式なレポートが出ると思うので、ここではくわしくはふれない。コンゴ紛争の複雑な背景については米川さんと華井和代さんによるNewsweek誌の記事があり、講演のもっとくわしい内容については望月優大さんによる、よくまとまった記事もある。


とても衝撃的な話で、こうした話にリアリティを感じることは日本人としては、とてもむずかしいかもしれない。あまりにも強烈な事実に直面すると、相手を自分とは関係のない絶対的な他者として位置づけようとする解離反応のようなものが働き、共感的な想像力が堰き止めてられてしまうことがある。コンゴ河を旅していて、反政府勢力の動きについてのニュースを間近で聞いていた自分にとってさえ、このような状況がそう遠くないところで展開されていた、ということが想像しにくい。いままでもそうだったように、時とともに話のディテールや、状況が刻々と変化しているという印象が薄れていって、「アフリカは怖いところだ」「かわいそうだ」「残酷だ」というシングルストーリーというか、ステレオタイプな見方の強化につながってしまうとしたら残念だ。


しかし、実際には消費者としてわれわれがふだん使っている携帯電話やパソコン、電子機器を通じて、この問題はコンゴの密林の奥とつながっている。「自分たちの使っているものになにが使われていて、それが、どこから来ているのか。それが女性への暴力によって作られたものかどうか、それを確認できるような仕組みをつくっていくことが必要」とムクウェゲ氏はいう。


会場から「武装勢力は鉱物資源の売買によって闘争の資金を得ているというが、むしろ鉱物資源のビジネスをするために紛争をしているように見える」というコメントがあった。たしかに武装勢力は政治的な統治の主体を目指しているというより、営利を目的とした活動になっている、とも見える。これは国家も同じで、会社化していくというのは、グローバル化が進んだいまの多くの国家についてもいえることかもしれない。ドバイやシンガポールも国家というより会社のようだ。イデオロギーが空洞化したこの時代、いわゆる反政府武装勢力もそうなっていくのかもしれない。


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講演中、こんなことがあった。ムクウェゲ氏の話が始まってまもなく、会場にいた1人の若いコンゴ人が立ち上がり、壇上にむかってつかつかと歩いてきた。彼は壇に上がると氏の横に立ち、手にしていた紙を頭上に掲げた。そこには「性暴力日本の株式会社も共犯」と日本語で書かれていた。しばし会場は静まりかえっていた。若者はそのまま立ちつづけていた。会場にいた数人のコンゴ人が壇上にやってきて、抵抗する彼を数人がかりで壇上から下ろした。若いコンゴ人は、片言の日本語で「コルタンは、だめ、日本は・・」と訴えていたが、結局会場の外へ連れ出されてしまった。


ムクウェゲ氏はその間、その様子を無言で見ていた。若者がいなくなったあと話を再開したムクウェゲ氏は、「私の国にはこの問題で深いフラストレーションとトラウマの中にいる若者がたくさんいる。彼のもその一人だ。申し訳ない」と頭を下げた。


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