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蔵前仁一さんの『テキトーだって旅に出られる!』

蔵前仁一さんの『テキトーだって旅に出られる!』(産業編集センター)が出た。前著の『あの日、僕は旅に出た』が蔵前さんの30年以上にわたる旅の歴史について語った本であったが、こちらは自分の旅のスタンスと、若い人たちへの旅のすすめについて語った本だ。

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蔵前さんの登場が新鮮だったのは、それまで旅を語るときにありがちだった「旅はかくあらねばならない」といった思い込みから旅を解放してくれたことにあったと思う。「そんなものは本当の旅ではない」とか「これこそ本当の旅だ」的な、旅を枠に押し込めていくような見方から彼はいつも自由だった。


たとえば、それまではよく「インドに行くと人生が変わる」という言い方がされていた。そうした旅の周辺にまつわりついていた先入観や偏見のベールを、彼はその軽やかで、飾らない文体によってひきはがしてくれた。だからこそ多くの人たちが彼の本を読んでインドやアジアやアフリカへと旅に出た。


蔵前さんの本にはイラストがたくさん入っているので、彼の本を読んだことのない人は、ドタバタや失敗談などの熱い旅の話が読めるのではないかと思う人もいるかも知れない。しかし、そうではない。熱いどころか、冷めている。彼は、話を盛ったり、ロマンに浸ったりしない。ある読者が、彼の印象をひとことでいうと「平熱の人」だと書いていたことがある。言い得て妙だ。蔵前さんは熱に浮かされた旅のフリークではなく、好奇心の強い平熱の人なのだ。


旅を枠から解放するような文章を書きつづけてきた蔵前さんだが、この本では、彼自身がどういうところに旅のおもしろさや楽しさがあるかということについて、これまでになくストレートに語っている。「旅は命を賭けるようなものではないが、自分の快適空間からはるか遠くに離れるという意味では一種の冒険なのだ。・・・そして乗り越えた先には必ずおもしろい世界が待っている(はずだ)」


快適空間とはいってみれば予想可能で安心で便利な空間である。そこから離れるとは思いがけないことや予想もつかない想定外に向き合うことだ。それは快適ではないかもしれないが、快適空間の中にいてはけっして味わえない驚きであり、それこそがその人の記憶に残り、世界の見方を形づくっていく。それはガイドブックには書いていない、そのひとだけの経験であり、そういう自分だけのインドやアフリカやアジアに出会うことこそが旅の楽しみなのだと蔵前さんはいいたいのだと思う(たぶん)。


若い人たちがあまり旅行をしなくなったといわれるが、彼はこう書く。「今や海外旅行に出ること自体はまったくむずかしいことではなく、むしろ簡単すぎるぐらいなのだが、そういう時代に若者が海外旅行をしないのは金やヒマがないというよりも興味がないということだろう。そういう人を無理に海外旅行をさせる必要はないと僕は思うけれど金とヒマがなんとかなり、行く気がある場合は、行かないのはかなりもったいない」


そう、もったいない。アタマのやわらかい若いときこそ旅をしてほしいとおもう。なぜなら慣れ親しんだ世界の外に出て、初めて自分の中にある差別意識や偏見や先入観に気づけるからだ。快適空間の中にいると、そうしたものに出会わずにすむから、自分の中の差別意識に気づかないまま、自分は「いいひと」だと思い込んでしまいがちだ。


快適空間の外に飛び出して初めて「自分」が見えてくるものなのだ。現代は快適空間が(バーチャルなものもふくめて)どんどん拡大している時代だ。それでも旅をすれば、いくらでも快適でないことが起きる。わざわざお金を出して快適でないことなどしたくない、というかもしれないが、ふしぎなことに、旅では快適でないことがとても楽しかったりするのだ。それがどういうことか、この本を読めばわかる。


私事ですが、じつはわたしもいま似たようなテーマで旅について本を書いています。遅れているのですが、タコのせパワーでがんばって秋には出せるようになんとかするつもりです。。<(;˘⊖˘)>


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