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小松義夫さんの新刊『人と出会う場所 世界の市場』が楽しい!

旅に出ると、まず市場を見にいく。市場ほど、そこに暮らす人びとの生活がよく見える場所はないからだ。どんなものが売られているかだけでなく、売っている人たちや、そこにやってくる人たちが、どんな顔をして、どんな服を着て、どんなふうに歩き、どんなふうにしゃべり、どんなふうに笑うのか。どんな音や匂いや色があるのか。そういう刺激に五感をさらしていると、そこに暮らす人びとが生きているリズムが、じわじわとからだに伝わってくる。それくらい市場は土地と人びとをめぐる多様な情報にあふれている。それに、なんといっても楽しい!


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小松義夫さんの新刊『人と出会う場所 世界の市場』(アリス館)は、まさに、そんな市場の楽しさをいっぱいに伝えてくれる。小松さんには『地球生活記』や「地球人記』(いずれも福音館書店)など世界の暮らしを撮影した写真集がたくさんある。世界中の変わった家を、まちがいなく世界でもっともたくさん撮影されている方だ。家といっても有名な建築家がつくった「作品」ではない。土地に根ざした暮らし方から生まれた、それはそれは不思議な家ばかりだ。そうした家はそこに暮らす人びとと切り離せない。だから、小松さんの写真集には人がたくさん出てくる。


この本も主役は人だ。東ティモールの市場、インドの花市場、ミャンマーの湖上の市場、ブルキナファソの壺の市場、アルバニアのヤギやヒツジの市場、オマーンの魚市場など、登場する市場はじつにさまざま。その市場をどんな人たちが行き交い、どんなふうにものを売って、どんなふうに食事をして、どんな屋台が出ていて、どんな「計り」が使われているのか。世界各地の市場から見えてくる人びとの暮らしぶりはじつにさまざまなのだけれど、でも、売ったり買ったり、食べたり、飾ったり、集ったりというひとびとの営みは、どこでも共通している。


この本では写真の中にちょっとした説明がついている。「おしゃべり中」とか「床には毛皮をしく」とか「屋根から草が生えている」とか、眺めているだけでは見逃してしまいそうなところにコメントがついている。おかげで、「こんなところにこんなものが」という発見がある。よく見ると、笑っているヒツジがいたり、手にヘナの模様を描いている女の子がいたりする。ほかにもいろいろある。ブリューゲルに「子どもの遊戯」という絵があるけれど、あんなふうに、一枚の写真の中にたくさんの物語が展開されている。


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小松さんは「市場は品物を売り買いするだけの場所ではなく、人の生活があらわれ、また文化がそだっていく、とても魅力的な場所」であり、「人と人とが出会い、集い、交じり合い、新しい力が生まれる場所」と書く。だから、市場はショッピングモールとはちがう。「誰に言われたわけでもないのに、人びとがあつまり、路上に品物をおき、売り買いをしている・・・それが定着していつしか町となった場所がたくさんある」と小松さんはいう。「誰に言われたわけでもない」というのが、だいじなところだ。誰に言われたわけでもなく生まれたものには、気持ちのよい自然な活気がある。市場が楽しいのはきっとそのせいだ。



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