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さる10月5日のあひる商会イベント、精神科医の森川すいめいさんとのトーク「旅するオープンダイアローグ」に参加くださった多くのみなさま、ありがとうございました。これまでのあひる商会トークからすると異色な展開となりましたが、とてもあたたかく、和やかさに溢れた場になりました。こちらのノープランな無茶振りにも柔軟に対応してくださり、場をますますやわらかく自由にしてくださったすいめいさんには深く感謝です。
すいめいさんに自己紹介をお願いしたら、ご本人はそれを会場にふって、「私のことを知っている人いますか」と聞いて、その知っている人たちに紹介してもらうという他己紹介にするあたりから新鮮な展開が始まった。たいていは、私がゲストになにか質問し、それにたいして相手が答え、また私がなにかいって、というふうに話が往復的に展開するのがふつうだ。
でも、すいめいさんは、私の問いかけを会場にふり、会場の反応をみて、つぎの話を展開するというふうに、言葉の通路が二者の往復ではなく、会場をまきこんだもっと自由で多層的なものになるよう自然と、こまやかな配慮をされるのに感心した。それが声になるならないにせよ、そこにはたしかに開かれた対話の空間に包まれていく感じがあった。
勉強会ではないので、「人前でこんな話をするのは初めてです」という話もたくさん聞けた。若い頃の旅で、モロッコの南部で麻薬組織に一週間監禁されたときのこと、セネガルで100人くらいに囲まれたときのこと。「強くなりたい」と思って、いろんな知識を身に着けたり、活動をしたりしたが、それは「自分は正しいことをしている」という鎧を着ることでしかなく、自分の弱さを覆い隠していたにすぎないと気づいたこと。精神科医療現場の問題との直面、そこからオープンダイアローグとの出会いにいたったことなど。
さらには、会場からの参加者をつのってオープンダイアローグのデモセッションまでやってくださった。小さな言葉にならない弱い声、幽き声をすくいあげるために、これほどていねいで、辛抱強い配慮をするのかと驚いた方もいるかもしれない。
一方で、自分はしゃべりすぎだなあ、いまここで必要ないのに、話を構造的・図式的にまとめたくなる衝動があったり、自分の思いついた話を口にしたくてしょうがなくなったりして、でも、それを話しているうちにこれちょっとちがうよなあと気づいたり、すいめいさんと話していて、ふだん以上に自分の言葉の浮上する瞬間を意識させられた。ていねいに聞いてもらっていると、自分がていねいに話していない部分が浮き彫りにされるのかもしれない。
いずれにしても、ライブな対話の中だからこそ現れてくる、言葉にならないものが温泉のようにあふれだした幸福な一夜でした。懇親会も楽しかった。参加してくださったみなさま、ほんとうにありがとうごさいました。そしてまた、いつかあひる商会で森川すいめいさんとのトーク第2弾をやりたいです。
すいめいさんの『漂流老人ホームレス社会』(朝日文庫)という本の最終章で、旅から帰ってきた若いすいめいさんに友人が「旅をして大きくなれた?」と聞かれて、「自分が、小さくなれたと思えたよ」と答えるシーンがある。かっこよすぎて、とてもいまの自分の歳ではいえない言葉だが、わたしも若いときにこんな言葉を口にしてみたかった。。(;´Θ`)
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